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第一章
19、城下町で
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アリシアたちはルドワードの仕事が終わり次第に街へ向かうことになった。
今回の護衛はスカルディアとアルシードの二人だ。付き添いでエレナとリンが行くことになった。リンは少し気が進まなかったがこれも弟たちのためと割り切った、割り切るしかなかった。それでもアルシードの言葉がリンに力をくれた。最終的にはアリシアが助かるので話ないかと思うようにもなっていた。
「ふふ、楽しみです」
「そうですね。私もここに来てから城の中しか知らないので楽しみです」
「リン、おすすめの場所とかありますか?」
「おすすめですか?雑貨屋とか女の子に人気ですよ」
「雑貨ですか?楽しそうです!」
アリシアは純粋に今日という日を楽しみにしている。リンはズキンッと痛む心を気のせいと誤魔化していた。
いつもと違うリンの姿にアリシアは心配になった。
「リン、大丈夫ですか?」
「え?アリシア様?」
「何だが苦しそうです、体調が悪いのなら無理せず休んでください」
「アリシア様」
リンはアリシアの何気ない優しさに涙が出そうになっている。
純粋で優しい主を自らの主人の陰謀で傷つけることになる。それを自身も手助けしなければいけないことに騙すことに心が痛んでいる。弟たちもいつの間にかアリシアを気に入っていた。だから余計に心が痛んだ。
リンはアリシアを抱きしめながら心の中で何度も謝った。
「ありがとうございます、アリシア様。ですが大丈夫です」
「本当ですか?」
「はい、お連れしたい場所があるので」
「リンのおすすめですか?楽しみです!!」
「はい」
アリシアは楽しそうにはしゃいでいる。エレナはそれを見ながら準備を進めた。侍女たちはよくアリシアを抱きしめるのでリンが抱きしめてもいつもの光景にとられた。リンがアリシアを抱きしめる事は今までなかったが。
リンはアルシードの言葉を信じた。
(お願いします、アルシード様。アリシア様をお守りください)
アリシアたちの準備が終わるとちょうど準備が整ったルドワードたちがやってきた。
「シア、準備はできたか?」
「はい!エレナたちが準備してくださいました」
アリシアは城内でのドレスではなく、町民が着るような服装になっている。
紺色のワンピースに薄手の白いレース地のショールを羽織り、白くつばの広い帽子をかぶっている。靴もヒールの低めの物になっている。
侍女たちも似たり寄ったりな服装になっている。
男性陣も半袖の上着に長めのズボンをはいている。靴も歩きやすそうなものになっている。アルシードとスカルディアは護衛と言うこともあり携帯用の短刀を用意している。それを五分袖の上衣で隠している。
ルドワードは長袖の上衣を腰に巻き付けている。その姿は王族と言うより若者のようだ。
アリシアは普段と違うルドワードに頬を染めている。ルドワードもアリシアの普段と違う姿を可愛らしく見ていた。
「ああ、シア。その姿も可愛いぞ」
「ルド様、あ、ありがとうございます。ルド様も素敵です」
「そうか、ありがとう」
互いを褒め合い、アリシアに関しては照れている。
「リンも普段と違っていいな」
「ありがとうございます、アルシード様。ですが私に薄桃色は似合わないかと」
「いや、よく似合っている」
「あ、ありがとうございます」
「お、おう」
アルシードはリンの普段の侍女姿と違う普段着に好感を持った。リンはアルシードに褒められたことが嬉しかった。それでも自分には似合わないと思っていた。それをそのまま言うとアルシードに似合っているとほめられ、恥ずかしくも嬉しそうに頬を染めた。
リンのそんな姿を見てアルシードも自分の言葉に、リンの反応に少し頬を染めた。だがその尻尾は機嫌よさそうに振られていた。
ここで置いてけぼりになっている人物が二人いる。エレナとスカルディアだ。
アリシアとルドワードまでは予想範囲内だったのだがまさかのリンとアルシードの反応に呆れた。
エレナが失礼と思いながら唯一話が出来そうなスカルディアに小声で声を掛けた。
「失礼します、スカルディア様」
「なんだ?」
「リンとアルシード様って」
「知らん。アルシード、アルとは昔からの付き合いだがあいつが誰かと付き合っているなんて聞いたことも、見たことも、本人からも言われたこともない」
「私たちも恋愛話はしますが、リンがって言うのは聞いたことがありません」
「だが、このままほっておくといつまでも出発できないな」
「はい」
「仕方ないなぁ」
このままではいつまでたっても出発できないと考え、スカルディアが物申した。こういう時はやはりルドワードの弟であるスカルディアが言うのが適任となる。
さすがにリンやアルシードならエレナでも物申せたが主人たちの逢瀬を阻むわけにはいかない。
「兄貴、そろそろ行こうぜ。シア姉にとっては初めての街だろ」
「ああ、そうだな。見せたいものはたくさんあるからな」
「はい!楽しみです」
ルドワードはエレナのほっとした顔を見て苦笑した。アリシアのことになると周りが見えにくくなることをルドワードは自覚し始めていた。
アルシードもスカルディアに呆れた視線を向けられて肩をすくませた。アルシードも悪いとは思っている。
リンはいまだに恥ずかしそうにしていた。それを見たエレナとアリシアは微笑ましく見ていた。
***
お忍びという名目の為歩いて城下に向かった。だが門番たちには普通に見送りされるし、街の人たちにもほぼバレている。
「おや、竜王様。今日は花嫁様とお出かけですか?」
「ああ、一応お忍びだ」
「はは、だからその格好なのですね。どうです、うちのクリーナ食べてみてくださいな」
クリーナとは果実の一つで薄皮の中に少々小ぶりの種と甘酸っぱい実がなっている。これは実だけを食べる。その実は煮詰めてジャムのようにしてもよし、生で食べてもよしの果実だ。これは日本での白桃と似た果実だ。
もちろんアリシアやエレナは初めて見るもので興味深そうにそれを見ていた。それを見たルドワードは苦笑してそれを購入することにした。
「ああ、一つ頂こう」
「ああ、お金はいいですよ。よかったらまた城で仕入れてくだされば」
「商売上手だな~、また仕入れさせてもらうよ」
「まいど」
ルドワードが通るとこのように挨拶される。物をもらうこともしばしばだ。これを見たスカルディアの方が呆れていた。
「兄貴、思ったより街に出てるんだな」
「っ!……シアが来る前までは、だぞ」
「ふ~ん、そんなら俺と一緒にいる時間もとれたんじゃないのか?」
「あ~~~~。すまん、一緒に来ればい良かったな」
「本当だぜ……まぁ、兄貴が手が空かない時はシア姉と一緒に来ればいいし。な、シア姉」
「スカル様とお出かけですか?楽しそうです!」
「ス、スカル!シア~?!」
スカルディアは今までの思いを言ってしまったので我慢することをあまりしないようになった。それも義姉となるアリシアが側にいてくれることが分かっていることとアリシアの無邪気な反応がルドワードに効くことが分かっているからだ。
それを苦笑しながらエレナやアルシードは見ていた。
リンも微笑ましく見ているがやはり気持ちはすぐれなかった。それでも実の兄弟たちを守るために心を鬼にして任務を遂行させることを考えた。
その様子をアルシードは見ていた。弟たちのことがまだ解決していないのだと思い、心配になり小声で声を掛けた。
「どうした?」
「はい?何がですか?」
「いや、なんだか様子がおかしい様な気がしたんだ。まだ弟たちのこと解決してないのか?」
「あ、はい。まだですが、アルシード様も言うように大丈夫だと思えるようになったのです」
「ならいいが、何かあったら言ってくれよ」
「はい」
リンはアルシードに気にかけられて嬉しかった。それと同時に心苦しかった。本当のことを言ってしまったら嫌われることが分かっている。それでも弟たちを守る為にもアリシアを連れ出さなくてはいけないのだ。気づかれるわけにはいかなかった。
アリシアはリンとアルシードを見ていた。
リンを気に掛けるアルシードの表情も、気にかけられてうれしそうなリンもアリシアにとっては微笑ましいものだ。
アリシアにとって恋愛とは訪れないものだった。一生を幽閉塔で過ごすか、父親の決めた相手のもとに嫁ぐかだった。それでもアリシアを嫌っている父親がまともな縁談を持ってくるはずがないことぐらいわかっていた。
だから、アリシアにとって今はとても幸せなのだ。自分に優しくしてくれる人たちがたくさん側にいてくれることが、その内の一人であるリンが幸せそうにしている。微笑ましくないはずがない。
アリシアはリンの事が気になっていた。何となく自分に似ているような感じがしていたからだ。そんな相手が幸せになろうとしているのだ。嬉しくないはずがない。ましてやその相手であるアルシードもリンに気があるようなのだ。
「リン、何だが嬉しそうですね」
「はい、もしかしたらリンは副隊長さんのことを」
「ああ、やっとリンのそういう話を聞けそうですね」
「はい」
アリシアとエレナが小声でそんな風に盛り上がっているのをルドワードとスカルディアは苦笑してみていた。
「女性陣はそういう話が好きだね」
「はい、楽しいです。それに幸せな気分になります」
「そうなのか?」
「幸せな話をしていると幸せな気分になります。ねぇ、エレナ」
「はい、それも身近ならなおさらです」
楽しそうなアリシアとエレナを見てからスカルディアはアルシードたちの方を見た。確かに幸せそうな感じがあるがどこかぎこちないというか嫌な感じも同時にあった。
その嫌な感じの正体が分からずスカルディアは眉をひそめた。自分の信じるアルシードやアリシアの信じるリンに限ってそんなことはないと頭を振って考えを捨てた。
街を歩いていると微笑ましそうに話しかけてくる町民が多かった。それはこの街がアリシアを受け入れようとしている証だ。
アリシアは初めて見るものばかりで目を輝かせていた。
そうしていると最初に話をしていた雑貨屋の前まで来た。
「アリシア様、あそこがこの町一番の雑貨屋です」
「あれが雑貨屋ですか?」
「はい、様々な小物や髪飾りなどを売っています」
「ルド様」
「ああ、行ってみよう」
アリシアの行きたそうな瞳を見て却下を出せる人物はここにはいなかった。そうして女性で賑わっている雑貨屋に全員で入っていった。
女性陣は楽しそうに品物を見ているが一緒に入った男性陣は他の付き添いで入っていた男性陣同様に苦笑して彼女たちが満足して戻ってくるのを待つことになった。
リンは品物を物色するような素振りをしながらアリシアだけを連れ出す機会をうかがった。
「それも可愛いですね」
「え?……は、はい。そうですね」
リンが偶然持っていた小箱を見てアリシアは声を掛けた。リンは再度自分の手の中にあるものを見て確かに可愛いと思った。
白地に薄桃色の小さな花が飾られている。縁取りは銀色でそこまで華美ではなく、本当に可愛らしいものだ。
「リンはそういうのが好きなのですか?」
「はい、ですが私には似合いませんので」
「そうですか?似合っていると思いますよ?」
「ありがとうございます、アリシア様」
アリシアは首を傾げた。リンだって年頃の女の子だ。
このドラグーン国民は長命で、外見年齢と実際の年齢は違うが年頃と言える期間は長い。
だからリンも年頃と言える年齢に該当する。
そんな年頃のリンだって、いや年頃だからこそ可愛いものに惹かれることだってある。だが、自分の生い立ちや身分からそういうものを欲することを許されないでいる。
そんなリンの様子を見ている存在がいた。アルシードだ。アリシアはそんな姿を見て苦笑した。本当はリンに贈り物がしたかったがアルシードからも見えるその小箱はアルシードに譲ることにアリシアはした。
リンは次に耳飾りを手に取った。さっき同様華美ではなく素朴な可愛らしさのある銀細工でハートをかたどっている耳飾りだ。
「なんですか?」
「耳飾りです、耳に挿すタイプですが」
「リンは耳に挿しても大丈夫なのですか?その、タブーとかあるのですか?」
「特に規制はありません」
アリシアが手を差し出すとリンは苦笑しながらそれをアリシアの手に渡した。リンからそれを受け取りアリシアはリンの耳にあてがって見ていた。
アリシアにはとても似合っているように思った。それは片耳用なようで一つしかなかった。
「可愛いです」
「そうですね」
「リンに良く似合っています」
「そ、そんな事ありませんよ」
「似合っていますよ?とても可愛くて綺麗です」
アリシアが当たり前のようにくれる言葉にリンは頬を朱に染めた。女子としてそのように言われることは嬉しいことだ。他人が認めてくれる、リンにはなかった経験だ。
いや、最初にリン自身を認めてくれたのはアルシードだった。リンがそんな風に思い、男性陣の方を見るとアルシードと目が合い、さらに頬を染めて顔をそむけた。
アリシアは今回の外出でリンが珍しく感情を出していることに微笑ましく思った。
アリシアだけではないが周りから見てリンは必要以上に感情を押さえているように見える。だからこんな風に感情が見えるのは微笑ましかった。
アルシードの方をアリシアが見るとスカルディアにからかわれているのか頬を染めてスカルディアと話をしていた。それを苦笑しながらルドワードが見ている。その光景がアリシアには何よりも幸せなように思った。
アリシアはリンが自分の頬の熱を下げようとして自分を見ていないのを確認してこっそりとあるものを購入した。それを見ていたのはエレナの方だった。
「アリシア様?何を買われたのですか?」
「リンへの贈り物です。いつもよくしてくれていますので」
「それはいいですね」
「こっちはエレナたちのです。帰ったらみんなに配りますね」
「はい、楽しみにしています」
アリシアは帰ったらリリアたちにも配れるように人数分の贈り物を用意していた。リンのがやっと見つかって別購入になってしまったがそれをひとまとめにした。
「あれ、リンに渡さないのですか?」
「皆さんと一緒に渡します。今渡しても驚きが半減します」
「それもそうですね」
「ふふ、リンともう少しお話をしてきます」
「はい」
エレナはアリシアがリンのもとに向かうのを見て邪魔をしてはいけないと思い、自分のものを見ることにした。のちにこの判断を後悔することになるとは思わずに。
アリシアがリンのもとに戻ると回復したリンがいた。
「リン、大丈夫ですか?」
「お見苦しい所をお見せしました」
「そんなことないですよ、リンが感情を見せてくれるのは初めてでしたので嬉しいです」
「アリシア様」
リンは苦笑した。そして周りにメンバーがおらず、リンとアリシアが視界に入っていないのを確認してリンはアリシアを連れ出すことにした。
「アリシア様、お連れしたいところがあります」
「リンのおすすめですか?でしたら皆さんを」
「いえ、アリシア様だけをお連れしたいのです」
「私だけ?」
「はい」
アリシアは考えた。初めての外出でルドワードたちも一緒にいるのに単独行動をしてもいいのかと。だが今日は朝から落ち着かいない様子のリンの頼みだ、断るのもはばかれた。
それにアリシアはリンに聞いてみたいことがあった。アルシードとのことだ。もしかしたら二人きりなら話してくれるかもしれないとも思った。それ以上にリンの懇願するような表情にアリシアはなぜか一緒に行かなければいけない感じがした。
アリシアは心の中でルドワードたちに謝りながらリンの手を取った。
「リンが私に頼み事したのは初めてですね、行きましょう」
「ありがとうございます(そして申し訳ありません)」
リンはアリシアの手を握り、店を後にした。
リンは人通りの少ない場所を選びながら進んでいった。カイが待っているであろう約束の場所に向かって。
アリシアは次第に胸騒ぎがしていた。人通りの少ない場所は嫌なことを思い出すからだ。それでもリンのためだと思い、勇気を振り絞って一緒に歩いた。
二人が歩いて行くと完全に人気のない、路地裏の行き止まりにたどりついた。これ以上行き場のないそこには何もなかった。アリシアは不思議そうにリンを見た。
「リン?」
「……申し訳ありません、アリシア様」
リンの瞳には一筋の雫が通った。それを最後にアリシアの意識は闇に沈んだ。
それもそのはず、カイがアリシアを気絶させたのだ。
「ごめんね、花嫁さん」
「カイ……ルイは?」
「ちゃんと城の方にいるよ、あの子は花嫁さんを気に入っているから辛いよね」
「そうね」
「姉さんもごめんね」
「いいの、仕方ないわ。カイもつらいでしょ、アリシア様のこと気に入ってるでしょ」
「……」
カイは何も言わなかった。それは無言の肯定だ。この三人兄弟はそれぞれにアリシアとの思い出がある。自分たちを当たり前のように受け入れてくれるアリシアが三人とも好きなのだ。
カイもリンも気絶したアリシアを見た。あどけない顔をしている。実年齢より幼い感じだ。
見ている二人とも実行犯とは思えないほど辛そうにしている。
「申し訳ありません、アリシア様」
「ごめんね、花嫁さん」
二人はアリシアに謝った。リンは恨まれることも覚悟していた。だがその瞳から流れる雫、涙を止める術はなかった。
今回の護衛はスカルディアとアルシードの二人だ。付き添いでエレナとリンが行くことになった。リンは少し気が進まなかったがこれも弟たちのためと割り切った、割り切るしかなかった。それでもアルシードの言葉がリンに力をくれた。最終的にはアリシアが助かるので話ないかと思うようにもなっていた。
「ふふ、楽しみです」
「そうですね。私もここに来てから城の中しか知らないので楽しみです」
「リン、おすすめの場所とかありますか?」
「おすすめですか?雑貨屋とか女の子に人気ですよ」
「雑貨ですか?楽しそうです!」
アリシアは純粋に今日という日を楽しみにしている。リンはズキンッと痛む心を気のせいと誤魔化していた。
いつもと違うリンの姿にアリシアは心配になった。
「リン、大丈夫ですか?」
「え?アリシア様?」
「何だが苦しそうです、体調が悪いのなら無理せず休んでください」
「アリシア様」
リンはアリシアの何気ない優しさに涙が出そうになっている。
純粋で優しい主を自らの主人の陰謀で傷つけることになる。それを自身も手助けしなければいけないことに騙すことに心が痛んでいる。弟たちもいつの間にかアリシアを気に入っていた。だから余計に心が痛んだ。
リンはアリシアを抱きしめながら心の中で何度も謝った。
「ありがとうございます、アリシア様。ですが大丈夫です」
「本当ですか?」
「はい、お連れしたい場所があるので」
「リンのおすすめですか?楽しみです!!」
「はい」
アリシアは楽しそうにはしゃいでいる。エレナはそれを見ながら準備を進めた。侍女たちはよくアリシアを抱きしめるのでリンが抱きしめてもいつもの光景にとられた。リンがアリシアを抱きしめる事は今までなかったが。
リンはアルシードの言葉を信じた。
(お願いします、アルシード様。アリシア様をお守りください)
アリシアたちの準備が終わるとちょうど準備が整ったルドワードたちがやってきた。
「シア、準備はできたか?」
「はい!エレナたちが準備してくださいました」
アリシアは城内でのドレスではなく、町民が着るような服装になっている。
紺色のワンピースに薄手の白いレース地のショールを羽織り、白くつばの広い帽子をかぶっている。靴もヒールの低めの物になっている。
侍女たちも似たり寄ったりな服装になっている。
男性陣も半袖の上着に長めのズボンをはいている。靴も歩きやすそうなものになっている。アルシードとスカルディアは護衛と言うこともあり携帯用の短刀を用意している。それを五分袖の上衣で隠している。
ルドワードは長袖の上衣を腰に巻き付けている。その姿は王族と言うより若者のようだ。
アリシアは普段と違うルドワードに頬を染めている。ルドワードもアリシアの普段と違う姿を可愛らしく見ていた。
「ああ、シア。その姿も可愛いぞ」
「ルド様、あ、ありがとうございます。ルド様も素敵です」
「そうか、ありがとう」
互いを褒め合い、アリシアに関しては照れている。
「リンも普段と違っていいな」
「ありがとうございます、アルシード様。ですが私に薄桃色は似合わないかと」
「いや、よく似合っている」
「あ、ありがとうございます」
「お、おう」
アルシードはリンの普段の侍女姿と違う普段着に好感を持った。リンはアルシードに褒められたことが嬉しかった。それでも自分には似合わないと思っていた。それをそのまま言うとアルシードに似合っているとほめられ、恥ずかしくも嬉しそうに頬を染めた。
リンのそんな姿を見てアルシードも自分の言葉に、リンの反応に少し頬を染めた。だがその尻尾は機嫌よさそうに振られていた。
ここで置いてけぼりになっている人物が二人いる。エレナとスカルディアだ。
アリシアとルドワードまでは予想範囲内だったのだがまさかのリンとアルシードの反応に呆れた。
エレナが失礼と思いながら唯一話が出来そうなスカルディアに小声で声を掛けた。
「失礼します、スカルディア様」
「なんだ?」
「リンとアルシード様って」
「知らん。アルシード、アルとは昔からの付き合いだがあいつが誰かと付き合っているなんて聞いたことも、見たことも、本人からも言われたこともない」
「私たちも恋愛話はしますが、リンがって言うのは聞いたことがありません」
「だが、このままほっておくといつまでも出発できないな」
「はい」
「仕方ないなぁ」
このままではいつまでたっても出発できないと考え、スカルディアが物申した。こういう時はやはりルドワードの弟であるスカルディアが言うのが適任となる。
さすがにリンやアルシードならエレナでも物申せたが主人たちの逢瀬を阻むわけにはいかない。
「兄貴、そろそろ行こうぜ。シア姉にとっては初めての街だろ」
「ああ、そうだな。見せたいものはたくさんあるからな」
「はい!楽しみです」
ルドワードはエレナのほっとした顔を見て苦笑した。アリシアのことになると周りが見えにくくなることをルドワードは自覚し始めていた。
アルシードもスカルディアに呆れた視線を向けられて肩をすくませた。アルシードも悪いとは思っている。
リンはいまだに恥ずかしそうにしていた。それを見たエレナとアリシアは微笑ましく見ていた。
***
お忍びという名目の為歩いて城下に向かった。だが門番たちには普通に見送りされるし、街の人たちにもほぼバレている。
「おや、竜王様。今日は花嫁様とお出かけですか?」
「ああ、一応お忍びだ」
「はは、だからその格好なのですね。どうです、うちのクリーナ食べてみてくださいな」
クリーナとは果実の一つで薄皮の中に少々小ぶりの種と甘酸っぱい実がなっている。これは実だけを食べる。その実は煮詰めてジャムのようにしてもよし、生で食べてもよしの果実だ。これは日本での白桃と似た果実だ。
もちろんアリシアやエレナは初めて見るもので興味深そうにそれを見ていた。それを見たルドワードは苦笑してそれを購入することにした。
「ああ、一つ頂こう」
「ああ、お金はいいですよ。よかったらまた城で仕入れてくだされば」
「商売上手だな~、また仕入れさせてもらうよ」
「まいど」
ルドワードが通るとこのように挨拶される。物をもらうこともしばしばだ。これを見たスカルディアの方が呆れていた。
「兄貴、思ったより街に出てるんだな」
「っ!……シアが来る前までは、だぞ」
「ふ~ん、そんなら俺と一緒にいる時間もとれたんじゃないのか?」
「あ~~~~。すまん、一緒に来ればい良かったな」
「本当だぜ……まぁ、兄貴が手が空かない時はシア姉と一緒に来ればいいし。な、シア姉」
「スカル様とお出かけですか?楽しそうです!」
「ス、スカル!シア~?!」
スカルディアは今までの思いを言ってしまったので我慢することをあまりしないようになった。それも義姉となるアリシアが側にいてくれることが分かっていることとアリシアの無邪気な反応がルドワードに効くことが分かっているからだ。
それを苦笑しながらエレナやアルシードは見ていた。
リンも微笑ましく見ているがやはり気持ちはすぐれなかった。それでも実の兄弟たちを守るために心を鬼にして任務を遂行させることを考えた。
その様子をアルシードは見ていた。弟たちのことがまだ解決していないのだと思い、心配になり小声で声を掛けた。
「どうした?」
「はい?何がですか?」
「いや、なんだか様子がおかしい様な気がしたんだ。まだ弟たちのこと解決してないのか?」
「あ、はい。まだですが、アルシード様も言うように大丈夫だと思えるようになったのです」
「ならいいが、何かあったら言ってくれよ」
「はい」
リンはアルシードに気にかけられて嬉しかった。それと同時に心苦しかった。本当のことを言ってしまったら嫌われることが分かっている。それでも弟たちを守る為にもアリシアを連れ出さなくてはいけないのだ。気づかれるわけにはいかなかった。
アリシアはリンとアルシードを見ていた。
リンを気に掛けるアルシードの表情も、気にかけられてうれしそうなリンもアリシアにとっては微笑ましいものだ。
アリシアにとって恋愛とは訪れないものだった。一生を幽閉塔で過ごすか、父親の決めた相手のもとに嫁ぐかだった。それでもアリシアを嫌っている父親がまともな縁談を持ってくるはずがないことぐらいわかっていた。
だから、アリシアにとって今はとても幸せなのだ。自分に優しくしてくれる人たちがたくさん側にいてくれることが、その内の一人であるリンが幸せそうにしている。微笑ましくないはずがない。
アリシアはリンの事が気になっていた。何となく自分に似ているような感じがしていたからだ。そんな相手が幸せになろうとしているのだ。嬉しくないはずがない。ましてやその相手であるアルシードもリンに気があるようなのだ。
「リン、何だが嬉しそうですね」
「はい、もしかしたらリンは副隊長さんのことを」
「ああ、やっとリンのそういう話を聞けそうですね」
「はい」
アリシアとエレナが小声でそんな風に盛り上がっているのをルドワードとスカルディアは苦笑してみていた。
「女性陣はそういう話が好きだね」
「はい、楽しいです。それに幸せな気分になります」
「そうなのか?」
「幸せな話をしていると幸せな気分になります。ねぇ、エレナ」
「はい、それも身近ならなおさらです」
楽しそうなアリシアとエレナを見てからスカルディアはアルシードたちの方を見た。確かに幸せそうな感じがあるがどこかぎこちないというか嫌な感じも同時にあった。
その嫌な感じの正体が分からずスカルディアは眉をひそめた。自分の信じるアルシードやアリシアの信じるリンに限ってそんなことはないと頭を振って考えを捨てた。
街を歩いていると微笑ましそうに話しかけてくる町民が多かった。それはこの街がアリシアを受け入れようとしている証だ。
アリシアは初めて見るものばかりで目を輝かせていた。
そうしていると最初に話をしていた雑貨屋の前まで来た。
「アリシア様、あそこがこの町一番の雑貨屋です」
「あれが雑貨屋ですか?」
「はい、様々な小物や髪飾りなどを売っています」
「ルド様」
「ああ、行ってみよう」
アリシアの行きたそうな瞳を見て却下を出せる人物はここにはいなかった。そうして女性で賑わっている雑貨屋に全員で入っていった。
女性陣は楽しそうに品物を見ているが一緒に入った男性陣は他の付き添いで入っていた男性陣同様に苦笑して彼女たちが満足して戻ってくるのを待つことになった。
リンは品物を物色するような素振りをしながらアリシアだけを連れ出す機会をうかがった。
「それも可愛いですね」
「え?……は、はい。そうですね」
リンが偶然持っていた小箱を見てアリシアは声を掛けた。リンは再度自分の手の中にあるものを見て確かに可愛いと思った。
白地に薄桃色の小さな花が飾られている。縁取りは銀色でそこまで華美ではなく、本当に可愛らしいものだ。
「リンはそういうのが好きなのですか?」
「はい、ですが私には似合いませんので」
「そうですか?似合っていると思いますよ?」
「ありがとうございます、アリシア様」
アリシアは首を傾げた。リンだって年頃の女の子だ。
このドラグーン国民は長命で、外見年齢と実際の年齢は違うが年頃と言える期間は長い。
だからリンも年頃と言える年齢に該当する。
そんな年頃のリンだって、いや年頃だからこそ可愛いものに惹かれることだってある。だが、自分の生い立ちや身分からそういうものを欲することを許されないでいる。
そんなリンの様子を見ている存在がいた。アルシードだ。アリシアはそんな姿を見て苦笑した。本当はリンに贈り物がしたかったがアルシードからも見えるその小箱はアルシードに譲ることにアリシアはした。
リンは次に耳飾りを手に取った。さっき同様華美ではなく素朴な可愛らしさのある銀細工でハートをかたどっている耳飾りだ。
「なんですか?」
「耳飾りです、耳に挿すタイプですが」
「リンは耳に挿しても大丈夫なのですか?その、タブーとかあるのですか?」
「特に規制はありません」
アリシアが手を差し出すとリンは苦笑しながらそれをアリシアの手に渡した。リンからそれを受け取りアリシアはリンの耳にあてがって見ていた。
アリシアにはとても似合っているように思った。それは片耳用なようで一つしかなかった。
「可愛いです」
「そうですね」
「リンに良く似合っています」
「そ、そんな事ありませんよ」
「似合っていますよ?とても可愛くて綺麗です」
アリシアが当たり前のようにくれる言葉にリンは頬を朱に染めた。女子としてそのように言われることは嬉しいことだ。他人が認めてくれる、リンにはなかった経験だ。
いや、最初にリン自身を認めてくれたのはアルシードだった。リンがそんな風に思い、男性陣の方を見るとアルシードと目が合い、さらに頬を染めて顔をそむけた。
アリシアは今回の外出でリンが珍しく感情を出していることに微笑ましく思った。
アリシアだけではないが周りから見てリンは必要以上に感情を押さえているように見える。だからこんな風に感情が見えるのは微笑ましかった。
アルシードの方をアリシアが見るとスカルディアにからかわれているのか頬を染めてスカルディアと話をしていた。それを苦笑しながらルドワードが見ている。その光景がアリシアには何よりも幸せなように思った。
アリシアはリンが自分の頬の熱を下げようとして自分を見ていないのを確認してこっそりとあるものを購入した。それを見ていたのはエレナの方だった。
「アリシア様?何を買われたのですか?」
「リンへの贈り物です。いつもよくしてくれていますので」
「それはいいですね」
「こっちはエレナたちのです。帰ったらみんなに配りますね」
「はい、楽しみにしています」
アリシアは帰ったらリリアたちにも配れるように人数分の贈り物を用意していた。リンのがやっと見つかって別購入になってしまったがそれをひとまとめにした。
「あれ、リンに渡さないのですか?」
「皆さんと一緒に渡します。今渡しても驚きが半減します」
「それもそうですね」
「ふふ、リンともう少しお話をしてきます」
「はい」
エレナはアリシアがリンのもとに向かうのを見て邪魔をしてはいけないと思い、自分のものを見ることにした。のちにこの判断を後悔することになるとは思わずに。
アリシアがリンのもとに戻ると回復したリンがいた。
「リン、大丈夫ですか?」
「お見苦しい所をお見せしました」
「そんなことないですよ、リンが感情を見せてくれるのは初めてでしたので嬉しいです」
「アリシア様」
リンは苦笑した。そして周りにメンバーがおらず、リンとアリシアが視界に入っていないのを確認してリンはアリシアを連れ出すことにした。
「アリシア様、お連れしたいところがあります」
「リンのおすすめですか?でしたら皆さんを」
「いえ、アリシア様だけをお連れしたいのです」
「私だけ?」
「はい」
アリシアは考えた。初めての外出でルドワードたちも一緒にいるのに単独行動をしてもいいのかと。だが今日は朝から落ち着かいない様子のリンの頼みだ、断るのもはばかれた。
それにアリシアはリンに聞いてみたいことがあった。アルシードとのことだ。もしかしたら二人きりなら話してくれるかもしれないとも思った。それ以上にリンの懇願するような表情にアリシアはなぜか一緒に行かなければいけない感じがした。
アリシアは心の中でルドワードたちに謝りながらリンの手を取った。
「リンが私に頼み事したのは初めてですね、行きましょう」
「ありがとうございます(そして申し訳ありません)」
リンはアリシアの手を握り、店を後にした。
リンは人通りの少ない場所を選びながら進んでいった。カイが待っているであろう約束の場所に向かって。
アリシアは次第に胸騒ぎがしていた。人通りの少ない場所は嫌なことを思い出すからだ。それでもリンのためだと思い、勇気を振り絞って一緒に歩いた。
二人が歩いて行くと完全に人気のない、路地裏の行き止まりにたどりついた。これ以上行き場のないそこには何もなかった。アリシアは不思議そうにリンを見た。
「リン?」
「……申し訳ありません、アリシア様」
リンの瞳には一筋の雫が通った。それを最後にアリシアの意識は闇に沈んだ。
それもそのはず、カイがアリシアを気絶させたのだ。
「ごめんね、花嫁さん」
「カイ……ルイは?」
「ちゃんと城の方にいるよ、あの子は花嫁さんを気に入っているから辛いよね」
「そうね」
「姉さんもごめんね」
「いいの、仕方ないわ。カイもつらいでしょ、アリシア様のこと気に入ってるでしょ」
「……」
カイは何も言わなかった。それは無言の肯定だ。この三人兄弟はそれぞれにアリシアとの思い出がある。自分たちを当たり前のように受け入れてくれるアリシアが三人とも好きなのだ。
カイもリンも気絶したアリシアを見た。あどけない顔をしている。実年齢より幼い感じだ。
見ている二人とも実行犯とは思えないほど辛そうにしている。
「申し訳ありません、アリシア様」
「ごめんね、花嫁さん」
二人はアリシアに謝った。リンは恨まれることも覚悟していた。だがその瞳から流れる雫、涙を止める術はなかった。
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