天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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二章

お泊りはテンション上がる③

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 部屋に荷物を置けば、次は念願の食事の時間だ。
 宿は貸し切りなので、食堂には私達の関係者しかいない。見知らぬ顔もあるけど、私の周りにいるのはいつもの面々だ。

「しろ……」
「クロ!」

 どうやら馬車でダウンしていたらしいクロにヒシと抱きつく。

「……ばしゃ、酔う……じぶんではしりたい……」

 おお、みんな考えることは一緒だね。
 クロの頭をよしよしと撫でながらシロはそんなことを思う。そしてクロと一緒にパパを見上げた。

「かわいいけど今回は駄目だ。散歩は今度してやるからもうちょっと我慢しろ」
「……」

 クロは不満そうにしつつも大人しく引き下がった。いい子だね。シロいい子いい子しちゃう。
 わっしゃわっしゃと撫でてやればクロはうっとりと目を閉じる。かわいい。

「ガウ……」
「ん?」

 鳴き声がした方を見ると、エンペラーが恨めしそうにこちらを見ていた。

「ガウ」
「ん? エンペラーも撫でてほしいの? こっちおいで~」

 ちょいんちょいんと手招きすればエンペラーが大人しくこちらにやって来る。

「よしよ~し」

 エンペラーのフワ毛に指を通す。うん、かわいい。
 もちろん同時にクロの頭を撫でることも忘れない。今度はクロが嫉妬しちゃうからね。
 慣れてる特殊部隊のみんなは普通の顔してるけど、面識がない騎士さん達はびっくりした顔でこっちを見ている。

「――あの狂犬が大人しく撫でられてる……」
「ブレイク隊長の娘さんパネェ」
「あの狂犬がほんとにワンコみたいだ」

 ふふん、クロもエンペラーもかわいいでしょ。
 二匹を撫でながら騎士さん達にドヤ顔をする。すると、パパに後ろから持ち上げられた。

「ほら、もう飯の用意ができたようだぞ。ワンコを可愛がるのは後でな」
「は~い」

 素直にお返事をすると、パパのお膝の上に乗せられた。シロ一人じゃ机に届かないからね。

「おぉぉぉ~!」

 机の上には、なんだかオシャレな食事が並んでいた。お肉もソースがぶっかけじゃなくてお皿の端っこでなんかオシャレな模様になってる。
 パンも真っ白くて、見た目だけでふわっふわなのが分かる。
 私は隣の席の殿下を見上げた。

「殿下、シロ毒見しようか?」
「シロは肉が欲しいだけだろう。そういうのは信者アニに貢がせなさい」
「ぶ~」

 お肉強奪作戦失敗。

「それに、シロに毒見をさせる気はないぞ。例え毒が入ってたとしてもこいつらが分かるからな」

 そう言って殿下はステーキの載ったお皿をクロとエンペラーの鼻先に近付けた。
 二匹はスンスンを鼻をひくつかせる。

「……だいじょうぶ……」
「ガウッ!」

 エンペラーも大丈夫だと言ってるみたいだ。

「二匹ともありがとう」

 全部のお皿に異変がないと分かると、殿下は自分の食事に手を付け始めた。
 
 他の人達はエンペラーとクロがざっと匂いを嗅ぎ、異常がないことを確認して食べ始める。

「いただきます!」
「いただきます」
「パパ、ステーキ食べたい!」

 サラダもついてるけど、一番お腹が空いてておいしく感じる時に美味しいお肉を食べたい。そう思ってパパを見上げると、パパはそんなシロの考えなどお見通しとばかりに微笑んでいた。

「はいはい、ほらあ~ん」
「あーん」

 厚めなのに柔らかいお肉が口の中に入って来る。
 お、おいしい!!
 歯茎だけでも噛めちゃうくらい柔らかいし嫌な臭みゼロ! それに、ソースもなんか、なんか深い味がする!!

 両手で頬を挟み、キラキラとした目をパパに向ける。

「パパ、シロは感動してる……」
「よかったなぁ。感動してるシロもかわいいぞ」

 慈愛の微笑みを向けられる。

「シロちゃ~ん! 約束通り俺のステーキ一切れあげるね!」

 アニがステーキの刺さったフォークを差し出してくる。

「はいあ~ん」
「あ~ん」

 ぱっかりと口を開け、ステーキを受け入れる。
 ん~、おいし~!!
 おいしすぎてうっとりしちゃう。これが至福の時ってやつなんだね。

 それから、みんながシロに食べ物を分けてくれようとしたけど食べ過ぎちゃうからってパパが止めてた。
 ちょっと残念。







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