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第二章
32、リンの想い
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だいたいの計画が決まったところで全員でアリシアの部屋に戻った。
リンたちがいるのがアリシアの部屋だからだ。
アリシアは楽しそうにしている。それを見ているルドワードは微笑ましそうだがスカルディアたちはそんな二人を見て苦笑している。
アリシアにしてみれば自身の大事な存在が幸せになれるとなれば嬉しいのだろう。それが分かっているからみんな苦笑しつつも何も言わないのだ。
アリシアが戻ったことに気づいたリリアが声をかけた。
「ああ、アリシア様。おかえりなさい」
「マリアたち、何もなかったですか?」
「はい。大丈夫でした」
「ごめんなさ~い」
「っっ!!」
マリアはリンに抱き着いていった。
それを受け止めながらリンは苦笑していた。
マリアのこういうところはあんまり成長していないのだ。それに実姉のクレアは呆れていた。
一方、無意識にリリアに想いを寄せているジルフォードはリリアの笑顔にドキッときていた。それを見たバロンは苦笑し、スカルディアは首を傾げた。
なんとなく察したルドワードとジャックスは微笑ましそうだ。
「リン、リン」
「はい?どうしました?アリシア様」
「朗報ですよ」
「朗報?」
「隊長さんがリンたちの養子縁組の受け入れをして下さいました!これで副隊長さんと一緒になれますよ」
「ア、アリシア様!!」
リンは急にバラされて慌てた。
だが、周りはリンとアルシードの事を理解しているので微笑ましいだけだ。
リンは1人あたふたしているのに気づいて恥ずかしく俯いた。
「大丈夫ですよ、リン」
「そうそう」
「リンの想いを知らないのは当のお兄ちゃんだけだし」
「っっ!!」
マリアの爆弾発言にリンは余計に顔を真っ赤にして驚いた。
そして、自身の弟たちの方を向くと二人そろって視線を逸らした。無言の肯定だ。
それを理解したリンはリリアに詰め寄った。
「ど、どうして!!」
「みんな知っているのかってこと?」
リリアが首を傾げながら聞くとリンは思いっきり首を前後に振った。
勢いが良すぎて首が千切れるのではないかと心配になるほどに。
リリアは優しい顔をしているがその言葉に容赦がなかった。
「あれで隠せていると思う方がすごいわ」
「っ!」
「アルシード様を前にすると顔を赤くし、尻尾を振り、声も高くなっていたわよ」
「ふわぁぁぁぁぁ!!」
リンは自身の状態を突き付けられて奇声を発した。
アリシアが可哀想に思うほどに。
実はリリアは素直になれないリンに振り回されていた。
何かあればアリシアかリリアに相談してきていた。
だが、主であるアリシアより同僚であるリリアの方がその割合が高い。ましてや、その内容がほぼ惚気では嫌気も差してくるというモノだ。
もちろん、リリアも純粋にリンの恋を応援しているがここまで来て二の足を踏んでいるリンの尻を叩く意味も含めて現実を突きつけた。
だが、周りには少々きつく見えたようだ。
「まぁ、リン。リリアの言うように分かりやすい態度を取っていることもあったのだから私たちでもわかるわ」
「そ、そうそう」
「うん」
リリアの言葉のフォローをミナとエレナがしていた。
エレナが優しくリンの背中をなぜた。
この場に居合わせた男性陣はちょっと怖かったが一人だけ違った。
惚れた欲目かジルフォードだけがリリアのそんな強めの言い方に感嘆していた。
それに気づいたバロンとスカルディアは少々呆れていた。
「まぁ、話はそれましたが。どうですか、リン」
「アリシア様」
「隊長さんの養子になり、私の専属侍女となれば大方の問題はなくなりますよ?」
「ですが、いいのですか?」
「何がですか?」
「私たちがジャックス隊長様の養子になれば私はともかく弟たちが、それにジャックス隊長様の未来の奥様も」
「ああ、そういうことなら大丈夫だ」
「え?」
リンはジャックスの今後を心配していた。
リンとしてはこの話は本当にいい話なのだ。
ジャックスという養父が後ろ盾になり、帰る家が出来たことで今後の弟たちの心配もなくなる。
だが、当のジャックスはいまだ未婚なのだ。
未婚の男に養子とはいえ、子供が出来るのは将来一緒になるであろう奥方に悪いという考えがあった。それに家の相続問題も発生してくる。
だが、その心配をジャックス自身が否定した。
「とりあえず、今はお前の気持ちだ、リン」
「は、はい」
「お前はアルシードと一緒になりたくはないのか?」
「私は…」
ジャックスは優しい顔をしていた。
これには男性陣が驚いていた。女性陣も意外だとは思っていたが。ジャックスがこんなに優しい顔をして、優しい声色を使えるとは思っていなかったのだ。
それをわかっていたがジャックスは今はリンの気持ちを知ることが優先と放置した。
少々長めの沈黙の後、リンは勇気を振り縛って言った。
「私はアルシード様と一緒になりたいです!!」
「そうか」
リンの答えにジャックスの顔は余計綻んでいった。
リンたちがいるのがアリシアの部屋だからだ。
アリシアは楽しそうにしている。それを見ているルドワードは微笑ましそうだがスカルディアたちはそんな二人を見て苦笑している。
アリシアにしてみれば自身の大事な存在が幸せになれるとなれば嬉しいのだろう。それが分かっているからみんな苦笑しつつも何も言わないのだ。
アリシアが戻ったことに気づいたリリアが声をかけた。
「ああ、アリシア様。おかえりなさい」
「マリアたち、何もなかったですか?」
「はい。大丈夫でした」
「ごめんなさ~い」
「っっ!!」
マリアはリンに抱き着いていった。
それを受け止めながらリンは苦笑していた。
マリアのこういうところはあんまり成長していないのだ。それに実姉のクレアは呆れていた。
一方、無意識にリリアに想いを寄せているジルフォードはリリアの笑顔にドキッときていた。それを見たバロンは苦笑し、スカルディアは首を傾げた。
なんとなく察したルドワードとジャックスは微笑ましそうだ。
「リン、リン」
「はい?どうしました?アリシア様」
「朗報ですよ」
「朗報?」
「隊長さんがリンたちの養子縁組の受け入れをして下さいました!これで副隊長さんと一緒になれますよ」
「ア、アリシア様!!」
リンは急にバラされて慌てた。
だが、周りはリンとアルシードの事を理解しているので微笑ましいだけだ。
リンは1人あたふたしているのに気づいて恥ずかしく俯いた。
「大丈夫ですよ、リン」
「そうそう」
「リンの想いを知らないのは当のお兄ちゃんだけだし」
「っっ!!」
マリアの爆弾発言にリンは余計に顔を真っ赤にして驚いた。
そして、自身の弟たちの方を向くと二人そろって視線を逸らした。無言の肯定だ。
それを理解したリンはリリアに詰め寄った。
「ど、どうして!!」
「みんな知っているのかってこと?」
リリアが首を傾げながら聞くとリンは思いっきり首を前後に振った。
勢いが良すぎて首が千切れるのではないかと心配になるほどに。
リリアは優しい顔をしているがその言葉に容赦がなかった。
「あれで隠せていると思う方がすごいわ」
「っ!」
「アルシード様を前にすると顔を赤くし、尻尾を振り、声も高くなっていたわよ」
「ふわぁぁぁぁぁ!!」
リンは自身の状態を突き付けられて奇声を発した。
アリシアが可哀想に思うほどに。
実はリリアは素直になれないリンに振り回されていた。
何かあればアリシアかリリアに相談してきていた。
だが、主であるアリシアより同僚であるリリアの方がその割合が高い。ましてや、その内容がほぼ惚気では嫌気も差してくるというモノだ。
もちろん、リリアも純粋にリンの恋を応援しているがここまで来て二の足を踏んでいるリンの尻を叩く意味も含めて現実を突きつけた。
だが、周りには少々きつく見えたようだ。
「まぁ、リン。リリアの言うように分かりやすい態度を取っていることもあったのだから私たちでもわかるわ」
「そ、そうそう」
「うん」
リリアの言葉のフォローをミナとエレナがしていた。
エレナが優しくリンの背中をなぜた。
この場に居合わせた男性陣はちょっと怖かったが一人だけ違った。
惚れた欲目かジルフォードだけがリリアのそんな強めの言い方に感嘆していた。
それに気づいたバロンとスカルディアは少々呆れていた。
「まぁ、話はそれましたが。どうですか、リン」
「アリシア様」
「隊長さんの養子になり、私の専属侍女となれば大方の問題はなくなりますよ?」
「ですが、いいのですか?」
「何がですか?」
「私たちがジャックス隊長様の養子になれば私はともかく弟たちが、それにジャックス隊長様の未来の奥様も」
「ああ、そういうことなら大丈夫だ」
「え?」
リンはジャックスの今後を心配していた。
リンとしてはこの話は本当にいい話なのだ。
ジャックスという養父が後ろ盾になり、帰る家が出来たことで今後の弟たちの心配もなくなる。
だが、当のジャックスはいまだ未婚なのだ。
未婚の男に養子とはいえ、子供が出来るのは将来一緒になるであろう奥方に悪いという考えがあった。それに家の相続問題も発生してくる。
だが、その心配をジャックス自身が否定した。
「とりあえず、今はお前の気持ちだ、リン」
「は、はい」
「お前はアルシードと一緒になりたくはないのか?」
「私は…」
ジャックスは優しい顔をしていた。
これには男性陣が驚いていた。女性陣も意外だとは思っていたが。ジャックスがこんなに優しい顔をして、優しい声色を使えるとは思っていなかったのだ。
それをわかっていたがジャックスは今はリンの気持ちを知ることが優先と放置した。
少々長めの沈黙の後、リンは勇気を振り縛って言った。
「私はアルシード様と一緒になりたいです!!」
「そうか」
リンの答えにジャックスの顔は余計綻んでいった。
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