この世界と引き換えに愛を乞う

seto

文字の大きさ
9 / 82

9

しおりを挟む
「ねぇ、じぃ。僕っていくつ?」

カロクがそう問うと、ローレンスは驚いたようにその目を瞬かせた。

「いくつ、とは‥?」
「年齢。僕、何才になるの?」

その言葉にローレンスは息を飲んだ。
ローレンスは外の事を色々教えてくれてはいたが、年齢やカロク自身の事は一切触れていなかった。

ましてや年齢という概念は、幼い頃から人から問われ、初めて自分に年齢と言うものがあること。そして何才になるのかと言うことを学ぶ。

「それをどこでー‥。
いえ‥。カロク様は昔から聡いお方でしたね‥。」

そう言ってローレンスは困ったように眉尻を下げて笑うと、褒める意味を込めてもう一度カロクを撫でた。

「カロク様は現在5才になられます。
あと数週間もすれば、6才になるといった所でしょうか。」
「5才‥‥。」

そう言ってカロクは頭の中で計算する。
あと数週間で6才と言うことは、乳母に襲われるまであと2年と少し。少なくとも2年間は猶予がある。
カロクはホッと息をつくと、感心したように頷くローレンスを見上げた。

「カロク様‥。
僭越ながら、お誕生日の日は、いつもより早く来られるように致します。ですので、一緒にお祝いしましょう。」
「‥‥お祝い?」
「えぇ。カロク様が生まれてきた日を祝うのです。」

そう言ってローレンスは優しく微笑む。
しかしカロクの心は暗く陰った。誰にも望まれていないのに、お祝いなどして貰ってもいいのだろうか?
その疑問をカロクはそのまま口にする。

「お祝い、してもいいの?」
「えぇ、もちろんですとも。」
「本当に?」
「えぇ、是非ともお祝いさせて下さい。」

ローレンスは、何故か頑なに問い返すカロクが気になった。一抹の不安が胸を過ぎる。
まだ、理解出来る歳ではない。
まだ‥。まだ‥。

「誰にも望まれていないのに?」

カロクのその言葉に、ヒュッとローレンスは息を飲んだ。
あぁ、かの御方は理解しておられる。
ローレンスの胸に、例えようのない焦燥感が募った。しかしそれを悟られてはならぬと、奥歯をグッ噛んで表情を取り繕った。
それを見上げるコバルトブルーの瞳は、悲観するでもなく、ただ冷静に事実だけを受け止めているようだ。

ローレンスは慎重に言葉を選ぶ。

「‥いいえ、カロク様。」

そう言って、カロクの両手を握る。

「カロク様の母君、レティシア様。かの御方は、カロク様の誕生日をそれはそれは喜ばれました。」
「‥ははうえ?」
「はい。ご自分の命と引き換えにしてでも、あなた様を望まれたのです。
ご自身と同じ色を持つカロク様を、それはそれは愛おしげに抱き締めておられました。」

その言葉に、じわりとカロクの胸が熱くなる。もちろん、実際の所は分からない。
だけどそうだといいな、とカロクは思った。

「それに、カロク様の名をつけてくださったのも、レティシア様なのですよ‥?」

心が震える。
泣き出しそうになるのを堪えながら、カロクはローレンスの手を握り返した。

「‥‥なら、大切にしないとね?」

そう言ってカロクが笑うと、いつの間にか溢れた涙で視界が滲んだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...