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一話
しおりを挟む金属を打ちつけ合う轟音がまだ朝も早いというのに静かな家にけたたましい音を響かせていた。
嫌というほど聞き慣れた目覚ましの音に僕はハッと目を覚ました。この頃はこの急かされる様な音に、鬱陶しさすら感じなくなっていた。
温かい布団に未練を感じる体を無理矢理に洗面台へと向かわせ、躊躇する事なく思いっきり冷たい冷水を顔に浴びせた。
タオルで拭いてもまだ完全に乾いていない顔のままリビングのカーテンを開けた。外の光を取り込もうと思ったが毎度のことながら外は暗かった。
その時点で僕の意識は既にハッキリと目を覚ましていた。
今日も義務的に学生鞄に教科書を詰め、身なりを整え、家を出て鍵を閉め、物静かな家を僕は一人後にした。
家を出れば外はいつもと同じ様に気味の悪い明るさで一杯だった。地面、電柱、家全てが君の悪い明るさに包まれていた。
でも、この気味の悪い明りは僕以外の人には見えない。
最初に気づいたのは小学校に入学して直ぐだったと思う。
僕は世界はずっと明るい物だと思っていた。常にどんな物も光を持っていて、明るい世界だと。
けど、僕だけだった。
最初は本当に些細なきっかけだった。
僕がトイレに行った時、トイレの中は真っ暗だったらしい。窓もないトイレだったのもあってか余計に暗かったのだろう。
僕が用を足していた時に入ってきた友達が、何故こんな暗い中でしていたのか、と聞いた時僕は違和感を感じた。
何故こんなに明るいのに暗いというのか全く分からない。暗いのは夜の空だけだろうと。そう返した。
僕にとって暗いと思えるのは晴れた夜の空だけだった。
友達の目には光なんて見えていなかったのだ。
これ以降は覚えていない。小学生の頃の記憶など曖昧で、小学生には明るさなど些細な物だ。
次に確信を覚えたのは中学一年の夏頃だった。
当時僕の学校では”肝試し”が流行っていたらしく、その波に乗って僕のクラスでも肝試しが行われた時だった。
遅い時間にクラスで山に集まり肝試し行った。遅い時間の外出に少し興奮していた記憶も若干ある。
二人一組で山道を抜け、古い墓地を抜けて戻ってくるという実に簡単な内容だった。
中学生で考えれば十分すぎる内容だろう。
周りはお化けや暗さに怖がり、そしてそれを楽しんでいたが、僕はただの遊びとして楽しんでいたと思う。
強がる男子や、怖がる女子実に中学生らしく面白くはあった。何人かは怖くて来れなかったらしい。
何組ものペアが様々な反応を示しながら戻ってき、ついに僕とクラスの女子のペアで行く事になった。
僕は何故懐中電灯をわざわざ持つのかは分かっていなかった。
一つの懐中電灯を持ち、山道を二人でゆっくりと進んでいく。その間クラスの女子は怖いね、だとか、暗いね。と言っていたのを覚えている。
僕の目に映る世界はやはり明るかった。
この頃には僕は周りと見える世界が違うのではないかと薄っすらとは思っていた。
明るいはずの場所を皆は暗いと言うことに違和感を持ち始めたのだ。
だから僕はちょうど肝試しの道の半分ほどに来た時にクラスの女子に聞いてしまった。
些細な質問で、僕にとって核心をよく突いた物だったと思う。当たり障りもない言葉で僕は真実を知った。
ちょうど近くにあったお墓、あの墓は何色に見える?、聞いた。
暗くて見えない、と帰ってきた。
僕の目には明るい色で光るお墓が見えていた。
暫く驚きで僕は固まっていた。体がセメントで固められたのかと思うほどに重かった。
幼い頃から感じていた違和感が綺麗に繋がって行った。
僕は急に自分の事が怖くなった。
肝試しが終わった後僕は直ぐに家に帰った。ビビリと同級生に言われたが全く気にしなかった。
調べ物をした。目の病気を調べた。そんな病気は無かった。目をくり抜こうとして、怖くて止めた。
僕はその時から自分がおかしい事を自覚した。
見える光がとても怖くて暫く家から出られなくなった。家の中にある光も怖かった。
けど、光は幼い頃からずっと見ていたからかそんな時間も直ぐに終わった。
そして、僕はその光をしっかりと観察する事にした。ずっと身近にあったせいかしっかりと観察した事は無かった。
中学生の時に急に周りの空気や、重力を観察しようとした人は少ないだろう。そんな感じだ。
光への恐怖は無くなっていた。
そしてその観察は僕に新たな影響を与えた。いいか悪いかで言えばきっと悪い方なんだろう。
小さな、小人が見える様になった。
小人だ。小人がいたのだ。
普段気づかない様な小さな小人がいた。
人の形をしている様で顔には何も付いていない小指ほどの小さな小人。
初めて見たわけでは無いのだろう。きっと視界には映っていたのだろうが、気づかなかった。
そしてより僕は小人を観察した。
何処に現れ、何処で、何をするのかを。探して、探して、見つけた。
彼らは光を持って食べていた。何故?僕にも分からない。
ただわかる事は光を持つものが壊れると、小人は中空から急に現れた光を食べて消える。
それだけだった。強いて言えば小人は触れることができず、こちらを認識していなさそうな事ぐらいだった。
結局僕の観察は小人を見つけただけで、余計に謎を深めただけだった。
光が何なのかは何も分からなかった。
もう、気にする事を諦めていた。全てを気にしないものとして過ごす事にした。
そして、今光っている投稿中に見える地面も、壁も、家も、普通のものとして日常生活を送っている。
ただ、そんな”普通”の日常生活だったが、今日はやけに胸騒ぎを感じていた。
普段通りの通学路が少し狭苦しい様な。
何となく不安を感じる様な、気のせいだろうが光がいつもより少ない気がした。
ただの体調不良だと、そう割り切り普段通りに歩みを進める。
同じ通学路、同じ坂道、同じ信号。
同じはずの道が何故か、不安をより一層強くさせている気がした。
学校に向かう信号をいつもの様に待っている時だった。
信号の反対側にはこの時間には珍しく、スーツ姿の社会人と思われる男性と、やけに露出の多いドレスのような服を着た夜職をしているであろうと一目で予測できる女性がいた。
それだけならただ時間帯に合わない二人だったはずだ。珍しいと思い、いつもなら目線を外して終わりだ。
何故か僕の目線は彼らにしっかりと固定されていた。
違和感を感じた。
目の疲れだろうか、黒い、モヤが見えた。彼らの周りに黒いモヤが見えた。
よく見れば彼らはやけに虚な顔をしている様に見える。疲れているのだろうか。
あれ、少し身長が高い気がする。
彼らを見ている間に信号は変わっていた。
信号が青に変わった。
青に変わった時、僕はやっと違和感に気づいた。
視線はまだ彼らに向かっていた。
彼らの身長は優に信号機を超えているでは無いだろうか。
顔?そんなもの元々無いでは無いか。
僕の体は勝手に動いていた。
逃げた?逃げれなかった。体はもう信号機をまっすぐ歩き出していた。
何故か僕の体はいつもと同じ様に信号を渡っていく。
普通と変わらない歩速でゆっくりと近づいてくる。
お互い反対から歩く故に余計に早く近づいていく。
誰も彼らの異様さに目を向けていなかった。見えているはずなのに。
ついに僕は彼らとすれ違う後一歩の距離に立っていた。
目はあっていなかったからか、じっと僕を見つめる視線を肌で感じた。
そして僕は彼らのすれ違い様に頭を食いちぎられた。いや殆ど呑み込まれた様な物だ。
最後に見たのは凶暴な歯が無数に生え、ありえない角度に開いた口と、楽しそうに笑う人を型どった化け物だった。
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