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第一章
9
ターニャ女医がヴァルファス公爵家に通いだして3日が経った昼頃、アイリスが目を覚ました。
「…………」
「御気分はどうでしょうか?」
「…………」
「痛い所などありますか?」
「…………」
ターニャ女医が問診するもアイリスは何も答えなかった。
それどころか身動き1つしなかった。
アイリスは下手に他者からの質問に答えるなと厳命されており、それを守らず話せば体罰があった。
少し心が動いたところでアイリスは体に教え込まれた苦痛や恐怖は拭えない。
それ故にアイリスは身動き1つ出来ないのだ。
ターニャ女医はこれでは何も分からないと判断して、カイルたちを呼ぶことにした。
「今、カイル様たちをお呼びしますね」
「…………カ、イル、様」
「ええ、カイル様です」
「……カイル、様」
ターニャ女医はそばにいた侍女にカイルたちを呼ぶように頼んだ。
カイルの名前を出したとたんアイリスが反応した。
それはアイリスにとってカイルが特別な存在だからだ。
勿論、人族であるアイリスには『番』の本能はない。
だが、アイリスにとってカイルはそれ以上に意味がある存在なのだ。
自身を出すことを許してくれ、痛みではなく、温もりや優しさをくれる。
感情を出すことを許してくれ、泣いて良いと涙を、叫びを受け止めてくれる。
暫くすると焦ったようにカイルが飛び込んできた。
それを視界の隅で見ていたアイリスも弱々しいが確かにカイルを呼んだ。
「アイリスが目を覚ましたって?!」
「っ!カイル様、はい」
「っ!…………あ」
アイリスが目を覚ましたと言う知らせを聞いてカイルは本当にいの一番でやって来た。
ターニャ女医はノックもなしに思いっきり開いた扉に呆れ、あまりにも珍しいカイルの行動にその場にいた侍女たちは目を見開いていた。
カイルについていた従僕たちはカイルの行動に慌てていた。
遅れてやってきたヴァルファス公爵夫妻はそんな状況をみて首をかしげていた。
勿論、周りの事など気にも止めていないカイルはアイリスに近付いた。
アイリスが横になっているベッドの端に腰かけるとカイルはアイリスの手に優しく触れ、労るように撫でた。
「ああ、私のアイリス。目が覚めたんだね、良かった」
「……カイル、様」
「そうだよ。さあ、大丈夫、私に教えておくれ。気分は悪くないかい?」
「はい」
「それは良かった。痛いところもないかい?」
「はい」
「ふふふ、まだ起きたばかりで戸惑っているね。大丈夫、ここにはアイリスを傷付ける者などいないよ。私がそれを許さないし、みんなもする気もないよ」
「は、い」
ターニャ女医が聞いても答えなかった質問にアイリスはちゃんと答えていた。
その間もカイルは優しくアイリスに微笑み、触れていた。
それを目の当たりにしたターニャ女医は感心していた。
人族にはあまり影響のないとされる『番』だが、獣人族であるカイルのまっすぐな愛情がしっかりと届き、アイリスにとってもカイルが特別な存在になっていると言うことに。
「…………」
「御気分はどうでしょうか?」
「…………」
「痛い所などありますか?」
「…………」
ターニャ女医が問診するもアイリスは何も答えなかった。
それどころか身動き1つしなかった。
アイリスは下手に他者からの質問に答えるなと厳命されており、それを守らず話せば体罰があった。
少し心が動いたところでアイリスは体に教え込まれた苦痛や恐怖は拭えない。
それ故にアイリスは身動き1つ出来ないのだ。
ターニャ女医はこれでは何も分からないと判断して、カイルたちを呼ぶことにした。
「今、カイル様たちをお呼びしますね」
「…………カ、イル、様」
「ええ、カイル様です」
「……カイル、様」
ターニャ女医はそばにいた侍女にカイルたちを呼ぶように頼んだ。
カイルの名前を出したとたんアイリスが反応した。
それはアイリスにとってカイルが特別な存在だからだ。
勿論、人族であるアイリスには『番』の本能はない。
だが、アイリスにとってカイルはそれ以上に意味がある存在なのだ。
自身を出すことを許してくれ、痛みではなく、温もりや優しさをくれる。
感情を出すことを許してくれ、泣いて良いと涙を、叫びを受け止めてくれる。
暫くすると焦ったようにカイルが飛び込んできた。
それを視界の隅で見ていたアイリスも弱々しいが確かにカイルを呼んだ。
「アイリスが目を覚ましたって?!」
「っ!カイル様、はい」
「っ!…………あ」
アイリスが目を覚ましたと言う知らせを聞いてカイルは本当にいの一番でやって来た。
ターニャ女医はノックもなしに思いっきり開いた扉に呆れ、あまりにも珍しいカイルの行動にその場にいた侍女たちは目を見開いていた。
カイルについていた従僕たちはカイルの行動に慌てていた。
遅れてやってきたヴァルファス公爵夫妻はそんな状況をみて首をかしげていた。
勿論、周りの事など気にも止めていないカイルはアイリスに近付いた。
アイリスが横になっているベッドの端に腰かけるとカイルはアイリスの手に優しく触れ、労るように撫でた。
「ああ、私のアイリス。目が覚めたんだね、良かった」
「……カイル、様」
「そうだよ。さあ、大丈夫、私に教えておくれ。気分は悪くないかい?」
「はい」
「それは良かった。痛いところもないかい?」
「はい」
「ふふふ、まだ起きたばかりで戸惑っているね。大丈夫、ここにはアイリスを傷付ける者などいないよ。私がそれを許さないし、みんなもする気もないよ」
「は、い」
ターニャ女医が聞いても答えなかった質問にアイリスはちゃんと答えていた。
その間もカイルは優しくアイリスに微笑み、触れていた。
それを目の当たりにしたターニャ女医は感心していた。
人族にはあまり影響のないとされる『番』だが、獣人族であるカイルのまっすぐな愛情がしっかりと届き、アイリスにとってもカイルが特別な存在になっていると言うことに。
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