竜王の花嫁

第二章

31、アリシアの計画

　アリシアは腕に抱えていた卵をルドワードに任せて、バロンにメモ用紙を出してもらい、そこに書きながら説明した。
　実はアリシアは少し前からリンにある事を相談され、ジャックスに話を持ち掛けていたのだ。
「まず、私はリンから副隊長さんのことに関して相談されていました」
「相談？」
「はい。身分は釣り合わないがどうしても副隊長さんのことを諦められないとの」
「なるほど、それなら道が開けるなら多少の苦労をしてでもリンは負けないと言うことだな」
「はい」
　アリシアはリンと二人っきりになる度に相談されていたのだ。
　アリシアとしてもリンの幸せを叶えてあげたいのだ。
「そこで私は隊長さんに話をしていたんです」
「ジャックスに話？」
「リンたち三兄弟を養子として迎え入れることです」
「「「ぶふっ！」」」
　これにはこの場に居た全員が吹いた。
　まさかの展開だったのだ。
「ジャ、ジャックスの養子にか？」
「はい」
「た、確かに年齢的にも子どもがいてもいいが」
「奥さん自体いないのに」
「ああ～、確かに」
「……」
　ジャックスはルドワードがいるのでノーコメントに徹した。
　ジャックスは今までこの人と思う相手に出会ったことがないし、姉が当主だったので焦ってもいなかったのだ。
　だが、ここに来て当主の座を継いでしまったので跡継ぎ、ひいては嫁が必要になってしまった。
　こうなると令嬢たちが黙ってはいない。現第一近衛隊の隊長であり、古参貴族の一画であるクレメント家の当主だ、ましてやまだまだ働き盛りとくればほっとく訳がないのだ。
　だから、ジャックスとしては一応の後継者候補にもなるリン三姉弟が養子となれば体裁がとれるし、時間稼ぎにもなる。
　双方に利があるので受けるつもりだ。
「ジャックスはそれでいいのか？」
「はい、リンたちがいいのであれば」
「そういうことなんです。ですから、後はリンたちの意思一つなんです」
　ルドワードがジャックスに尋ねるとジャックスは何でもないことのように答えた。
　アリシアもにっこりと頷いた。
　なので、このまま作戦の説明を続けた。
　まぁ、ここからは普通で養子縁組を組みクレメント家の養女となれば身分も釣り合うようになる。
　もともと、アリシアの侍女としての立場があるのでこれで文句は言われにくくなる。
　最後にグレイ家の現当主の賛同を貰えたら上々ということだ。
「どうですか？」
「確かにそれなら問題ないだろう」
「はい、クレメント家と近付きになれるとなればあの人たちも文句ないでしょう」
　マリアとクレアは嬉しそうだ。
　ガイやジルフォードにバロンも喜んでいる。
　ルドワードたちも微笑んで見ている。
　みんなが二人の幸せを願っているのだ。
「では、養子縁組を組む方向で話を進めますがいいですか？」
「はい」
「では、まずはリンたちに聞いてみましょう」
　アリシアは嬉しそうに手を合わせて微笑んでいる。
　それはそれは楽しそうな顔をしている。