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こぼれ話
シオという少年
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「今日は俺も一緒にテントに泊めてもらう」
シオはそう言って特殊部隊の拠点までついてきた。
―――シロを抱いたままま。
娘をシオに取られたブレイクは分かりやすく不機嫌になっている。エルヴィスはブレイクがいつキレるかと内心ヒヤヒヤだ。
シオが特殊部隊のテントに泊ることになって一番喜んだのはイオだ。
「金色の狼さんだあああああああ!!!」
イオはもっちり狼を一目見た瞬間、全力で飛びついた。そしてもっふりとした金色の毛を絶妙な力加減で撫でる。イオに撫でられ、キングは気持ちがいいのか目を細めて尻尾を振っている。
「あ、シオ久しぶり」
「おい初対面のキングより俺への対応の方が淡白ってどういうことだ」
「シオも三角の耳と尻尾を生やして全身毛むくじゃらになったら熱烈に歓迎してあげるよ」
「バケモンになるわ」
冷たい視線でイオを射抜くシオ。その腕には未だにしっかりとシロが抱っこされている。ここまでシオに抱かれて揺られていたせいか既に眠そうだ。目蓋がほとんど閉じかけている。
「おいシオ、そろそろシロを隊長に返しなよ。娘成分が足りなくてブチ切れそうだよ?」
「そうだな。ほい、シロを抱かせてくれてありがとな」
シオはブレイクにシロを受け渡す。
シロをしっかりと両手で抱っこすると、ブレイクが纏っていたイライラとした雰囲気は一瞬にして消えた。
シロも父親の腕に戻って安心したのか、本格的に眠りに入ってしまう。
「やっぱり親の方がいいんだな……」
シオが少し羨ましそうに呟く。
「あったりめーだろ。シロはパパが一番好きだもんな~」
「隊長大人気ないです」
ブレイクはエルヴィスのツッコミなど聞かずシロの頭に頬を擦り付けている。娘成分の補給だろう。
シロを心行くまで愛でた後、ブレイクは熟睡してしまったシロをテントに寝かせて戻ってきた。
既に戻ってきている特殊部隊の面々とシオで焚火を囲み、ブレイクが話を切り出す。
「さて、改めて久しぶりだなシオ。ところで、お前父親は今どうしたんだ?」
「義父さんはどっかで好きに生き物見てんじゃねーかな。明日の待ち合わせまで自由行動だから、それまでここにいさせてもらうぜ」
「まあそれはいいが。……今は楽しくやってるのか?」
「もちろん。新しい家族は優しいし義父さんは面白いし、組織にいた頃に比べたら天国みたいな場所だ」
シオは元々シロと同じように組織の実験体だった。そして、ブレイク達の計画が漏れた際に組織に取り残されていた子ども達のうちの一人だ。
シオは幼かったゆえに特殊部隊には入れず、信頼できる家に養子に出された。
「―――ったく、シロを奪還できたなら連絡くらいよこせよな」
シオが不満気にぼやく。
「いや手紙はお前の家に送ったぞ。さては読んでないな」
エルヴィスが呆れたように返す。
「え。読んでねぇ」
各地へ飛んで歩く父親について行っているため、シオは自分の家にはあまり帰らない。そのため手紙を読みそこねたようだ。
「だろうな。じゃあシロの状況はなにも知らないってことだな?」
「ああ」
シオは自信満々に頷いた。
「……シロがどうかしたのか?」
シオに、ブレイクはかいつまんで今の状況を説明した。
「記憶がないのか……まあ、ある意味幸せだな。にしても、シロの父親ポジは羨ましすぎるだろ」
「な~に言ってんだ。お前もシロの兄ちゃんだろ。俺達がいない間いっぱい世話してくれてたじゃねーか」
ブレイクがシオの頭をワッシワッシと撫でると、シオは照れたのか少し頬を染めて俯いた。
「だが、前にも言ったが、お前は自分の幸せを一番に考えろ。シロや俺達と関わってお前がつらいことを思い出すなら、一切俺達と関わらない選択肢もあるんだぞ? 離れていてもお前が俺らやシロの家族ってことは変わらないんだから」
ブレイクの優しい声音に、シオは一瞬泣きそうな顔になった。だが、すぐに怒りの表情に変化する。
「縁なんか切るかよ! 俺はとっくにあんときの記憶は乗り越えてんだ!!」
「……そうか、新しい家族に恵まれたんだな」
「ああ」
ブレイクは改めてシオの頭の上に手を置く。
「じゃあシオ、今までの記憶はなくなっちまったが、またシロの兄ちゃんになってくれるか?」
「あったりまえだろ!」
シオは勢いよく肯定したあまり立ち上がった。
「シロは……俺にとっても妹だ!!」
そう言い切ったシオにブレイクは優しい微笑みを浮かべた。
シオはそう言って特殊部隊の拠点までついてきた。
―――シロを抱いたままま。
娘をシオに取られたブレイクは分かりやすく不機嫌になっている。エルヴィスはブレイクがいつキレるかと内心ヒヤヒヤだ。
シオが特殊部隊のテントに泊ることになって一番喜んだのはイオだ。
「金色の狼さんだあああああああ!!!」
イオはもっちり狼を一目見た瞬間、全力で飛びついた。そしてもっふりとした金色の毛を絶妙な力加減で撫でる。イオに撫でられ、キングは気持ちがいいのか目を細めて尻尾を振っている。
「あ、シオ久しぶり」
「おい初対面のキングより俺への対応の方が淡白ってどういうことだ」
「シオも三角の耳と尻尾を生やして全身毛むくじゃらになったら熱烈に歓迎してあげるよ」
「バケモンになるわ」
冷たい視線でイオを射抜くシオ。その腕には未だにしっかりとシロが抱っこされている。ここまでシオに抱かれて揺られていたせいか既に眠そうだ。目蓋がほとんど閉じかけている。
「おいシオ、そろそろシロを隊長に返しなよ。娘成分が足りなくてブチ切れそうだよ?」
「そうだな。ほい、シロを抱かせてくれてありがとな」
シオはブレイクにシロを受け渡す。
シロをしっかりと両手で抱っこすると、ブレイクが纏っていたイライラとした雰囲気は一瞬にして消えた。
シロも父親の腕に戻って安心したのか、本格的に眠りに入ってしまう。
「やっぱり親の方がいいんだな……」
シオが少し羨ましそうに呟く。
「あったりめーだろ。シロはパパが一番好きだもんな~」
「隊長大人気ないです」
ブレイクはエルヴィスのツッコミなど聞かずシロの頭に頬を擦り付けている。娘成分の補給だろう。
シロを心行くまで愛でた後、ブレイクは熟睡してしまったシロをテントに寝かせて戻ってきた。
既に戻ってきている特殊部隊の面々とシオで焚火を囲み、ブレイクが話を切り出す。
「さて、改めて久しぶりだなシオ。ところで、お前父親は今どうしたんだ?」
「義父さんはどっかで好きに生き物見てんじゃねーかな。明日の待ち合わせまで自由行動だから、それまでここにいさせてもらうぜ」
「まあそれはいいが。……今は楽しくやってるのか?」
「もちろん。新しい家族は優しいし義父さんは面白いし、組織にいた頃に比べたら天国みたいな場所だ」
シオは元々シロと同じように組織の実験体だった。そして、ブレイク達の計画が漏れた際に組織に取り残されていた子ども達のうちの一人だ。
シオは幼かったゆえに特殊部隊には入れず、信頼できる家に養子に出された。
「―――ったく、シロを奪還できたなら連絡くらいよこせよな」
シオが不満気にぼやく。
「いや手紙はお前の家に送ったぞ。さては読んでないな」
エルヴィスが呆れたように返す。
「え。読んでねぇ」
各地へ飛んで歩く父親について行っているため、シオは自分の家にはあまり帰らない。そのため手紙を読みそこねたようだ。
「だろうな。じゃあシロの状況はなにも知らないってことだな?」
「ああ」
シオは自信満々に頷いた。
「……シロがどうかしたのか?」
シオに、ブレイクはかいつまんで今の状況を説明した。
「記憶がないのか……まあ、ある意味幸せだな。にしても、シロの父親ポジは羨ましすぎるだろ」
「な~に言ってんだ。お前もシロの兄ちゃんだろ。俺達がいない間いっぱい世話してくれてたじゃねーか」
ブレイクがシオの頭をワッシワッシと撫でると、シオは照れたのか少し頬を染めて俯いた。
「だが、前にも言ったが、お前は自分の幸せを一番に考えろ。シロや俺達と関わってお前がつらいことを思い出すなら、一切俺達と関わらない選択肢もあるんだぞ? 離れていてもお前が俺らやシロの家族ってことは変わらないんだから」
ブレイクの優しい声音に、シオは一瞬泣きそうな顔になった。だが、すぐに怒りの表情に変化する。
「縁なんか切るかよ! 俺はとっくにあんときの記憶は乗り越えてんだ!!」
「……そうか、新しい家族に恵まれたんだな」
「ああ」
ブレイクは改めてシオの頭の上に手を置く。
「じゃあシオ、今までの記憶はなくなっちまったが、またシロの兄ちゃんになってくれるか?」
「あったりまえだろ!」
シオは勢いよく肯定したあまり立ち上がった。
「シロは……俺にとっても妹だ!!」
そう言い切ったシオにブレイクは優しい微笑みを浮かべた。
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