天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

もちもち狼と少年

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「かわいいねぇ」

 金色の狼は肥満気味なのかまん丸いフォルムで、全体的にモフモチッとしている。
 フラフラと金色の狼に近付いて行こうとしたシロをブレイクが止めた。

「野生の狼だと危険だからな、まだ近付いて行っちゃダメだぞ」
「うにゅ」

 エンペラーに襟首をはむっと噛まれるシロ。
 危機感のないシロはふにゃふにゃと笑って言う。

「エンペラー二号もふもふモチモチでかわいいねぇ。絶対あのだらしない体型は飼い狼だよ」
「がふっ」

 金色の狼が不服そうに鳴いた。シロの「だらしない体型」という言葉に反応したのだろうか。
 シロはぴこん!と何かを思いついた。

「エンペラー二号の名前はキングにしよう! 金色だし」
「どうしても一国を治めさせたいんだな」

 エンペラーもキングも、狼に付けるには大それた名前だ。

 シロ以外の面々が金色の狼を警戒していると、その背後の植物が再びガサゴソと音をたてた。






「お~いキング、どこにいったんだ? ……あ、いた」

 植物をかき分けて姿を現したのは、推定十歳くらいの少年だった。

「「「!?」」」

 少年の顔を見たブレイク、アニ、エルヴィスは驚き、息をのんだ。

 キングを抱きしめた少年は顔を上げ、シロ達の方を見る。

「お、キング二号がいる。名付けるとしたらエンペラーだな。……って、あら」

 少年の名付けセンスはシロとよく似通っているようだ。
 なにかに気付いた少年はブレイク一行の顔を順々に見ていく。

「またずいぶん懐かしい顔ぶれだな」
「?」

 少年の顔に見覚えがないシロは首を傾げる。だが、ブレイク達は少年と面識があるようだ。
 ブレイクが一歩前に出る。

「久しぶりだな。今は……」
「今はシオって名前だ」
「シオか」
「? パパ、お知り合い?」

 首を傾げて尋ねたシロをブレイクは抱き上げた。

「……パパ? あんた結婚でもしたのか?」

 今度はシオの方が首を傾げた。

「いや? 結婚はしてない。ほらシロ、パパ達の知り合いにご挨拶できるか?」
「あい! シロです! 五歳です!」

 ブレイクに優しく促され、シロは元気良く挨拶をした。

「シロ……」

 シオが目を見開きブレイクを見ると、ブレイクは無言で一つ頷いた。
 シオがゆっくりと口を開く。

「……シロを抱っこしてもいいか?」
「ああ」

 ブレイクは抱いていたシロをシオに手渡す。
 シロはポスッとシオの腕に納まった。

「う」
「おお、重いな」
「む、シロ悪口いわれた?」
「違うよおばかさん。大きくなったなって褒めてんだ」

 そのままシオはシロのぷくぷくほっぺに自分の頬を擦り付ける。

「?」

 初対面でしょ? とシロはシオに抱かれたまま首を傾げた。


「……それはそうと、お前はどうしてこんなとこにいるんだ?」

 会話に割り込んだ形でエルヴィスがシオに尋ねる。

「義父さんについてきたんだ」
「お前の父親は生物学者だったっけか?」
「ああ」
「ここは最近見つかった無人島らしいけど、よく来れたな」
「無人島?……」

「ガウッ!」
「がふぅ!」

 話はエンペラーとキングの鳴き声で中断された。

 一同が鳴き声の元を見ると、エンペラーとキングが向かい合い、威嚇し合っていた。

「エンペラー?」
「こらキング、喧嘩すんな」

 飼い主二人がいさめると、二匹は渋々唸るのを止めた。
 シオはシロを抱いたままキングの頭を撫でる。

「キング、どうして威嚇なんかしてたんだ?」
「がふっ!」
「あ? かわいいペットの座を奪われると思っただぁ? 同じオスでもあのシュッとした狼とモチッとしたお前じゃジャンルがちげぇだろ。お前はマスコット枠だ」
「がふぅ……」

 不満そうな顔をしてその場で足踏みをするキング。もちもちしていて大変愛らしい。


「おいシオ、そろそろシロを返せ」
「あ?」

 ブレイクの言葉に、シオはシロをジッと見る。
  シオはギュッとシロを抱きしめた。

「?」
「……シロはかわいいからまだ返さねぇ」
「あ゛?」

 スンッと眼光を鋭くするブレイク。

「隊長、キレないでください! 相手は子どもです!」







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