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1通学電車と巨人
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「……どうして、こうなったんだろう」
俺の思考は、周りを囲む3人の熱気と湿気でショート寸前だった。
山梨の山腹を走る、4両編成のローカル線。
窓の外には赤トンボが飛び交い、稲穂が揺れる長閑な秋の風景が広がっているはずだが、今の俺の視界には「男の筋肉」しか映っていない。
朝6時20分、通学ラッシュの車内は、都内ほどではないにせよ、朝練に向かう運動部の学生たちですし詰め状態だった。
俺、サトウアカシは、いつものように先頭車両の隅、壁際のポジションを確保した……はずだった。
「……混んできたな」
俺の頭上遥か彼方から、低い地響きのような声が降ってくる。
レスリング部、アサカワダイチ。
身長195センチ、体重103キロ。高校生とは思えない体格。
ロードワークで日焼けした褐色の肌が、薄いシャツ越しに熱を放っている。
彼が動くと、それだけで周囲の空気が圧迫されるような威圧感があった。
「そうだね。ごめんダイチ、押されそうだから背中向けるよ」
「……おう」
俺はリュックを前に抱え、せめてもの防御壁を作る。
だが、駅に到着して新たな学生が雪崩れ込んでくると、そんな抵抗は無意味だった。
グウッ……。
「うっ……!」
人の波に押され、俺の背中はダイチの分厚い胸板と、鋼のような腹筋に押し付けられた。
そして、腰のあたり。
ダイチの下腹部に、つま先立ちしている俺のお尻が密着する。
(……っ、なんか硬いのが当たってる?)
ポケットの中のスマホだろうか?
いや、それにしては大きすぎるし、形がゴツゴツしている。
それに何より――熱い。
「……ごめん、スマホ潰してる?」
「っつ、スマホじゃねーから平気だけど……」
「?、身体の向き変えた方がいい?」
「……いい、動くな」
ダイチが俺の耳元で低く呻り、逃げようとする俺の腰を太い腕でガシッと固定した。
その瞬間、尻に当たっていた硬いものが、ビクンと脈打った気がした。
……スマホじゃない。じゃあ、これは一体?
思考が停止しかけたその時、目の前のドアが開いた。
「おはよ。アカシ、ダイチ」
爽やかな秋の風と共に現れたのは、バレー部の絶対的エース、オザキカイだ。
192センチの長身。モデルのような小顔と長い手足。
彼は人混みを優雅にかき分け、俺の正面――つまり、俺を壁に閉じ込める位置に陣取った。
「カイ、おはよ……」
「ん? アカシ、耳になんかついてる」
カイが整った顔を近づけてくる。
俺が反応するよりも早く、彼は俺の耳元に唇を寄せ、吐息混じりに囁いた。
「……嘘だよ。今日も良い匂いするな、アカシ」
「なっ……!?」
「はは、真っ赤になってやんの」
カイは悪戯っぽく笑い、俺の髪をクシャリと撫でる。
その笑顔は学校中の女子を虜にする「王子様」そのものだが、至近距離で見つめる瞳の奥は、
獲物を狙う肉食獣のようにギラギラと光っていた。
後ろにはダイチの硬いモノ。正面にはカイの視線。
すでに逃げ場はないのに、次の駅で最後の「壁」が現れた。
「うーす! 巨人たちのせいでアカシが見えねぇな!」
豪快な声と共に割り込んできたのは、柔道部のサカモトソウだ。
190センチの筋肉ダルマ。坊主頭に屈託のない笑顔。
彼は強引に俺の右側に体をねじ込んできた。
「おっ、アカシまた縮んだか? 埋もれてんぞ」
「俺が平均なんだよ! お前らがデカすぎるだけだって!」
「へへ、ちっこくて可愛いじゃん」
ソウが俺の頭をポンポンと叩く。その腕は俺の太ももくらい太く、制服越しに伝わる体温は異常に高い。
後ろにはダイチ(195cm)。
正面にはカイ(192cm)。
右にはソウ(190cm)。
左は電車の冷たい壁。
俺を中心にした半径50センチの空間だけ、酸素が薄い。
汗と、制汗剤と、そして男特有のムワッとした雄の匂いが充満している。
(……暑い)
季節は秋だというのに、3人の熱で俺の首筋には一筋の汗が伝い落ちた。
3人の巨人に囲まれ、物理的にも視覚的にも完全に遮断された、俺たちだけの密室。
その時だった。
電車の揺れに合わせて、背中のダイチの「硬いもの」が、さらに大きく、
硬く膨れ上がったのをはっきりと感じた。
(これってまさか)
俺が身を強張らせると、正面のカイと目が合った。
彼は俺の焦りを見透かしたように、ニヤリと口角を上げた。
「……アカシ、顔赤いぞ? どうした?」
カイにはばれているのだろうか?
俺の背中にダイチの凶器のようなものがあたっているのを。
「アカシ、汗かいてんぞ」
ソウが俺の首にかいた汗を太い指でなぞる。
「ひゃ!?」
不覚にも変な声をあげてしまった。
「なんだよ、感じたのか?」
不敵な笑みで俺の汗を拭った指を舐める。
「んなわけ…びっくりしただけだよ。それより汚いから舐めんなって」
「汚くねーよ、アカシのは甘い味がする」
「バカ、ほら降りるぞ」
程なくして駅に着いて、学校へと向かう。
圧迫された空間から解放され、学校の最寄り駅で逃げるように降りる。
なんだか3人共、今日はテンションがおかしい気がする…
気のせいかな?
背中越しのダイチの隆起、正面からカイの熱い眼差し、右側からはソウの愛撫。
今までもスキンシップはあったが、今日は何か意図的なものを感じた。
今思うと、これは放課後に起きる事件の準備に過ぎなかった。
俺の思考は、周りを囲む3人の熱気と湿気でショート寸前だった。
山梨の山腹を走る、4両編成のローカル線。
窓の外には赤トンボが飛び交い、稲穂が揺れる長閑な秋の風景が広がっているはずだが、今の俺の視界には「男の筋肉」しか映っていない。
朝6時20分、通学ラッシュの車内は、都内ほどではないにせよ、朝練に向かう運動部の学生たちですし詰め状態だった。
俺、サトウアカシは、いつものように先頭車両の隅、壁際のポジションを確保した……はずだった。
「……混んできたな」
俺の頭上遥か彼方から、低い地響きのような声が降ってくる。
レスリング部、アサカワダイチ。
身長195センチ、体重103キロ。高校生とは思えない体格。
ロードワークで日焼けした褐色の肌が、薄いシャツ越しに熱を放っている。
彼が動くと、それだけで周囲の空気が圧迫されるような威圧感があった。
「そうだね。ごめんダイチ、押されそうだから背中向けるよ」
「……おう」
俺はリュックを前に抱え、せめてもの防御壁を作る。
だが、駅に到着して新たな学生が雪崩れ込んでくると、そんな抵抗は無意味だった。
グウッ……。
「うっ……!」
人の波に押され、俺の背中はダイチの分厚い胸板と、鋼のような腹筋に押し付けられた。
そして、腰のあたり。
ダイチの下腹部に、つま先立ちしている俺のお尻が密着する。
(……っ、なんか硬いのが当たってる?)
ポケットの中のスマホだろうか?
いや、それにしては大きすぎるし、形がゴツゴツしている。
それに何より――熱い。
「……ごめん、スマホ潰してる?」
「っつ、スマホじゃねーから平気だけど……」
「?、身体の向き変えた方がいい?」
「……いい、動くな」
ダイチが俺の耳元で低く呻り、逃げようとする俺の腰を太い腕でガシッと固定した。
その瞬間、尻に当たっていた硬いものが、ビクンと脈打った気がした。
……スマホじゃない。じゃあ、これは一体?
思考が停止しかけたその時、目の前のドアが開いた。
「おはよ。アカシ、ダイチ」
爽やかな秋の風と共に現れたのは、バレー部の絶対的エース、オザキカイだ。
192センチの長身。モデルのような小顔と長い手足。
彼は人混みを優雅にかき分け、俺の正面――つまり、俺を壁に閉じ込める位置に陣取った。
「カイ、おはよ……」
「ん? アカシ、耳になんかついてる」
カイが整った顔を近づけてくる。
俺が反応するよりも早く、彼は俺の耳元に唇を寄せ、吐息混じりに囁いた。
「……嘘だよ。今日も良い匂いするな、アカシ」
「なっ……!?」
「はは、真っ赤になってやんの」
カイは悪戯っぽく笑い、俺の髪をクシャリと撫でる。
その笑顔は学校中の女子を虜にする「王子様」そのものだが、至近距離で見つめる瞳の奥は、
獲物を狙う肉食獣のようにギラギラと光っていた。
後ろにはダイチの硬いモノ。正面にはカイの視線。
すでに逃げ場はないのに、次の駅で最後の「壁」が現れた。
「うーす! 巨人たちのせいでアカシが見えねぇな!」
豪快な声と共に割り込んできたのは、柔道部のサカモトソウだ。
190センチの筋肉ダルマ。坊主頭に屈託のない笑顔。
彼は強引に俺の右側に体をねじ込んできた。
「おっ、アカシまた縮んだか? 埋もれてんぞ」
「俺が平均なんだよ! お前らがデカすぎるだけだって!」
「へへ、ちっこくて可愛いじゃん」
ソウが俺の頭をポンポンと叩く。その腕は俺の太ももくらい太く、制服越しに伝わる体温は異常に高い。
後ろにはダイチ(195cm)。
正面にはカイ(192cm)。
右にはソウ(190cm)。
左は電車の冷たい壁。
俺を中心にした半径50センチの空間だけ、酸素が薄い。
汗と、制汗剤と、そして男特有のムワッとした雄の匂いが充満している。
(……暑い)
季節は秋だというのに、3人の熱で俺の首筋には一筋の汗が伝い落ちた。
3人の巨人に囲まれ、物理的にも視覚的にも完全に遮断された、俺たちだけの密室。
その時だった。
電車の揺れに合わせて、背中のダイチの「硬いもの」が、さらに大きく、
硬く膨れ上がったのをはっきりと感じた。
(これってまさか)
俺が身を強張らせると、正面のカイと目が合った。
彼は俺の焦りを見透かしたように、ニヤリと口角を上げた。
「……アカシ、顔赤いぞ? どうした?」
カイにはばれているのだろうか?
俺の背中にダイチの凶器のようなものがあたっているのを。
「アカシ、汗かいてんぞ」
ソウが俺の首にかいた汗を太い指でなぞる。
「ひゃ!?」
不覚にも変な声をあげてしまった。
「なんだよ、感じたのか?」
不敵な笑みで俺の汗を拭った指を舐める。
「んなわけ…びっくりしただけだよ。それより汚いから舐めんなって」
「汚くねーよ、アカシのは甘い味がする」
「バカ、ほら降りるぞ」
程なくして駅に着いて、学校へと向かう。
圧迫された空間から解放され、学校の最寄り駅で逃げるように降りる。
なんだか3人共、今日はテンションがおかしい気がする…
気のせいかな?
背中越しのダイチの隆起、正面からカイの熱い眼差し、右側からはソウの愛撫。
今までもスキンシップはあったが、今日は何か意図的なものを感じた。
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