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6 嵐のあとの静寂、そして猛獣の朝風呂
結局、あの強引な猛獣が完全に満足して眠りについたのは、窓の外がうっすらと白み始める頃だった。
計5回戦。
何年振りかに男に抱かれた広の身体には、あまりにも過酷すぎる夜だった。
「……っ、い、た……」
広は顔をしかめ、そっと自分の腰を擦った。お尻の奥から腰にかけて鉛のような鈍い痛みが走り、まともに立ち上がるのすら一苦労だ。今日が運良く治療院の定休日であったことに、広は心底感謝した。(いや、定休日前日を狙っただろうか?)
視線を横に向けると、二つぴったりと並べられた施術用ベッドの上で、大井鷹也が気持ちよさそうに静かな寝息を立てている。195cmの巨体が丸まるようにして広を抱き込んでいたため、広は朝まで彼の丸太のような腕の中で眠っていたのだ。
(……こんなにぐっすり眠れたの、いつ以来だろう)
他人の体温、それも自分を力ずくで組み敷き、めちゃくちゃに暴れ回った男の腕の中だというのに。広の心は不思議なほど穏やかで、満たされていた。
ずっと独りで生きていくつもりだった自分の隣に、圧倒的な熱量で「お前がいい」と告げてくれる存在がいる。その事実がもたらす安心感に、広は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
広は、熟睡している鷹也を起こさないようにそっと腕を抜け出し、ベッドから這い出た。
広はこの治療院のバックルームを居住スペースとして使っているため、奥には備え付けの小さなシャワールームがある。
震える足に鞭打って脱衣所へ向かい、鏡の前に立った広は、思わず息を呑んで両手で顔を覆った。
「……ひどい……」
元々白かったはずの肌は、首筋から鎖骨、胸元、さらには内腿に至るまで、赤や紫の鬱血痕でキャンバスのように埋め尽くされていた。執拗に吸い上げられた乳首は未だにツンと腫れ上がり、少し空気に触れただけでもビクッと腰が逃げそうになるほど過敏になっている。
これが全部、あの男が「俺のモンだ」と証明するために刻み込んだ痕。
恥ずかしさと、昨夜の情景を思い出してぶり返した熱っぽさが入り混じり、広は逃げるようにシャワールームの扉を開け、お湯を出した。
狭い空間と、尽きない情熱
温かいお湯が、強張った筋肉と昨夜の情事のべたつきを洗い流していく。ボディソープを手に取り、少し痛む身体を慎重に撫で洗いしていた、その時だった。
ガラッ!
「……広。起きてたのか」
「!?お、大井さん!?」
突然シャワールームのすりガラスの扉が開き、全裸の巨漢が身を屈めるようにして入ってきた。一人用のシャワールームに100kg超えのボディビルダーが入り込めば、当然ながら空間は完全に飽和する。
「ちょっと、ここに二人は無理ですよ! 狭いんだから、後にして……っ」
慌てて身体を隠そうとする広だったが、鷹也は全く気にする素振りもなく、狭い空間で広を後ろからすっぽりと抱き込んだ。
「目が覚めたら腕の中にいねえから、焦って探したじゃねえか」
寝起きの少し掠れた声が耳元に降りかかり、広の背中に、鷹也の熱く硬い大胸筋がぴたりと密着する。
そして、鷹也の視線は、シャワールームの曇った鏡越しに、広の全身に刻まれた自分の「所有印」へと真っ直ぐに注がれていた。
「……すげえ。俺がつけたキズ、こんなにいっぱいある」
鷹也の瞳に、再びあの獰猛な熱がじんわりと灯るのが鏡越しに見えた。
「だ、だから恥ずかしいって言ってるじゃないですか……っ。こんなの、しばらく半袖も着られないですよ……っ」
「着なくていい。誰にも見せたくねえ。……俺だけのモンだ」
チュッ、と濡れたうなじに、鷹也の熱い唇が落ちる。
背中に当たる鷹也の下半身が、5回戦を終えた翌朝だというのに、再び信じられないほどの硬さと熱を持ち始めているのを、広ははっきりと感じ取ってしまった。
「うそでしょ……大井さん、まさか……痛っ」
「オフ期の俺の性欲、舐めんなって言ったろ?」
鷹也の太い腕が、石鹸の泡ごと広の腰を抱き寄せ、その大きな手が、再び広の過敏な胸の先端を的確に捉えた。
「それに、こんなエロい身体見せられて、俺が我慢できるわけねえだろ」
「あっ、だめ、シャワー中……っ、腰、痛いのに……んぅっ!」
「大丈夫だ、俺が全部支えててやるから」
反論する間もなく、泡に塗れた広の身体は軽々と持ち上げられ、シャワールームの壁へと背中を押し当てられた。
かがんだ鷹也が広の太ももを持ち上げる。咄嗟に鷹也にしがみつき落ちないように腕をまわす。
あっという間に、空中へ持ち上げられて駅弁の体位へと持っていかれた。
「お、大井さん?まさか…」
「狭い中でやるのも燃えるな。落ちないようにしっかり捕まってろよ」
休日の穏やかな朝になるはずが、この底なしの体力を持つ猛獣のせいで、広の平穏な一日はまだまだ始まりそうになかった。
計5回戦。
何年振りかに男に抱かれた広の身体には、あまりにも過酷すぎる夜だった。
「……っ、い、た……」
広は顔をしかめ、そっと自分の腰を擦った。お尻の奥から腰にかけて鉛のような鈍い痛みが走り、まともに立ち上がるのすら一苦労だ。今日が運良く治療院の定休日であったことに、広は心底感謝した。(いや、定休日前日を狙っただろうか?)
視線を横に向けると、二つぴったりと並べられた施術用ベッドの上で、大井鷹也が気持ちよさそうに静かな寝息を立てている。195cmの巨体が丸まるようにして広を抱き込んでいたため、広は朝まで彼の丸太のような腕の中で眠っていたのだ。
(……こんなにぐっすり眠れたの、いつ以来だろう)
他人の体温、それも自分を力ずくで組み敷き、めちゃくちゃに暴れ回った男の腕の中だというのに。広の心は不思議なほど穏やかで、満たされていた。
ずっと独りで生きていくつもりだった自分の隣に、圧倒的な熱量で「お前がいい」と告げてくれる存在がいる。その事実がもたらす安心感に、広は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
広は、熟睡している鷹也を起こさないようにそっと腕を抜け出し、ベッドから這い出た。
広はこの治療院のバックルームを居住スペースとして使っているため、奥には備え付けの小さなシャワールームがある。
震える足に鞭打って脱衣所へ向かい、鏡の前に立った広は、思わず息を呑んで両手で顔を覆った。
「……ひどい……」
元々白かったはずの肌は、首筋から鎖骨、胸元、さらには内腿に至るまで、赤や紫の鬱血痕でキャンバスのように埋め尽くされていた。執拗に吸い上げられた乳首は未だにツンと腫れ上がり、少し空気に触れただけでもビクッと腰が逃げそうになるほど過敏になっている。
これが全部、あの男が「俺のモンだ」と証明するために刻み込んだ痕。
恥ずかしさと、昨夜の情景を思い出してぶり返した熱っぽさが入り混じり、広は逃げるようにシャワールームの扉を開け、お湯を出した。
狭い空間と、尽きない情熱
温かいお湯が、強張った筋肉と昨夜の情事のべたつきを洗い流していく。ボディソープを手に取り、少し痛む身体を慎重に撫で洗いしていた、その時だった。
ガラッ!
「……広。起きてたのか」
「!?お、大井さん!?」
突然シャワールームのすりガラスの扉が開き、全裸の巨漢が身を屈めるようにして入ってきた。一人用のシャワールームに100kg超えのボディビルダーが入り込めば、当然ながら空間は完全に飽和する。
「ちょっと、ここに二人は無理ですよ! 狭いんだから、後にして……っ」
慌てて身体を隠そうとする広だったが、鷹也は全く気にする素振りもなく、狭い空間で広を後ろからすっぽりと抱き込んだ。
「目が覚めたら腕の中にいねえから、焦って探したじゃねえか」
寝起きの少し掠れた声が耳元に降りかかり、広の背中に、鷹也の熱く硬い大胸筋がぴたりと密着する。
そして、鷹也の視線は、シャワールームの曇った鏡越しに、広の全身に刻まれた自分の「所有印」へと真っ直ぐに注がれていた。
「……すげえ。俺がつけたキズ、こんなにいっぱいある」
鷹也の瞳に、再びあの獰猛な熱がじんわりと灯るのが鏡越しに見えた。
「だ、だから恥ずかしいって言ってるじゃないですか……っ。こんなの、しばらく半袖も着られないですよ……っ」
「着なくていい。誰にも見せたくねえ。……俺だけのモンだ」
チュッ、と濡れたうなじに、鷹也の熱い唇が落ちる。
背中に当たる鷹也の下半身が、5回戦を終えた翌朝だというのに、再び信じられないほどの硬さと熱を持ち始めているのを、広ははっきりと感じ取ってしまった。
「うそでしょ……大井さん、まさか……痛っ」
「オフ期の俺の性欲、舐めんなって言ったろ?」
鷹也の太い腕が、石鹸の泡ごと広の腰を抱き寄せ、その大きな手が、再び広の過敏な胸の先端を的確に捉えた。
「それに、こんなエロい身体見せられて、俺が我慢できるわけねえだろ」
「あっ、だめ、シャワー中……っ、腰、痛いのに……んぅっ!」
「大丈夫だ、俺が全部支えててやるから」
反論する間もなく、泡に塗れた広の身体は軽々と持ち上げられ、シャワールームの壁へと背中を押し当てられた。
かがんだ鷹也が広の太ももを持ち上げる。咄嗟に鷹也にしがみつき落ちないように腕をまわす。
あっという間に、空中へ持ち上げられて駅弁の体位へと持っていかれた。
「お、大井さん?まさか…」
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