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第一章
23、互いの告白
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アリシアが目を覚まし、最初に見たのはルドワードの横顔だった。自分の現状が把握できなかった。むしろルドワードの横顔に見惚れていた。
アリシアが身動きしたことでルドワードは気付き、アリシアの方を見た。
「シア」
「ルド様」
アリシアがしっかりと目を覚ましたことを認識したルドワードはアリシアをしっかりと強く、しかし優しく抱きしめ直した。
アリシアはルドワードの強さ、優しさを感じながら嬉しかった。初めて愛した相手が無事でこうして体温を感じれることが。そしてアリシアも抱きしめ返した。それによりルドワードもアリシアが生きて傍にいることを喜んだ。
「なんであんな無茶を?」
「すみません、体が勝手に動きまして」
「リンたちを守るのでいっぱいだったのか?」
「いいえ。正直に言いますとまだ余力はありましたが防御系を張るという考えに至りませんでした」
アリシアがそう言うとルドワードはアリシアの顔が見えるように少し離してから苦笑した。
「助けてもらってなんだが無茶はしないでくれ。心臓に悪い」
「はい、すみません」
「いや、だが、ありがとう。シアのおかげで助かった」
「ルド様」
ルドワードは優しく微笑みながら礼を言った。アリシアは頬を染めてはにかんだ。ルドワードはアリシアをベッドにゆっくりと寝かした。アリシアは小さくあくびをした。ルドワードはそれを見てしまい、微笑んだ。アリシアは恥ずかしそうに布団を上げて口元を隠した。
「眠そうだな、夕食は食べれそうか?」
「すみません」
「そうか。ならゆっくり休むといい」
「はい」
ルドワードはアリシアの頭を撫でてから腰を上げた。アリシアが寝れるように部屋を出ようとしたが呼び止められた。
「……ルド様」
「どうした?」
「お話ししたいことが」
「……眠たいんじゃないのか?明日でも」
「話したいのです」
ルドワードはアリシアの様子から再度ベッドに向かった。アリシアの望むようにしようと考え、ベッド際に腰を掛けた。
アリシアはルドワードが話を聞いてくれようとしているが嬉しく微笑んだ。だが、すぐにその顔から笑みは消えた。ルドワードはそれをいぶかしげに見た。
「どうかしたのか?」
「ルド様……早くにお話ししようと思っていたのですが」
「ん?」
「私が来た当初不思議ではありませんでしたか?……私の言動が」
「少しな。だが、シルから事情がある事は聞いていた。シア自身が話すのを持てとも言われていたしな」
「はい、宰相様からも自身で言うように言われていました」
アリシアは自国のシリウスやルークが気にかけてくれているのを再度感じて嬉しくなった。微笑んでいるアリシアを見てルドワードもつられて微笑んだ。
「ふふ、それでですね。私は昔、盗賊に連れ去られたことがあるのです」
「連れ去られた?盗賊に?」
「はい。その際に背中を怪我しまして」
「大丈夫なのか?!」
「傷はもうふさがっています。何年も前の話ですので……ただ、痕が残ってしまって」
「シア」
アリシアは自傷気味に微笑んだ。ルドワードにはそれが痛々しかった。
そんなルドワードを見てアリシアは内心嬉しかった。アリシアはを気遣ってくれるルドワードが。
「ルド様、本当は早くにお話しておくべきでした。すみません」
「そんなことはない。辛いだろうに話してくれてありがとう」
「ルド様」
ルドワードはアリシアの頭を撫でた。その温もりや優しさ、気遣ってくれる言動に涙が出た。何年も溜め込んだものがあふれ出すように。
急に泣き出したアリシアにルドワードは慌てながら優しく抱きしめた。
「どうした?シア」
「わ、私の家族は…穢れてると…隔離されて……家族じゃないと」
「シア」
アリシアはルドワードに縋りついて嗚咽を漏らしながら話を続けた。そんなアリシアの背中をルドワードは撫ぜた。服の上とはいえ、夜着のため生地が薄い。そのためそこにある傷も感触がルドワードには伝わった。
傷に触れたため一瞬、アリシアはびくついたがルドワードが何でもないことのように撫でるため安心した。そのため涙がさらにあふれ出た。
「家を出てから…皆さんが、優しいのです。でも…怖くて……私は、なにも、知らないから」
「ああ」
「知らないから……傷つけて、いないか…分からなくて」
「大丈夫だ、シアは間違っていない」
ルドワードが肯定してくれることでアリシアは安心した。今まで心の奥では自分の行動が正解なのか分からず悩んでいた。
愛する人に認めてもらうことがこんなにも嬉しいことだとアリシアは初めて知った。
「ルド様、ルド様が…好きなんです」
「シア」
「好きだから、怖いのです。ルド様に嫌われるのが…傷の事を話して、何も知らないから、嫌になる事をしてしまっていないか」
「大丈夫だ、シア。俺もシアのことが、アリシアのことが好きだ。愛している」
「ルド様……私も、愛しています」
アリシアからの愛の言葉にルドワードは嬉しく、愛おしくなり自分の思いも告げた。アリシアもルドワードの愛の言葉に嬉しくなり、泣き止み、微笑んだ。
アリシアのその笑顔にルドワードは心当たりがあった。アリシアの告白は自分の昔の出来事を思い出す。忘れる事が出来ない、気になっていた出来事のことだ。
ルドワードはアリシアが落ち着いたのを見計らってその話を始めた。
「……アリシア、俺は一度この国を出たことがある」
「国を?」
「ささやかな好奇心だった。いや、何かに呼ばれたような感じもあったが」
「はい」
アリシアにはルドワードが何を話し始めたのかよくわからなかった。だが真剣な顔をして話すその話をしっかりと聞かないといけない気がした。
「そこで一人の少女がひどい目に合っているのを見つけた」
「……」
「相手は見た感じ盗賊だった。俺はそいつらを排除して彼女を林の出口まで送った……そこに迎えが来ていたから」
「っ!…ル、ルド様!それって……」
「その子も背中に大きな傷を負っていた」
「っっ!!」
アリシアはここまで来て初めてその話の内容が分かった。それもそのはず、その話、出来事は二人が互いを知る前に偶然にも起きた出会いだからだ。
ルドワードはアリシアを見た。ただ驚いているようだ。
その少女の面影を少し残している。ルドワードは純粋の思ったを告げた。
「大きくなったんだな」
「ルド様!!」
アリシアはルドワードを強く抱きしめ直した。言葉にできない思いのたけを表すように。
「辛かったな、あの時しっかりと送ってやるべきだった。正体を知られてはいけないとはいえ」
「いいえ、ルド様が…ルド様だけでも私の潔白を知っているというのが私の救いでした」
「アリシア」
「ありがとうございます、ルド様。あの時助けてくださり、私を受け入れてくださり」
「俺こそ、めげずに生きてここに来てくれて、俺を受けれてくれて、この国を受け入れてくれて、ありがとう」
二人は見つめ合い、笑いあった。
アリシアは本当に心から嬉しくて笑った。
アリシアが身動きしたことでルドワードは気付き、アリシアの方を見た。
「シア」
「ルド様」
アリシアがしっかりと目を覚ましたことを認識したルドワードはアリシアをしっかりと強く、しかし優しく抱きしめ直した。
アリシアはルドワードの強さ、優しさを感じながら嬉しかった。初めて愛した相手が無事でこうして体温を感じれることが。そしてアリシアも抱きしめ返した。それによりルドワードもアリシアが生きて傍にいることを喜んだ。
「なんであんな無茶を?」
「すみません、体が勝手に動きまして」
「リンたちを守るのでいっぱいだったのか?」
「いいえ。正直に言いますとまだ余力はありましたが防御系を張るという考えに至りませんでした」
アリシアがそう言うとルドワードはアリシアの顔が見えるように少し離してから苦笑した。
「助けてもらってなんだが無茶はしないでくれ。心臓に悪い」
「はい、すみません」
「いや、だが、ありがとう。シアのおかげで助かった」
「ルド様」
ルドワードは優しく微笑みながら礼を言った。アリシアは頬を染めてはにかんだ。ルドワードはアリシアをベッドにゆっくりと寝かした。アリシアは小さくあくびをした。ルドワードはそれを見てしまい、微笑んだ。アリシアは恥ずかしそうに布団を上げて口元を隠した。
「眠そうだな、夕食は食べれそうか?」
「すみません」
「そうか。ならゆっくり休むといい」
「はい」
ルドワードはアリシアの頭を撫でてから腰を上げた。アリシアが寝れるように部屋を出ようとしたが呼び止められた。
「……ルド様」
「どうした?」
「お話ししたいことが」
「……眠たいんじゃないのか?明日でも」
「話したいのです」
ルドワードはアリシアの様子から再度ベッドに向かった。アリシアの望むようにしようと考え、ベッド際に腰を掛けた。
アリシアはルドワードが話を聞いてくれようとしているが嬉しく微笑んだ。だが、すぐにその顔から笑みは消えた。ルドワードはそれをいぶかしげに見た。
「どうかしたのか?」
「ルド様……早くにお話ししようと思っていたのですが」
「ん?」
「私が来た当初不思議ではありませんでしたか?……私の言動が」
「少しな。だが、シルから事情がある事は聞いていた。シア自身が話すのを持てとも言われていたしな」
「はい、宰相様からも自身で言うように言われていました」
アリシアは自国のシリウスやルークが気にかけてくれているのを再度感じて嬉しくなった。微笑んでいるアリシアを見てルドワードもつられて微笑んだ。
「ふふ、それでですね。私は昔、盗賊に連れ去られたことがあるのです」
「連れ去られた?盗賊に?」
「はい。その際に背中を怪我しまして」
「大丈夫なのか?!」
「傷はもうふさがっています。何年も前の話ですので……ただ、痕が残ってしまって」
「シア」
アリシアは自傷気味に微笑んだ。ルドワードにはそれが痛々しかった。
そんなルドワードを見てアリシアは内心嬉しかった。アリシアはを気遣ってくれるルドワードが。
「ルド様、本当は早くにお話しておくべきでした。すみません」
「そんなことはない。辛いだろうに話してくれてありがとう」
「ルド様」
ルドワードはアリシアの頭を撫でた。その温もりや優しさ、気遣ってくれる言動に涙が出た。何年も溜め込んだものがあふれ出すように。
急に泣き出したアリシアにルドワードは慌てながら優しく抱きしめた。
「どうした?シア」
「わ、私の家族は…穢れてると…隔離されて……家族じゃないと」
「シア」
アリシアはルドワードに縋りついて嗚咽を漏らしながら話を続けた。そんなアリシアの背中をルドワードは撫ぜた。服の上とはいえ、夜着のため生地が薄い。そのためそこにある傷も感触がルドワードには伝わった。
傷に触れたため一瞬、アリシアはびくついたがルドワードが何でもないことのように撫でるため安心した。そのため涙がさらにあふれ出た。
「家を出てから…皆さんが、優しいのです。でも…怖くて……私は、なにも、知らないから」
「ああ」
「知らないから……傷つけて、いないか…分からなくて」
「大丈夫だ、シアは間違っていない」
ルドワードが肯定してくれることでアリシアは安心した。今まで心の奥では自分の行動が正解なのか分からず悩んでいた。
愛する人に認めてもらうことがこんなにも嬉しいことだとアリシアは初めて知った。
「ルド様、ルド様が…好きなんです」
「シア」
「好きだから、怖いのです。ルド様に嫌われるのが…傷の事を話して、何も知らないから、嫌になる事をしてしまっていないか」
「大丈夫だ、シア。俺もシアのことが、アリシアのことが好きだ。愛している」
「ルド様……私も、愛しています」
アリシアからの愛の言葉にルドワードは嬉しく、愛おしくなり自分の思いも告げた。アリシアもルドワードの愛の言葉に嬉しくなり、泣き止み、微笑んだ。
アリシアのその笑顔にルドワードは心当たりがあった。アリシアの告白は自分の昔の出来事を思い出す。忘れる事が出来ない、気になっていた出来事のことだ。
ルドワードはアリシアが落ち着いたのを見計らってその話を始めた。
「……アリシア、俺は一度この国を出たことがある」
「国を?」
「ささやかな好奇心だった。いや、何かに呼ばれたような感じもあったが」
「はい」
アリシアにはルドワードが何を話し始めたのかよくわからなかった。だが真剣な顔をして話すその話をしっかりと聞かないといけない気がした。
「そこで一人の少女がひどい目に合っているのを見つけた」
「……」
「相手は見た感じ盗賊だった。俺はそいつらを排除して彼女を林の出口まで送った……そこに迎えが来ていたから」
「っ!…ル、ルド様!それって……」
「その子も背中に大きな傷を負っていた」
「っっ!!」
アリシアはここまで来て初めてその話の内容が分かった。それもそのはず、その話、出来事は二人が互いを知る前に偶然にも起きた出会いだからだ。
ルドワードはアリシアを見た。ただ驚いているようだ。
その少女の面影を少し残している。ルドワードは純粋の思ったを告げた。
「大きくなったんだな」
「ルド様!!」
アリシアはルドワードを強く抱きしめ直した。言葉にできない思いのたけを表すように。
「辛かったな、あの時しっかりと送ってやるべきだった。正体を知られてはいけないとはいえ」
「いいえ、ルド様が…ルド様だけでも私の潔白を知っているというのが私の救いでした」
「アリシア」
「ありがとうございます、ルド様。あの時助けてくださり、私を受け入れてくださり」
「俺こそ、めげずに生きてここに来てくれて、俺を受けれてくれて、この国を受け入れてくれて、ありがとう」
二人は見つめ合い、笑いあった。
アリシアは本当に心から嬉しくて笑った。
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