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プロローグ
元辺境伯オーギュスト2
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切り札の一つである<ブラッドソウル>を使用して防戦を強いられるようでは、やはり勇者の仲間相手に真っ向勝負を仕掛けるべきではなかったのかもしれない。
だが、こいつの――オーギュストの顔を、勇者たちが魔王討伐の代償に踏みにじってきたモノを顧みないその表情を見て。
俺の血が、魂が、この手でオーギュストの首を掻き斬れと叫んでいたのだ。
「くそ……ッ!」
左手のマジックダガーが拳撃に負けて弾き飛ばされる。
漆黒の刃が雨の中をくるくると舞い、路地の壁に突き刺さった。
即座に魔法陣を再度起動し、マジックダガーを握る。
「遅せえッ!」
マジックダガーの守りを失った左の胸に、オーギュストのガントレットが放たれた。
まるでトラックにぶち当たったような重い一撃。
あばら骨が砕ける音と共に俺は大きく後ろへと吹き飛ばされた。
「トラック……か、転生する時を思い出すな……げほっ!」
俺は血の塊を吐き出しながら立ち上がった。
ただでさえ<ブラッドソウル>で血を消費し続けているので、目は霞み貧血で今にも倒れそうだ。
だが、倒れるわけにはいかないし、まだ逃げるわけにもいかない。
勇者の仲間が、満身創痍の敵が逃げ出すのを見て、後を追ってとどめを刺そうと考えるだろうか。
答えは否だ。ちょいと痛い目を見せれば十分と言わんばかりにきっと見逃すだろう。
それでは駄目なのだ。
「おい! オーギュストの爺さん! 元辺境伯! 拳聖! お前、魔王を倒した時のことは覚えているか!?」
俺は力の限りに叫んだ。
そうでもしないと意識がとこかへ飛んでいきそうだったからだ。
「当たり前だろ。エイワ―ズの奴が魔王に剣を突き立てた瞬間、全てが報われたと思ったぜ。なんだ? サインでも欲しいのか?」
「だったら、バッカスの塔で出会った冒険者のことは!? お前はそれも報われたとでもいうつもりか!?」
余裕ぶっていたオーギュストの顔が虚を突かれたようにひるんだ様子に変わった。
「そうか……お前、あの時の。……仲間がいたのか」
ゆっくりとこちらの方へと歩み寄り、俺の胸ぐらをつかみ上げて、オーギュストは大きく息を吸った。
「仕方がなかったんだよ! だったらどうすりゃ良かったんだ!? 聖剣がなきゃ魔王は倒せなかった! こっちは魔王に領民殺されてるんだぞ!?」
その時、小雨だった雨が一瞬勢いを増し、バケツをひっくり返したような勢いで水滴が地面を叩いた。
それで、ようやく霞んだ目にも見えた。
オーギュストの後方で、魔力のゆがみによって雨粒が弾かれ、拳くらいの大きさのまるで球体のような何もない空間が出来ていた。
「イリス! こいつの後ろの<クラック>を起動しろ! 俺諸共で構わないから!」
俺は闇に隠れてこの光景を見ているであろうイリスに叫んだ。
そしてその声がイリスに届き、オーギュストの後方の空間から突如として白銀の歪な刃が現出する。
それは音の速さで伸びてオーギュストの背を貫き、俺の腹部にまで達し、俺たち二人の内臓をかき乱した。
「なっ……ぐ……!」
オーギュストは血を吐きながら俺から手を離した。
だが、俺たちの距離はあまりに近すぎた。
これではオーギュストは俺を殴ることはできない。
密着状態から放てるスキルがあったところで、彼の目にはいくつか、不自然に水滴を弾く拳大の球体が映っている筈だ。
この場所には既にイリスの<クラック>が複数個設置してある。
なんにせよ、対刃防御に乏しい装備のオーギュストにとっては積み状態だ。
右手に魔法陣を起動した。
オーギュストがどこか諦めたような、悟ったような目をしてこちらを見ていた。
その目に怒りがこみ上げる。
なぜこんなに怒りを覚えるのか、自分でも分からない。
泣いて慈悲を乞うてほしかったのだろうか、それとも俺に殺意を抱いてほしかったのだろうか。
そのどちらも初めから期待してはいなかった筈だ。
彼らは勇者パーティー。善性の人々と称される者だからだ。
分からないまま、それでも怒りのまま、右手にマジックダガーを生成し、オーギュストの喉笛を切り裂いた。
だが、こいつの――オーギュストの顔を、勇者たちが魔王討伐の代償に踏みにじってきたモノを顧みないその表情を見て。
俺の血が、魂が、この手でオーギュストの首を掻き斬れと叫んでいたのだ。
「くそ……ッ!」
左手のマジックダガーが拳撃に負けて弾き飛ばされる。
漆黒の刃が雨の中をくるくると舞い、路地の壁に突き刺さった。
即座に魔法陣を再度起動し、マジックダガーを握る。
「遅せえッ!」
マジックダガーの守りを失った左の胸に、オーギュストのガントレットが放たれた。
まるでトラックにぶち当たったような重い一撃。
あばら骨が砕ける音と共に俺は大きく後ろへと吹き飛ばされた。
「トラック……か、転生する時を思い出すな……げほっ!」
俺は血の塊を吐き出しながら立ち上がった。
ただでさえ<ブラッドソウル>で血を消費し続けているので、目は霞み貧血で今にも倒れそうだ。
だが、倒れるわけにはいかないし、まだ逃げるわけにもいかない。
勇者の仲間が、満身創痍の敵が逃げ出すのを見て、後を追ってとどめを刺そうと考えるだろうか。
答えは否だ。ちょいと痛い目を見せれば十分と言わんばかりにきっと見逃すだろう。
それでは駄目なのだ。
「おい! オーギュストの爺さん! 元辺境伯! 拳聖! お前、魔王を倒した時のことは覚えているか!?」
俺は力の限りに叫んだ。
そうでもしないと意識がとこかへ飛んでいきそうだったからだ。
「当たり前だろ。エイワ―ズの奴が魔王に剣を突き立てた瞬間、全てが報われたと思ったぜ。なんだ? サインでも欲しいのか?」
「だったら、バッカスの塔で出会った冒険者のことは!? お前はそれも報われたとでもいうつもりか!?」
余裕ぶっていたオーギュストの顔が虚を突かれたようにひるんだ様子に変わった。
「そうか……お前、あの時の。……仲間がいたのか」
ゆっくりとこちらの方へと歩み寄り、俺の胸ぐらをつかみ上げて、オーギュストは大きく息を吸った。
「仕方がなかったんだよ! だったらどうすりゃ良かったんだ!? 聖剣がなきゃ魔王は倒せなかった! こっちは魔王に領民殺されてるんだぞ!?」
その時、小雨だった雨が一瞬勢いを増し、バケツをひっくり返したような勢いで水滴が地面を叩いた。
それで、ようやく霞んだ目にも見えた。
オーギュストの後方で、魔力のゆがみによって雨粒が弾かれ、拳くらいの大きさのまるで球体のような何もない空間が出来ていた。
「イリス! こいつの後ろの<クラック>を起動しろ! 俺諸共で構わないから!」
俺は闇に隠れてこの光景を見ているであろうイリスに叫んだ。
そしてその声がイリスに届き、オーギュストの後方の空間から突如として白銀の歪な刃が現出する。
それは音の速さで伸びてオーギュストの背を貫き、俺の腹部にまで達し、俺たち二人の内臓をかき乱した。
「なっ……ぐ……!」
オーギュストは血を吐きながら俺から手を離した。
だが、俺たちの距離はあまりに近すぎた。
これではオーギュストは俺を殴ることはできない。
密着状態から放てるスキルがあったところで、彼の目にはいくつか、不自然に水滴を弾く拳大の球体が映っている筈だ。
この場所には既にイリスの<クラック>が複数個設置してある。
なんにせよ、対刃防御に乏しい装備のオーギュストにとっては積み状態だ。
右手に魔法陣を起動した。
オーギュストがどこか諦めたような、悟ったような目をしてこちらを見ていた。
その目に怒りがこみ上げる。
なぜこんなに怒りを覚えるのか、自分でも分からない。
泣いて慈悲を乞うてほしかったのだろうか、それとも俺に殺意を抱いてほしかったのだろうか。
そのどちらも初めから期待してはいなかった筈だ。
彼らは勇者パーティー。善性の人々と称される者だからだ。
分からないまま、それでも怒りのまま、右手にマジックダガーを生成し、オーギュストの喉笛を切り裂いた。
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