天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

椅子がふかふかだったけどパパの膝の上だから意味なかったよね

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「シロ~パパと一緒に会議いこうな~?」
「む?」

 朝食の席で軽く言われた言葉。会議ですと?
 何かコメントをしようと思ったが口の中が肉でいっぱいだった。


「……もぐもぐもぐ」
「よく噛んで食べろよ」

 パパに口元のタレを拭われた。

「ごっくん。パパ、会議ってなに?」
「パパが毎月顔を出さなきゃいけないクソみたいな集まりだ。シロがいればパパつまらない仕事も頑張れる」
「大人とは思えない発言」
「大人は建前をしっかりしときゃあ中身がどんなのでもいいんだ。殿下を見てみろ」
「ああ……」

 納得しちゃった。殿下ごめん。

 甘酸っぱいオレンジジュースを飲んで殿下への罪悪感も胃に流し込んだ。

「難しい話されても寝る自信しかないよ?」
「安心しろ。シロはパパの癒しだから寝てても平気だ」
「そうなの? ユルいね。じゃあ行く」

 訓練より楽そうだもん。








 ちょこんとパパに抱っこされて城に足を踏み入れた。何気にちゃんと王宮に入るのは初めてだ。
 これまでは特殊部隊の隊舎の中だけで生活してきた。
 何と言うか、やっぱり王族が住むお城は豪華だった。庶民とは床の大理石からしてレベルが違う。殿下はこんな所に住んでるのか。

 ここにある絵とか売ったらいくらくらいになるんだろう。これ売ったらパパと遊んで暮らせるかなぁ。

 妄想を繰り広げていると、会議室に着いた。扉も王宮仕様で、とっても豪華で頑丈そうだ。
 うちの隊舎の爆破されたら木端微塵になるような扉じゃなくてかろうじて原型は残りそうな扉だ。
 ……どっちも壊れてるから変わんないね。



 パパが扉を開けると、部屋の中には両手を広げた殿下がいた。

 パパが若干引いたような声音で言う。

「え、殿下、俺そういう趣味ないんだけど。俺には可愛い娘もいるし……」
「安心しろ。ボクにもそんな趣味はない。用があるのはシロだ。シロ~おいで」

 これはあれだね、殿下に一回ハグしとくのが礼儀だ。
 殿下良い匂いするんだよね~。

 私はするりとパパから降りると、殿下にハグをした。ふわりといい匂いが漂う。

「あ~ちっちゃい柔らかい。ブレイク、やっぱり一日だけシロ借りちゃだめか?」
「駄目だ。お前に預けて、シロが贅沢を覚えて帰ってこなくなったらどうする」
「そしたらシロはボクが養う」
「却下」

「ふふふ、あ~癒される。このほっぺがあればボクくだらない会議も頑張れる」
「王子の発言的には問題じゃない?」
「文句を言う奴がいたらブッ潰すから平気だよ」
「え? それは物理的にじゃないよね?」
「ボクの天使は優しいな」

 今日の着ぐるみは天使じゃなくてリスなんだけど……。
 殿下疲れてるんだな……。優しくしてあげよう。
 頭を撫でてあげると満面の笑みで頬を撫でくりまわされた。

 私達以外の人がこちらを見ようとしないのは気のせいではないだろう。


 殿下に散々ぷにぷに堪能された後、私はパパに返却された。






 

「では、これから定例会議を始める」

 全員が円卓に座ると、議長っぽい人が宣言した。

 私はパパの膝の上で殿下が用意してくれたナッツをポリポリと食べる。リスにぴったりだね。
 パパは私を可愛い可愛いと撫でてくるけど、資料見なくていいの?
 あと殿下もこっち見てニコニコしてないで資料見なよ。周りに新生物を発見したような目で見られてるよ。

 どうやら私がここに来ることは事前に知らされていたらしい。何事もなく、よくわかんない話が始まった。

 パパが小声で話し掛けてきた。
 私達の席は殿下が座っているメインメンバーの席からは離れているため小声ならそんなに聞こえない。

「シロ、暇ならお絵描きしてても良いぞ」
「え?でも、ペンはあるけど紙はないよ?」
「いっぱいあるだろう」

 パパはそう言って資料を裏返し、白紙の方を上にした。
 いいのかそれで。いいや。

 私は黙々と絵を描き始めた。
 パパは作業をする私を微笑みながら見守っている。ここだけ自宅感半端ない。





 二枚の絵を描き終わっても会議は続いてた。長いな。こりゃパパが嫌がるわけだ。
 そんな大人らしくないパパは私の髪の毛を弄り始めている。暇なんだね。

 私も集中力を使ったことで眠くなってきた。
 それに気付いたパパが私を横抱きにして優しく揺らす。

「寝ていいぞ」

 私は優しい声でパパに寝かしつけられた。












 どのくらい寝ていたのかはわからないけど起きたらさすがに会議が終わってた。

「シロ~起きろ~」
「ん……ぱぱ」
「おー、パパだぞー」

 おでこにちゅってされる。

 会議はちょうど終わったところらしく、殿下もこちらに歩いてきた。

「シロ、さっきは何を描いてたんだ?」

 殿下は私が絵を描いた紙を手に取り、目を見開いた。

「上手っ!?ボクはほのぼのした子供の落書きを想像してたんだが、これはボクとブレイクの似顔絵か?」
「うん、そー!」
「額縁に入れて飾ろう」
「当たり前だろう」

 殿下の発言にパパが速攻で同意した。



 そしてあれよあれよという間に裏紙に描いた私の絵は不相応にも金の額縁に入れられて殿下の部屋に飾られてしまった。
 特殊部隊の食堂にも豪華な額縁に入ったパパの似顔絵が飾られている。






 親バカってすごい。




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