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提案–ガルフside–
しおりを挟む「なぁ…もしも、やり直せるとしたら…どうする?」
真剣な眼差しで彼女を見つめる。
「…やり直せるって…何言ってるの?」
意味が分からないと言いたげな彼女を真剣な目で見つめたまま続ける。
「俺は魔導師だ。それも、この国で三本の指に入るくらい優秀な。」
指を3本立てながら彼女にそう言うと、彼女は怪訝そうな顔をしたままコクリと頷いた。
「俺はお前に興味が湧いた。だから、俺の力をお前の為に使ってやる。」
そこから俺は、時空魔法の説明をして彼女に過去に戻る提案をした。彼女は終始困惑していたが、俺の話を最後まで真剣に聞き、数十分地面を見つめたまま考え込んだ後に「あの…」と俺の方を見てきた。
「1ついいかしら?この話は私にとってすごくおいしい話よ。でも、貴方には何の得があるのかしら?今の私は、貴方にあげられるものなんか何も持ってないわ…。」
この提案の対価について少し眉を下げて不安そうな顔をした彼女を見てフッと鼻を鳴らす。
「別に…何にもいらねぇよ。さっきも言っただろうお前に興味が湧いたんだって。」
「興味が湧いたって…」
何か言いたそうな顔をしたが、その先は言わず彼女は黙って、また考え込んでしまった。
彼女は俺のことなんて覚えていないから、急に馬車に現れて話を聞いただけで、こんな提案をしてくる俺が不思議でしょうがないのだろう。俺だって、他の奴だったらこんな事してやろうだなんて思いもしなかっただろう。ガルフのこの行動は全て彼女だからなのだ。
(俺は10年以上前からお前に興味があんだよ。)
それにこの提案はガルフにも意味があるものだった。ガルフの想い人である彼女は、国外追放を受けてもなお殿下に未練があるのだ。こんなに僅かな時間の中でも、それは痛いほどに伝わってきた。彼女のことは好きだ。彼女を自分のものにしたい。でもそこに、彼女の気持ちがないと意味がないのだ。そして、その肝心な彼女の気持ちは全て殿下にある。国外追放をされてもなお、一度も殿下を責めるそぶりを見せず自分の行いを責め、時折殿下を想い苦しい表情を見せ、ボソリと小さい声で殿下への想いを呟く彼女を見れば、彼女が誰を慕っているのかなど色恋沙汰に疎いガルフにもすぐに分かった。
(そんなの、勝ち目ないだろ…。)
だからせめて、俺から彼女が笑顔でいられる未来をプレゼントしよう。
(俺は…お前に笑顔をもらったから…)
君が幸せになる為のチャンスを俺が君に捧げたい。
君が一生俺に振り向いてくれなくたっていいから。
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