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第一章
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しおりを挟む深夜に差し掛かった辺りだった。
なにか胸騒ぎがして眠れずにいた俺、カイト・ランドールが異変に気づいたのは。
扉が壊されるような音が聞こえた後に両親と使用人たちが慌てて自室に駆け込んできた。
「カイト!」
「父上、母上。どうされたのですか?」
「襲撃だ!」
「は?!」
「犯人は私の弟だったザイルだ。お前はアナとアルを連れて逃げなさい!」
「しかし!」
「ザイルは武術に優れていた。すぐに私たちは捕まるだろう。だが、私の後継者であるカイトに幼いこの子たちをみすみす殺されたくはない」
「お願い、カイト!この子たちを守って」
「父上、母上。分かりました」
「頼んだぞ、お前たちもカイトと向かいなさい!この子たちのことを頼む」
「旦那様、奥様」
「分かりました」
使用人や侍女に護衛たちは涙ぐみながら頷いた。
両親は少しでも足止めするつもりらしく、争う音のする方に向かった。
幼い弟妹は使用人や侍女に抱き抱えられていた。
俺はあることを思い、逃げる道とは別の方に向かおうとした。
「カイト様?!」
「お前たちはアナスタシアとアルフェルトを連れて先に林の中に隠れていろ!」
「どちらに行かれるつもりです」
「必要な物をとり、必要な事をしに行くだけだ」
「ですが!」
「大丈夫だ!すぐに向かう!いけ!!」
「「「「「はい!」」」」」
俺は護衛たちに囲まれてアナとアルが逃げていったのを横目で確認した。
そして、俺が向かったのは我が家の権利書や財産に帳簿などが全て保管されている魔法部屋だ。
そこはその部屋全てが強力な防御魔法で守られており、最悪暴漢ぐらいならこの部屋に逃げ込めば良い。
だが、今回は元々身内だった者の犯行だ。
逃げ込んでも開けられる可能性が高いから両親は逃げろと言ったのだ。
しかし、俺はそれだけではダメなことを分かっていた。
この中の権利書などを書き換えられてしまったら完全に乗っ取られる。
二度と俺やアナにアルはこの生家に帰れなくなる。
なので、俺は唯一の開け口である『ロック』と言う魔法がかけられた場所の『暗証』を変更することにした。
そして、その『暗証解除権限』を俺一人に限定した。
これで何があっても強奪や破棄は出来ない。
物がなければ再発行も出来ない。
何故なら叔父は勘当され、貴族籍を抜かれているのだ。
それに関してはすでに調べつくしている。
そんな相手が再発行を望んでも認められない。
俺が居なくてはなにも出来ないのだ。
それから俺は『アイテムボックス』にありったけの食材と飲み物に毛布などの防寒類も詰め込んだ。
そして、厩舎に繋がれている愛馬たちの一頭に乗り、他の愛馬たちを連れて林に向かった。
俺が屋敷を出る瞬間に目にしたのは狂喜に嗤う男になぶり殺されたと思われる両親と両親や俺たちを守ろうと奮闘して殺された護衛たちの姿だった。
怒りに目の前を紅く染めながらも俺は両親の願いであり、大切な弟妹を守るために向かった。
あんなやつに俺の大切なものはこれ以上奪わせない!
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