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北方の砦にて、サイラスは人払いを済ませた執務室で王宮からの手紙を読んでいた。
「王はなんと?」
騎士団長である、ラトクリフが問う。
「このまま1度、停戦交渉にはいると。」
「停戦、ねぇ‥。」
サイラスの言葉に、ラトクリフが皮肉めいた笑みを浮かべた。
戦端は開かれること無く終わった。魔物の襲撃によって。
簡易テントの中では、未だに多くの負傷者がその身を横たえており、医療物資ももはやそこをつきようとしていた。
もちろんベッドなどあるわけなく、みな硬い地面に簡単なシーツを敷いた上に寝かせられており、衛生面も壊滅的だ。
今のところ死者こそないものの、この劣悪な環境ではそのうち人死が出るだろう。
王宮からの手紙には、オーヴァン邸襲撃の詳細も記されていた。刺客は全部で6人。5人が撹乱し、手練である1人が屋敷に侵入すると言う作戦だったようだ。
標的はもちろんオーヴァンだ。上の2人の子供達は寮にいるものだと思われていたようで、カロクに至っては完全に情報になかったらしい。
その全てがカロクの手により捕らえられたが、ローレンスを殺した例の刺客だけ上手く逃げ仰せたようだ。
「例の器ちゃんは?」
ラトクリフの軽口に、サイラスは思わず眉間のシワを深くした。
「‥かなりショックだったようで、今は何もせずただぼんやりと日々を過ごしていると。」
「へぇ‥?」
ラトクリフはニヤニヤといやらしい笑みを貼り付けてはいるが、内心穏やかではないことをサイラスは知っていた。
サイラスはカロクを魔王の器だと知った上で、上司であるラトクリフに報告をしなかった。その結果、サイラス達が北へと出立する間近になって、ラトクリフはその重大な報告を耳にする羽目になった。
「‥‥停戦交渉は、無意味だろうな。」
笑みを消して、ラトクリフが言う。
「知っているか、サイラス。魔物の襲撃を受けたのは、ここだけではないようだぞ?」
「‥‥。」
砦には、公国へ潜ませた密偵からも報告が上がっていた。公国の各地で魔物の動きが一時的に活性化し、公国を襲ったという。
特に公都の被害が酷く、城に詰めていた殆どの騎士が負傷したと書いてあった。
恐らく、同様の報告書が今頃王宮にも上がっている事だろう。
クックッ、とラトクリフが笑う。
「恐ろしいねぇ‥。その子がその気になれば、国を滅ぼせちゃうわけだ。」
「団長‥っ」
サイラスが思わず、窘めるように言う。
しかし次の瞬間、ラトクリフの鋭い視線がサイラスを射抜いた。
「分かっているのか、サイラス。そんな脅威が、今、我らが帝国の王都にいるのだぞ?」
「そ、れは‥っ。」
「本来であれば、魔族を見つけ次第始末すべきだった。力を、持つ前に。そうすれば、その子は脅威にはならなかったかもしれない。」
だが、とラトクリフが続ける。
「今、その子は明確な脅威を示してしまった。他国は、放って置かないだろう。手にすれば、世界を手に入れる事すら可能だ。
逆に手に入れられなければ、どうなる?
いつその牙がこちらに剥くか、怯えながら過ごすことになる。それならば、殺した方がいくらかマシだ。」
「団長っ!!」
「私情は捨てろ、サイラス。
まだ覚醒はしていない。魔族も、まだ対処できるレベルだ。オーヴァンには悪いが、早いうちに殺してしまった方がいいと俺は思う。」
ラトクリフのその言葉に、サイラスはただ押し黙るしかなかった。
「王はなんと?」
騎士団長である、ラトクリフが問う。
「このまま1度、停戦交渉にはいると。」
「停戦、ねぇ‥。」
サイラスの言葉に、ラトクリフが皮肉めいた笑みを浮かべた。
戦端は開かれること無く終わった。魔物の襲撃によって。
簡易テントの中では、未だに多くの負傷者がその身を横たえており、医療物資ももはやそこをつきようとしていた。
もちろんベッドなどあるわけなく、みな硬い地面に簡単なシーツを敷いた上に寝かせられており、衛生面も壊滅的だ。
今のところ死者こそないものの、この劣悪な環境ではそのうち人死が出るだろう。
王宮からの手紙には、オーヴァン邸襲撃の詳細も記されていた。刺客は全部で6人。5人が撹乱し、手練である1人が屋敷に侵入すると言う作戦だったようだ。
標的はもちろんオーヴァンだ。上の2人の子供達は寮にいるものだと思われていたようで、カロクに至っては完全に情報になかったらしい。
その全てがカロクの手により捕らえられたが、ローレンスを殺した例の刺客だけ上手く逃げ仰せたようだ。
「例の器ちゃんは?」
ラトクリフの軽口に、サイラスは思わず眉間のシワを深くした。
「‥かなりショックだったようで、今は何もせずただぼんやりと日々を過ごしていると。」
「へぇ‥?」
ラトクリフはニヤニヤといやらしい笑みを貼り付けてはいるが、内心穏やかではないことをサイラスは知っていた。
サイラスはカロクを魔王の器だと知った上で、上司であるラトクリフに報告をしなかった。その結果、サイラス達が北へと出立する間近になって、ラトクリフはその重大な報告を耳にする羽目になった。
「‥‥停戦交渉は、無意味だろうな。」
笑みを消して、ラトクリフが言う。
「知っているか、サイラス。魔物の襲撃を受けたのは、ここだけではないようだぞ?」
「‥‥。」
砦には、公国へ潜ませた密偵からも報告が上がっていた。公国の各地で魔物の動きが一時的に活性化し、公国を襲ったという。
特に公都の被害が酷く、城に詰めていた殆どの騎士が負傷したと書いてあった。
恐らく、同様の報告書が今頃王宮にも上がっている事だろう。
クックッ、とラトクリフが笑う。
「恐ろしいねぇ‥。その子がその気になれば、国を滅ぼせちゃうわけだ。」
「団長‥っ」
サイラスが思わず、窘めるように言う。
しかし次の瞬間、ラトクリフの鋭い視線がサイラスを射抜いた。
「分かっているのか、サイラス。そんな脅威が、今、我らが帝国の王都にいるのだぞ?」
「そ、れは‥っ。」
「本来であれば、魔族を見つけ次第始末すべきだった。力を、持つ前に。そうすれば、その子は脅威にはならなかったかもしれない。」
だが、とラトクリフが続ける。
「今、その子は明確な脅威を示してしまった。他国は、放って置かないだろう。手にすれば、世界を手に入れる事すら可能だ。
逆に手に入れられなければ、どうなる?
いつその牙がこちらに剥くか、怯えながら過ごすことになる。それならば、殺した方がいくらかマシだ。」
「団長っ!!」
「私情は捨てろ、サイラス。
まだ覚醒はしていない。魔族も、まだ対処できるレベルだ。オーヴァンには悪いが、早いうちに殺してしまった方がいいと俺は思う。」
ラトクリフのその言葉に、サイラスはただ押し黙るしかなかった。
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