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復讐者×破壊の神×転生チート
エルフ実業家ヒースロー3
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魔法陣から即座に黒いマジックダガーを生成し、背をつかんでいたゴーレムの腕をすっぱりと断ち切った。
石板と羊皮紙の散らばる受付台の上に、ゴーレムのルビーの塊のような腕が音を立てて乗った。
「服に穴が開いたんだけど、弁償はどの羊皮紙に記入して申請すればいいんだ?」
もちろんゴーレムは答えない。俺の冗談がへたくそだからだろうか。
俺は台の上のゴーレムの腕を手に取り、放り捨てた。
人間の腕とそう大差ない重さだ。けれど体は俺よりもずいぶんと大きいので、総重量で言ったら200キログラムほどだろうか。
鍛えた大人の男2人から2.5人分ほどの力があると考えていいだろう。
自動でこれだけの質量の土を動かせる土魔術師なんて今まで出会ったことがない。
これでヒースローは主力メンバーではないのだから、勇者パーティーの層の厚さを改めて感じる。
「でもまあ、だから何だって話なんだけど」
それはそれですごい事なのだが、やることが中途半端と言うか、帰したいのか帰したくないのかが分からない。
勇者パーティーの連中をこんな貧弱なゴーレムで止められるはずも無いし、意図は何なのだろうか。
俺は残った腕でパンチを仕掛けてきたゴーレムの拳を左手で受け止め、捩じり切ってまた投げ捨てた。
そして頭の部分を雑に十回ほどダガーで切りつけると、赤いゴーレムは形を失い、受付台越しでも見えるくらい大量の土に変わった。
ゴーレムはたいていの場合頭部に印があり、それを傷つけると元の土に戻る。
今回もそれと同じだった。
「おしまいおしまい、と。そっちは終わってないのか?」
入り口側を見ると、二体の赤いゴーレムが突っ立ったままだった。
「どうも向こうから動いてくる気配がないんですの。近づいたら攻撃してくる種類だと思いますが、イリスさんがもう既に」
ルーミアが困ったように縦ロールを揺らして言った。
「ああ、近くに対象物がいると自動迎撃って感じか」
思い返せば、受付嬢も予め決められた言葉に対して反応しているだけだったような気もする。
随分ファンタジーなマニュアル接客もあったものだ。
そしてそうなるとルーミアが困っている様子なのも分かる。
近づく必要なんてないからだ。
「で、イリス、<クラック>の設置は?」
「カナタさんが遊んでいる間に二つ済ませました」
俺が聞くと、イリスはすました顔で答えた。
「オッケー。両方起動してくれ。今度こそ帰るぞ」
「はい」
イリスが誰かに当てつけるように、意味もなく指を鳴らして<クラック>を起動させると、二体の赤いゴーレムのすぐ目の前の何もない空間から、それぞれぞれ一つずつ、二つの鈍色の巨大なハンマーが現れる。
そのハンマーはゴーレムが反応する間もなく音の速さで半円を描き、二体同時に頭部から粉々にした。
俺たちはその間を通り、入り口からヒースロー商会を出て行った。
その際に全裸に近い獣人族とすれ違い、彼女が大量の土くれに驚いた気配があったが、俺たちの知ったことではなかった。
エルマーで根城にしている宿への道すがら、俺はルーミアに赤いゴーレムについて聞いてみることにした。
どうしてもあのちぐはぐさが気になったのだ。
「何で赤いゴーレムが入り口にも二体あったんだと思う? とっとと帰れって意味なんだろう」
「どうなんでしょうか……普通に壊さなきゃ帰れませんわよね。あんな所で立ち塞がれては」
「確認しときたいんだけど、例えば、勇者パーティーで赤いゴーレムが突破できない奴はいるか? そうだな、普通に友人に会いに来たって感じで、何の武装もしてないって仮定で」
「何の武装もしていない、と言う仮定が難しいですわね。あり得ませんので。護身用に……ミスリル以上の硬度のナイフくらいあれば、突破できない人はいませんわ」
「護身用のナイフか。そりゃそれくらい持ってなきゃ表歩けないよな……」
勇者パーティーには裏稼業では結構な額の賞金がかかっている。
オーギュストの死体もそちらに渡せば一財産になっただろうけれど、生憎ともう金に執着はなかった。
それはともかくとして、やはり入り口のゴーレムに大した害意がないことが分かった。
ただただ邪魔なだけ。なら何で邪魔をする?
軽い足止め? 何の意味があるんだ。
「ところであの元ゴーレムの土くれ、放っておいたけど破壊したら術者は感知できるんだよな? それでヒースローが帰ってきたりとかは……」
「破壊したら術者のヒースローも感知できますが、多分本人が居なくても今頃別のゴーレムが起動して営業再開してると思いますわ。自動感知、自動生成くらいは以前から出来ていましたから。喋る石人形には少し驚きましたけれど」
「ちなみに、ヒースローの感知って誰と交戦したかとかまで分かるのか?」
「戦闘情報までは伝わりませんし、カナタたちのことはバレてないと思いますわよ」
「別に今回に関してはバレてもいいんだけどさ」
ごく当たり前に障害物をどけただけだ。
<クラック>を使ったのはサービス過剰だったが、別にそれが知られても問題はない。
その後も頭を悩ませながら宿への帰り路を歩いた。
石板と羊皮紙の散らばる受付台の上に、ゴーレムのルビーの塊のような腕が音を立てて乗った。
「服に穴が開いたんだけど、弁償はどの羊皮紙に記入して申請すればいいんだ?」
もちろんゴーレムは答えない。俺の冗談がへたくそだからだろうか。
俺は台の上のゴーレムの腕を手に取り、放り捨てた。
人間の腕とそう大差ない重さだ。けれど体は俺よりもずいぶんと大きいので、総重量で言ったら200キログラムほどだろうか。
鍛えた大人の男2人から2.5人分ほどの力があると考えていいだろう。
自動でこれだけの質量の土を動かせる土魔術師なんて今まで出会ったことがない。
これでヒースローは主力メンバーではないのだから、勇者パーティーの層の厚さを改めて感じる。
「でもまあ、だから何だって話なんだけど」
それはそれですごい事なのだが、やることが中途半端と言うか、帰したいのか帰したくないのかが分からない。
勇者パーティーの連中をこんな貧弱なゴーレムで止められるはずも無いし、意図は何なのだろうか。
俺は残った腕でパンチを仕掛けてきたゴーレムの拳を左手で受け止め、捩じり切ってまた投げ捨てた。
そして頭の部分を雑に十回ほどダガーで切りつけると、赤いゴーレムは形を失い、受付台越しでも見えるくらい大量の土に変わった。
ゴーレムはたいていの場合頭部に印があり、それを傷つけると元の土に戻る。
今回もそれと同じだった。
「おしまいおしまい、と。そっちは終わってないのか?」
入り口側を見ると、二体の赤いゴーレムが突っ立ったままだった。
「どうも向こうから動いてくる気配がないんですの。近づいたら攻撃してくる種類だと思いますが、イリスさんがもう既に」
ルーミアが困ったように縦ロールを揺らして言った。
「ああ、近くに対象物がいると自動迎撃って感じか」
思い返せば、受付嬢も予め決められた言葉に対して反応しているだけだったような気もする。
随分ファンタジーなマニュアル接客もあったものだ。
そしてそうなるとルーミアが困っている様子なのも分かる。
近づく必要なんてないからだ。
「で、イリス、<クラック>の設置は?」
「カナタさんが遊んでいる間に二つ済ませました」
俺が聞くと、イリスはすました顔で答えた。
「オッケー。両方起動してくれ。今度こそ帰るぞ」
「はい」
イリスが誰かに当てつけるように、意味もなく指を鳴らして<クラック>を起動させると、二体の赤いゴーレムのすぐ目の前の何もない空間から、それぞれぞれ一つずつ、二つの鈍色の巨大なハンマーが現れる。
そのハンマーはゴーレムが反応する間もなく音の速さで半円を描き、二体同時に頭部から粉々にした。
俺たちはその間を通り、入り口からヒースロー商会を出て行った。
その際に全裸に近い獣人族とすれ違い、彼女が大量の土くれに驚いた気配があったが、俺たちの知ったことではなかった。
エルマーで根城にしている宿への道すがら、俺はルーミアに赤いゴーレムについて聞いてみることにした。
どうしてもあのちぐはぐさが気になったのだ。
「何で赤いゴーレムが入り口にも二体あったんだと思う? とっとと帰れって意味なんだろう」
「どうなんでしょうか……普通に壊さなきゃ帰れませんわよね。あんな所で立ち塞がれては」
「確認しときたいんだけど、例えば、勇者パーティーで赤いゴーレムが突破できない奴はいるか? そうだな、普通に友人に会いに来たって感じで、何の武装もしてないって仮定で」
「何の武装もしていない、と言う仮定が難しいですわね。あり得ませんので。護身用に……ミスリル以上の硬度のナイフくらいあれば、突破できない人はいませんわ」
「護身用のナイフか。そりゃそれくらい持ってなきゃ表歩けないよな……」
勇者パーティーには裏稼業では結構な額の賞金がかかっている。
オーギュストの死体もそちらに渡せば一財産になっただろうけれど、生憎ともう金に執着はなかった。
それはともかくとして、やはり入り口のゴーレムに大した害意がないことが分かった。
ただただ邪魔なだけ。なら何で邪魔をする?
軽い足止め? 何の意味があるんだ。
「ところであの元ゴーレムの土くれ、放っておいたけど破壊したら術者は感知できるんだよな? それでヒースローが帰ってきたりとかは……」
「破壊したら術者のヒースローも感知できますが、多分本人が居なくても今頃別のゴーレムが起動して営業再開してると思いますわ。自動感知、自動生成くらいは以前から出来ていましたから。喋る石人形には少し驚きましたけれど」
「ちなみに、ヒースローの感知って誰と交戦したかとかまで分かるのか?」
「戦闘情報までは伝わりませんし、カナタたちのことはバレてないと思いますわよ」
「別に今回に関してはバレてもいいんだけどさ」
ごく当たり前に障害物をどけただけだ。
<クラック>を使ったのはサービス過剰だったが、別にそれが知られても問題はない。
その後も頭を悩ませながら宿への帰り路を歩いた。
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