異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

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154 恐竜ツアー3日目です 3

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 ここは、大陸近海の上空です。

 わたしは海上に向けて降下します。その途中で大きな影が見えてきました。
 着水すると、前方に大きな背ビレが見えます。わたしは潜航して追跡しました。
 目の前を大きな生き物が泳いでいます。

吉田 「イルカ?」
中村 「ステノプテリギウスだ」

 私たちは撮影を開始しました。

 ステノプテリギウスは全長3.5m、全身が濃い灰色ですが、腹部は色がうすいです。
 見た目はイルカに似ていますが魚竜と呼ばれる海生爬虫類です。

アンナ「イルカにそっくりですね」
西川 「同じ環境であれば、別種の生物でも似たような形質に進化する
    ことがある。それを収斂しゅうれん進化と言います。
    翼竜、鳥、コウモリの特徴が似ているのも収斂進化の一例です」
アンナ「勉強になります」
吉田 「西川君、すごい」
西川 「僕、こういうの好きだから」
中村 「西川は進化生物学が好きだから、進化の話は詳しいぞ」
西川 「研究者ほどではありませんよ。
    でも、ステノプテリギウスは海生爬虫類、イルカは哺乳類、
    それなのに似ている。これは、理屈抜きに面白いことです」
中村 「だよな。だから古生物は面白いんだ」

中村 「それにしても、見た目はイルカに似ているが、
    泳ぎ方はサメみたいだな」
西川 「そうですね。尾ビレは魚と同じ垂直型なので、
    泳ぎ方はサメに似ていますね」

 見た目はイルカ、泳ぎ方はサメ、先ほどから感じていた違和感の原因はこれですね。
 納得しました。

吉田 「アンナさん、写真撮って」
アンナ「はい」

 わたしは、魚竜と一緒に吉田さんの写真を撮ります。

 カシャ。

 水族館でイルカと一緒に撮った写真みたいです。面白いです。

アンナ「今度は三人で撮りましょう」

 三人が集まったので、写真を撮ります。

 カシャ。

 やはり水族館みたいな写真です。

     *

 魚竜は現在、陸地の方に向かって泳いでいます。
 時々水面から上に出ることがあります。イルカのように高いジャンプはしません。

西川 「いま水面から出たのは、呼吸のためですかね」
中村 「たぶん、そうだろう。魚竜は肺呼吸をするからな」

 そうですよね。魚と違い、エラがないので空気の呼吸は必要です。

 魚竜は沿岸近くまできました。目の前には魚の群れがいます。
 次々と魚を捕食していきます。魚からがれ落ちるウロコが水中でキラキラしています。

 しばらくすると、魚竜は魚の群れから離れていきます。

アンナ「追いますか?」
中村 「いや、充分撮影できた。次を案内してくれ」
アンナ「わかりました」

 魚竜の姿は見えなくなりました。わたしはMTVを浮上させます。
 海上に出ました。

アンナ「それでは移動します・・・転移」


*    *    *


 ここは、先ほどの場所から離れた別の沿岸上空です。

 わたしはMTVを着水させて潜航しました。

中村 「また海か」
西川 「今度はどんな生き物ですか。」
中村 「見えてきたぞ」

 目の前を大きな生き物がゆっくり泳いでいます。

西川 「あれは・・・」
中村 「キンボスポンディルスだ」
吉田 「すごく大きい」

 私たちは撮影を開始しました。

 キンボスポンディルスは全長11mです。全身が青みがかった灰色で、腹部が白っぽいです。
 鼻先がややとがっていて、尻尾がとても長いのが特徴です。魚竜の仲間です。

西川 「体形がユニークですよね」
中村 「ああ、初期型の魚竜だからな。進化の途中って感じがするぜ」
西川 「体形もそうですが、泳ぎ方がウナギみたいですね」
中村 「そう言えば、図鑑やネットで、ウナギに例える解説があったな」

 キンボスポンディルスは全身が細長いので、太ったウナギのような印象を受けます。

西川 「ただ泳ぎ方は、無駄な動きがなく、効率のいい感じがしますね」
中村 「そうだな。酸素の消費をおさえるための動きだろう」
西川 「そう言えば、主な生息場所が深海という説がありましたよね」
中村 「ああ、あったな。ただ、俺はその説に疑問を感じるぜ。
    肺呼吸をする魚竜が深海に生息する必要があるか?」
西川 「確かにそうですね」
中村 「深海と海面を往復するだけでも、
    かなりエネルギーを消耗するはずだ。
    外敵が少ないが餌も少ない深海に生息する意味がわからん」
西川 「そうですね。キンボスポンディルスの脅威になる外敵が多い
    とは思えませんね」
中村 「だろう・・・おそらくキンボスが死んだあと遺体が深海に沈み、
    そのまま化石になったと俺は考えている」
西川 「なるほど、海の場合、化石の発見された場所が生息場所とは
    限らないわけですね」

 陸棲生物の場合、化石の発見場所で生息場所が特定できますが、
 海棲生物の場合、近海に生息していても、遺体が深海に沈み、そこで化石になる可能性がありますね。
 発見された化石からそこまで深く考察するのは、なかなか面白いです。

吉田 「アンナさん、写真撮って」
アンナ「はい」

 わたしは、魚竜と一緒に吉田さんの写真を撮ります。

 カシャ。

 海中で撮影すると背景が青色だけになるので、なんだか合成写真みたいです。

アンナ「今度は三人で撮りましょう」

 三人が集まったので、写真を撮ります。

 カシャ。

 魚竜の泳ぐ速度が上がりました。向かう先には魚の群れがいます。

吉田 「泳ぐのが早い」
西川 「流線型をしていて、水の抵抗が少ないからね」

 魚の群れが見えてきました。中型の回遊魚です。
 魚竜は泳ぐ速度を利用して、次々と魚を捕食します。

西川 「迫力ありますね」
中村 「ああ、迫力あるぜ」

中村 「アンナ、いろんな角度で撮りたい」
アンナ「はい」

 わたしは臨機応変にMTVの位置を変えました。様々アングルで撮影します。

     *

 やがて魚竜は捕食をやめて、魚群から離れていきます。

アンナ「どうしますか?」
中村 「充分撮影できた。次を案内してくれ」
アンナ「わかりました」

 わたしはMTVを浮上させました。

アンナ「それでは移動します・・・転移」



 私たちは次の場所に転移しました。
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