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2朝練とロッカールーム
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駅の改札を抜けると、少しだけ空気が軽くなった気がした。
それでも、俺の周囲の人口密度は相変わらず高いままだ。
駅から学校へ向かうまでの10分間。
4人で並んで歩いていると、不意にソウが口を開いた。
「朝の電車、マジで混んでたなー。
……なぁダイチ、お前なんでアカシの腰あんなにガッチリ掴んでたんだよ」
ソウの言葉に、俺の心臓がドキリと跳ねた。
あの時、お尻に押し付けられていた硬い感触と、熱い掌の記憶が蘇る。
「……あーしないと、アカシが他の奴に潰されんだろ」
「へぇ? 潰されないためのクッション扱いかよ」
「……うるせぇ」
ダイチは無愛想に答えるが、その視線が一瞬だけ俺の腰元を這ったのを、感じた。
俺たちは学校までの通学路を歩く。
俺の正面にカイ、左前にソウ、そして左隣にダイチ。
174センチの俺も決して小さくはないはずだが、190センチ越えの巨獣3人に囲まれると、
まるで捕らえられた小動物のような気分になる。
すれ違う生徒たちが、俺たち(というより、この威圧的な集団)を見ては道を空けていくのが分かった。
「アカシ、今日の昼どうする? 学食?」
カイが俺の顔を覗き込むようにして聞いてきた。
爽やかな笑顔だが、その瞳は逃げ道を塞ぐように俺を捉えている。
「うん、そのつもりだけど……みんなも?」
「当たり前だろ。席取っとくから、ちゃんと来いよ」
「……分かった」
世話焼きなカイは、当然のように俺のスケジュールを管理したがる。
俺は流されるままに頷くしかなかった。
校門をくぐり、部室棟の前で足が止まる。
「んじゃ、俺らはこっちだから。また昼な」
ソウが俺の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
「痛いって、ソウ!」
「髪柔らかいなー。……いい匂いするし」
ソウはニヤリと笑い、俺の首筋に鼻先を寄せてから、柔道場の方向へ歩き出した。
「……アカシ、後で」
ダイチも短くそう言うと、俺の尻――さっき電車で散々押し付けられていたあたり――をポンと叩き、レスリング部の部室へと消えていった。
残されたのは、俺とカイの二人だけ。
「俺らも行こうぜ」
「うん」
バレー部の部室は、体育館の脇にある。
まだ他の部員は来ていないようで、鍵を開けて中に入ると、しんとした空気が漂っていた。
独特のエアーサロンパスと、埃っぽい匂い。密室の静寂。
「一年は俺らが一番乗りか」
カイが慣れた手つきで自分のロッカーを開ける。
俺のロッカーはカイの対面にある。
お互いに着替えを始め、制服のボタンを外し始めた。
「……ふぅ」
俺はシャツを脱ぎ、スラックスを下ろす。
下着一枚になると、さすがに朝の空気は肌寒い。
俺は急いで練習着のTシャツを被ろうと両手を袖に通した――その時だ。
「アカシ、ちょっと待った」
背後からカイの声がして、肘までしか入っていないTシャツごと後ろから左腕を掴まれた。
後ろから拘束されたような体勢になり、俺は振り返ることができない。
「え? 何?」
「お前、なんか尻回り……またデカくなった?」
カイの右手が、俺の腰骨から下のあたりを滑るように触れる。
大きな掌だ。俺の腰なんて、片手で掴めてしまいそうなほど。
そして何より――熱い。
「太ってないよ! 筋肉ついたんだよ、スクワット増やしたし」
「へえ……」
カイは俺の身体を値踏みするようにじっくりと眺めた。
192センチの高さから見下ろされると、蛇に睨まれたカエルのような気分になる。
俺の尻は、男にしては大きい。95センチあるヒップラインは、細身のウエストとの差で余計に目立つ。
コンプレックスでもあるそれを、カイは熱っぽい視線で追っていた。
「筋肉ねぇ。……にしては、随分と柔らかそうに見えるけど」
カイの手は、繰り返し腰から尻をなぞる。
そして、ボクサーパンツの上から、俺の尻の肉をむにゅ、と掴んだ。
「ひゃっ!? カ、カイ!?」
「うん、やっぱり柔らかい。リベロ特有の筋肉か? それとも……」
カイの指が、割れ目に食い込むような動きをする。
ただのじゃれ合いにしては、指の力が強すぎるし、触り方がねっとりとしている。
まるで、肉の質感を確かめるような、いやらしい手つき。
「や、やめろって! 先輩たちが来る前に準備しないと!」
俺が慌てて身をよじると、カイはハッとしたように手を離した。
いつもの爽やかな笑顔に戻っているが、その瞳の奥には、さっき電車の中でダイチが見せていたのと同じ、
暗く濁った色が揺らめいていた。
「わりわり。あまりに触り心地良さそうだったから」
「……カイ……、かっこいいからって、俺が女子だったら犯罪だぞ」
「あはは、ごめんって。ほら、早く着替えろよ。置いてくぞ」
カイは自分の練習着を頭から被り、あっという間に着替えを終えてしまう。
その背中は広く、筋肉の鎧をまとっているようだ。
俺は赤くなった顔を隠すようにTシャツを着込みながら、さっき尻に残った手の感触を振り払おうとした。
ただのスキンシップだ。男同士だし、部活仲間だし。
……でも、なんであんなに、捕食するような目で見ていたんだろう。
体育館に移動し、モップがけやボールの準備をする。
他の一年たちも合流し、先輩たちが集まる前に準備は終えられた。
今日の朝練は、ボールを使う時間はわずかで、大半が筋力トレーニングに費やされた。
スクワット、デッドリフト、体幹トレーニング。
バレーボールに必要な爆発的な瞬発力を養うためのメニューだが、俺にとっては地獄のような90分だった。
「はぁ、はぁ……キツい……」
「アカシ、膝が入ってる。もっと尻引いて」
カイが俺の腰をグイッと掴んでフォームを修正する。
汗ばんだウェア越しに伝わる熱。
ただの指導のはずなのに、カイが背後に立つと、その巨大な影に飲み込まれるような圧迫感がある。
「終わった奴らから、 パス回してクーリングダウン!」
ようやく終わった頃には、俺は汗だくで立っているのがやっとだった。
今日のトレーニングは特に脚トレが多かったのも原因だろう。
太ももや尻がパンプして、歩くたびに筋肉が張るのがわかる。
準備同様、一年で片付けをして部室へ戻った。
部室に戻ると、先輩たちはすでに退室しており、ムワッとした熱気と汗の臭いだけが充満していた。
狭い部室に、男たちがひしめき合っている。
「うわ、すげー汗……」
俺がシャツを脱ぎ、タオルで身体を拭こうとした時だった。
ドンッ。
目の前に、巨大な壁が現れた。
192センチのカイが、俺と他の部員の間に立ちふさがるようにしてロッカーに手をついている。
「……カイ? 邪魔なんだけど」
「少し端で着替えろ。向こうは混んでる」
カイは低い声でそう言うと、俺を部屋の隅――壁とロッカー、そしてカイの身体で作られた死角に閉じ込めた。
「別にどこでもいいじゃん」
「ダメだ」
カイの視線が、俺の汗で濡れた鎖骨や、細い腰回りをじっと舐めるように動く。
「……お前のその無防備な格好、他の奴に見せたくない」
「は? 何言ってんの」
俺が聞き返すと、カイは「なんでもない」と誤魔化し、俺の脱いだシャツを奪い取った。
「ほら、早く着ろ。風邪引くぞ」
周りからは、俺がカイの陰に隠れて何をしているか全く見えないだろう。
カイはそれをいいことに、着替えを手伝うふりをして、俺の背中の汗を自分のタオルで丁寧に――いや、執拗に拭き取った。
「……んっ、くすぐったいって」
「大人しくしてろ。アカシは肌が白いから、赤くなって目立つな」
満足げに呟くカイの独占欲に、俺は「世話焼きだなあ」としか思わず、されるがままになっていた。
丁寧にボディシートまで使って汗を拭き取り、制服に着替える。
カイは俺の着替えが終わった後に、ようやく自分の着替えを始めた。
俺の世話ばっか焼かずに自分の支度をすればいいのに……。
「俺もカイの着替え手伝うよ。ボディシート頂戴」
「俺は大丈夫だって。すぐ終わるから待ってて」
いつもの優しい、人たらしの目をしていた。
さっきまではどこか鋭く、熱い目だった気がしたのだが、錯覚だろうか?
ウェアを全部脱ぎ、下着だけになったカイの体は、フィジーク選手と見間違うようなかっこよさがあった。
顔もよくて、スタイルもいい。バレーも上手くて、人当たりも良い。まさに完璧な主人公のような奴だ。
そんな彼に、さっきの仕返しをしたくなった。
「冷た! おい、びっくりするじゃん!」
「さっきの仕返し。俺が背中拭くから、カイは他のところ拭いちゃいなよ」
俺は後ろから冷たいボディシートを押し当て、カイの広い背中を拭った。
カイはゴツいが、体脂肪は低く引き締まっている。
俺が拭う背中もゴツゴツと筋肉の溝が隆起していて、男の俺でも惚れ惚れするような肉体美だ。
いかんせん背中が広くて、ボディシートを3枚消費してやっと全体を拭き終えた。
「……サンキュ」
俺の方を振り返り、お礼を言うカイ。
その声が、少し掠れていることに俺は気づかなかった。
そして、彼の視線が俺の手元――自分の背中を這っていた指先――に釘付けになっていることにも。
ふと視線を落とすと、カイのボクサーパンツの一点が、不自然にパンっと張っていた。
テントのように盛り上がったそこは、明らかに「戦闘態勢」に入っている。
(……え? なんで?)
ただ背中を拭いただけだ。
それなのに、どうしてこんな反応をしているんだ?
俺が固まっていると、カイは慌ててタオルで腰元を隠し、気まずそうに、けれど熱っぽい瞳で俺を見た。
「……刺激が、強すぎたみたいだ」
「は……?」
「アカシの手、気持ちよかったから」
カイはそう言い残し、逃げるようにロッカーの方へ向き直った。
その耳が真っ赤に染まっているのを、俺は呆然と見送ることしかできなかった。
ただの朝練終わりの更衣室。
けれど、俺たちの間には確実に、今までとは違う、歪で危険な空気が流れ始めていた。
それでも、俺の周囲の人口密度は相変わらず高いままだ。
駅から学校へ向かうまでの10分間。
4人で並んで歩いていると、不意にソウが口を開いた。
「朝の電車、マジで混んでたなー。
……なぁダイチ、お前なんでアカシの腰あんなにガッチリ掴んでたんだよ」
ソウの言葉に、俺の心臓がドキリと跳ねた。
あの時、お尻に押し付けられていた硬い感触と、熱い掌の記憶が蘇る。
「……あーしないと、アカシが他の奴に潰されんだろ」
「へぇ? 潰されないためのクッション扱いかよ」
「……うるせぇ」
ダイチは無愛想に答えるが、その視線が一瞬だけ俺の腰元を這ったのを、感じた。
俺たちは学校までの通学路を歩く。
俺の正面にカイ、左前にソウ、そして左隣にダイチ。
174センチの俺も決して小さくはないはずだが、190センチ越えの巨獣3人に囲まれると、
まるで捕らえられた小動物のような気分になる。
すれ違う生徒たちが、俺たち(というより、この威圧的な集団)を見ては道を空けていくのが分かった。
「アカシ、今日の昼どうする? 学食?」
カイが俺の顔を覗き込むようにして聞いてきた。
爽やかな笑顔だが、その瞳は逃げ道を塞ぐように俺を捉えている。
「うん、そのつもりだけど……みんなも?」
「当たり前だろ。席取っとくから、ちゃんと来いよ」
「……分かった」
世話焼きなカイは、当然のように俺のスケジュールを管理したがる。
俺は流されるままに頷くしかなかった。
校門をくぐり、部室棟の前で足が止まる。
「んじゃ、俺らはこっちだから。また昼な」
ソウが俺の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
「痛いって、ソウ!」
「髪柔らかいなー。……いい匂いするし」
ソウはニヤリと笑い、俺の首筋に鼻先を寄せてから、柔道場の方向へ歩き出した。
「……アカシ、後で」
ダイチも短くそう言うと、俺の尻――さっき電車で散々押し付けられていたあたり――をポンと叩き、レスリング部の部室へと消えていった。
残されたのは、俺とカイの二人だけ。
「俺らも行こうぜ」
「うん」
バレー部の部室は、体育館の脇にある。
まだ他の部員は来ていないようで、鍵を開けて中に入ると、しんとした空気が漂っていた。
独特のエアーサロンパスと、埃っぽい匂い。密室の静寂。
「一年は俺らが一番乗りか」
カイが慣れた手つきで自分のロッカーを開ける。
俺のロッカーはカイの対面にある。
お互いに着替えを始め、制服のボタンを外し始めた。
「……ふぅ」
俺はシャツを脱ぎ、スラックスを下ろす。
下着一枚になると、さすがに朝の空気は肌寒い。
俺は急いで練習着のTシャツを被ろうと両手を袖に通した――その時だ。
「アカシ、ちょっと待った」
背後からカイの声がして、肘までしか入っていないTシャツごと後ろから左腕を掴まれた。
後ろから拘束されたような体勢になり、俺は振り返ることができない。
「え? 何?」
「お前、なんか尻回り……またデカくなった?」
カイの右手が、俺の腰骨から下のあたりを滑るように触れる。
大きな掌だ。俺の腰なんて、片手で掴めてしまいそうなほど。
そして何より――熱い。
「太ってないよ! 筋肉ついたんだよ、スクワット増やしたし」
「へえ……」
カイは俺の身体を値踏みするようにじっくりと眺めた。
192センチの高さから見下ろされると、蛇に睨まれたカエルのような気分になる。
俺の尻は、男にしては大きい。95センチあるヒップラインは、細身のウエストとの差で余計に目立つ。
コンプレックスでもあるそれを、カイは熱っぽい視線で追っていた。
「筋肉ねぇ。……にしては、随分と柔らかそうに見えるけど」
カイの手は、繰り返し腰から尻をなぞる。
そして、ボクサーパンツの上から、俺の尻の肉をむにゅ、と掴んだ。
「ひゃっ!? カ、カイ!?」
「うん、やっぱり柔らかい。リベロ特有の筋肉か? それとも……」
カイの指が、割れ目に食い込むような動きをする。
ただのじゃれ合いにしては、指の力が強すぎるし、触り方がねっとりとしている。
まるで、肉の質感を確かめるような、いやらしい手つき。
「や、やめろって! 先輩たちが来る前に準備しないと!」
俺が慌てて身をよじると、カイはハッとしたように手を離した。
いつもの爽やかな笑顔に戻っているが、その瞳の奥には、さっき電車の中でダイチが見せていたのと同じ、
暗く濁った色が揺らめいていた。
「わりわり。あまりに触り心地良さそうだったから」
「……カイ……、かっこいいからって、俺が女子だったら犯罪だぞ」
「あはは、ごめんって。ほら、早く着替えろよ。置いてくぞ」
カイは自分の練習着を頭から被り、あっという間に着替えを終えてしまう。
その背中は広く、筋肉の鎧をまとっているようだ。
俺は赤くなった顔を隠すようにTシャツを着込みながら、さっき尻に残った手の感触を振り払おうとした。
ただのスキンシップだ。男同士だし、部活仲間だし。
……でも、なんであんなに、捕食するような目で見ていたんだろう。
体育館に移動し、モップがけやボールの準備をする。
他の一年たちも合流し、先輩たちが集まる前に準備は終えられた。
今日の朝練は、ボールを使う時間はわずかで、大半が筋力トレーニングに費やされた。
スクワット、デッドリフト、体幹トレーニング。
バレーボールに必要な爆発的な瞬発力を養うためのメニューだが、俺にとっては地獄のような90分だった。
「はぁ、はぁ……キツい……」
「アカシ、膝が入ってる。もっと尻引いて」
カイが俺の腰をグイッと掴んでフォームを修正する。
汗ばんだウェア越しに伝わる熱。
ただの指導のはずなのに、カイが背後に立つと、その巨大な影に飲み込まれるような圧迫感がある。
「終わった奴らから、 パス回してクーリングダウン!」
ようやく終わった頃には、俺は汗だくで立っているのがやっとだった。
今日のトレーニングは特に脚トレが多かったのも原因だろう。
太ももや尻がパンプして、歩くたびに筋肉が張るのがわかる。
準備同様、一年で片付けをして部室へ戻った。
部室に戻ると、先輩たちはすでに退室しており、ムワッとした熱気と汗の臭いだけが充満していた。
狭い部室に、男たちがひしめき合っている。
「うわ、すげー汗……」
俺がシャツを脱ぎ、タオルで身体を拭こうとした時だった。
ドンッ。
目の前に、巨大な壁が現れた。
192センチのカイが、俺と他の部員の間に立ちふさがるようにしてロッカーに手をついている。
「……カイ? 邪魔なんだけど」
「少し端で着替えろ。向こうは混んでる」
カイは低い声でそう言うと、俺を部屋の隅――壁とロッカー、そしてカイの身体で作られた死角に閉じ込めた。
「別にどこでもいいじゃん」
「ダメだ」
カイの視線が、俺の汗で濡れた鎖骨や、細い腰回りをじっと舐めるように動く。
「……お前のその無防備な格好、他の奴に見せたくない」
「は? 何言ってんの」
俺が聞き返すと、カイは「なんでもない」と誤魔化し、俺の脱いだシャツを奪い取った。
「ほら、早く着ろ。風邪引くぞ」
周りからは、俺がカイの陰に隠れて何をしているか全く見えないだろう。
カイはそれをいいことに、着替えを手伝うふりをして、俺の背中の汗を自分のタオルで丁寧に――いや、執拗に拭き取った。
「……んっ、くすぐったいって」
「大人しくしてろ。アカシは肌が白いから、赤くなって目立つな」
満足げに呟くカイの独占欲に、俺は「世話焼きだなあ」としか思わず、されるがままになっていた。
丁寧にボディシートまで使って汗を拭き取り、制服に着替える。
カイは俺の着替えが終わった後に、ようやく自分の着替えを始めた。
俺の世話ばっか焼かずに自分の支度をすればいいのに……。
「俺もカイの着替え手伝うよ。ボディシート頂戴」
「俺は大丈夫だって。すぐ終わるから待ってて」
いつもの優しい、人たらしの目をしていた。
さっきまではどこか鋭く、熱い目だった気がしたのだが、錯覚だろうか?
ウェアを全部脱ぎ、下着だけになったカイの体は、フィジーク選手と見間違うようなかっこよさがあった。
顔もよくて、スタイルもいい。バレーも上手くて、人当たりも良い。まさに完璧な主人公のような奴だ。
そんな彼に、さっきの仕返しをしたくなった。
「冷た! おい、びっくりするじゃん!」
「さっきの仕返し。俺が背中拭くから、カイは他のところ拭いちゃいなよ」
俺は後ろから冷たいボディシートを押し当て、カイの広い背中を拭った。
カイはゴツいが、体脂肪は低く引き締まっている。
俺が拭う背中もゴツゴツと筋肉の溝が隆起していて、男の俺でも惚れ惚れするような肉体美だ。
いかんせん背中が広くて、ボディシートを3枚消費してやっと全体を拭き終えた。
「……サンキュ」
俺の方を振り返り、お礼を言うカイ。
その声が、少し掠れていることに俺は気づかなかった。
そして、彼の視線が俺の手元――自分の背中を這っていた指先――に釘付けになっていることにも。
ふと視線を落とすと、カイのボクサーパンツの一点が、不自然にパンっと張っていた。
テントのように盛り上がったそこは、明らかに「戦闘態勢」に入っている。
(……え? なんで?)
ただ背中を拭いただけだ。
それなのに、どうしてこんな反応をしているんだ?
俺が固まっていると、カイは慌ててタオルで腰元を隠し、気まずそうに、けれど熱っぽい瞳で俺を見た。
「……刺激が、強すぎたみたいだ」
「は……?」
「アカシの手、気持ちよかったから」
カイはそう言い残し、逃げるようにロッカーの方へ向き直った。
その耳が真っ赤に染まっているのを、俺は呆然と見送ることしかできなかった。
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