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二章
やっと到着
しおりを挟むちょっとしたアクシデントはあったけど、私達は予定通りに宿を発った。
夜中にちょっと起きちゃったけど、よく寝たからシロも元気いっぱいだ。
「――シロ、もうすぐシーベルト国に入るぞ」
「お~!」
カラカラと音を立てて馬車が国境の川を跨ぐ橋を走る。
大きな橋だから、窓から外を見ても下を流れる川は見えない。残念。でも橋を渡る前にちらっと見えた川はとても綺麗だった、ぜひ入りに行きたい。
お水があったら吸い込まれるように近付いて行っちゃうのは子どもの性だよね。
「シロおいで」
「は~い」
パパのお膝の上に座るとお腹に腕を回される。
「もうすぐ検問所だから一旦大人しくしてような。と言っても俺達は素通りできるはずだが……」
パパがそう言った瞬間、「止まれ!」という男の人が聞こえてきた。明らかに私達の一団に対してだ。思わずシラッとした目をパパに向けてしまう。
「フラグだったねパパ」
「フラグだったなシロ」
パパが外に視線を向けて小さく舌打ちをしたのをシロは聞き逃さなかったよ。ついでに「だからこの国には来たくなかったんだ」って呟いたのも。
パパを見上げていた顔を戻すと、殿下が後ろに黒いモノを背負った笑顔になっていた。うわぁ。
馬車の外では何やら言い争う声が聞こえてくる。どうやら検問所の人が馬車の中を検めようとしているらしい。仮にも他国の王族が乗っているこの馬車を。
うん、普通に失礼だよね? こっちは目立たないように来てるわけだし。しかも事前に話は通してたんだし。
外から聞こえてくる上から目線の物言いにムカムカしてきちゃう。
アニ達が出て行って対応しようとしたみたいだけど向いてないと判断されて騎士さん達に止められたようだ。賢明な判断だね。みんな口よりも手を出す方が得意だもん。
すると、パパがスッと窓から顔を覗かせた。そして検問所の人にある紙を見せる。
「これはそちらの王族から届いた招待状の一部だ。ここに検問所での検閲は受けなくていいと書いてあるが、見えないか?」
「ヒッ、あ、いえ、見えます」
「そうか、それはよかった」
男の人を一睨みするとパパは窓を閉じ、ついでにカーテンもしっかりと閉める。
隙間なくカーテンを閉じ終わった瞬間、外から「と、通っていいぞ!」という声が聞こえてきた。
それに私の思考とパパの声がシンクロする。
「いや一言くらい謝れよ」
「うんうん」
まったくだよ。絶対に向こうの伝達ミスが原因なのに。
まだ判断するのは早いけど、これはシーベルト国の国民性なのかな……? だとしたら殿下がぼろくそに言うのも納得できる気がする……。
「……パパ、シロは気が重くなってきました」
「奇遇だな。パパもだ」
「奇遇だね、ボクは出発前からずっと気が重いよ」
はぁ……。
私達の溜息が重なった。
それから大通りを道なりに馬車で走り、暫くすると王城が見えてくる。
「うわぁ……」
馬車の窓から王城を見た瞬間、私は思わず声を漏らしてしまった。
「金ぴかだな」
「あそこまでくると逆に趣味が悪いねぇ」
王城はほとんどの部分が金色でできていた。さすがにメッキだろうけど、ギラギラとしているそれは品がいいというよりザ・成金という印象を受ける。
お城を見上げてシロは呟く。
「……もしかして、シロ達とんでもない場所に来ちゃった……?」
「かもなぁ……」
種々の変人、奇人をまとめ上げるパパが同意するってことはこの国、相当かもしれない。
――シロ、なんかやんなってきちゃったな~……。
現実から目を逸らすように、私はパパの膝の上で丸くなった。
「わぁかわいい」
「シロだけが癒しだな」
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