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ラトクリフは、サイラスの様子を怪訝そうな表情で見つめる。ラトクリフはサイラスの異常性を知る数少ない人物だ。だからこそ、今のサイラスの言葉に違和感を覚えた。
「団長。」
サイラスはそんなラトクリフの視線に気づくことなく口を開く。
「国として、処分が決定した訳では無いんですよね?」
「‥‥あぁ。戻ったら陛下に進言するつもりだがな。」
「そうですか。‥‥ならば。」
スっとサイラスが視線をあげる。
その瞳にラトクリフは僅かに気圧された。敵を見る瞳とも違う、凪いだ瞳。しかしどこか気迫を感じる。サイラスとの付き合いは長いが、今まで見た事がない瞳の色だった。
「もし処分が決まったら。私に、やらせて下さい。」
静かに落とされたその言葉に、ラトクリフは頭を抱えたくなった。ずっと感じていた違和感が、間違いではなかったとサイラス自ら肯定したのだ。本人に自覚はないだろうが。
「‥‥理由を聞いても?」
ラトクリフが問う。
「‥‥あの子と約束したからです。」
僅かな間を開けて答えたサイラスに、ラトクリフは今度こそ頭を抱えた。
「そうではないだろう、サイラス。」
「‥‥?」
そう返すラトクリフに、サイラスは視線で問い返す。本当に自覚がないのだな、とラトクリフは思う。気付かせるべきか悩んだラトクリフだったが、無自覚のまま放置すればサイラスがどのような行動に出るか分からない。最も、気付かせた所でどうなる事でもないだろうが。
ラトクリフは深いため息をついてから、顔をあげる。
「‥‥気づいていないのか?」
「何がですか。」
「お前がそんなに人を気にかけた事など、今までないだろう?」
そうラトクリフが返すと、サイラスはピタリと動きを止めた。
サイラスという男は、およそ人らしからぬ感情を持たない人物だった。上からの命令には逆らわず、必要があれば女子供ですら手にかける。合理的で機械のような男。
愛想はよく、言動も常人と変わらないように見せているので初見でその性質を見抜く事は難しいが、ラトクリフやオーヴァンなど一部の付き合いの長い者には周知の事実だった。サイラスもそれを承知しているので、ラトクリフ達の前で自分を偽る事はしない。
通常のサイラスであれば、器の事もその場で処理するか、少なくともラトクリフに報告をあげただろう。
今だってそうだ。サイラスは明らかにその子供の身を案じている。いつものサイラスでは見られない光景だ。
「‥‥サイラス。」
動かなくなってしまったサイラスに、ラトクリフが声をかける。すると虚空を見つめていたサイラスの瞳がゆっくりとラトクリフを捉えた。
「お前が僅かでも人に興味を持ったのはいい事だと思う。だがな、相手が悪い。」
そう言ってラトクリフが席を立つ。
大股でサイラスに近づくとその肩にポンッと手を置いた。
「‥‥よく、考えろ。何が最善かをな。」
そう言い残し、ラトクリフはサイラスを置いて執務室を出ていった。
「団長。」
サイラスはそんなラトクリフの視線に気づくことなく口を開く。
「国として、処分が決定した訳では無いんですよね?」
「‥‥あぁ。戻ったら陛下に進言するつもりだがな。」
「そうですか。‥‥ならば。」
スっとサイラスが視線をあげる。
その瞳にラトクリフは僅かに気圧された。敵を見る瞳とも違う、凪いだ瞳。しかしどこか気迫を感じる。サイラスとの付き合いは長いが、今まで見た事がない瞳の色だった。
「もし処分が決まったら。私に、やらせて下さい。」
静かに落とされたその言葉に、ラトクリフは頭を抱えたくなった。ずっと感じていた違和感が、間違いではなかったとサイラス自ら肯定したのだ。本人に自覚はないだろうが。
「‥‥理由を聞いても?」
ラトクリフが問う。
「‥‥あの子と約束したからです。」
僅かな間を開けて答えたサイラスに、ラトクリフは今度こそ頭を抱えた。
「そうではないだろう、サイラス。」
「‥‥?」
そう返すラトクリフに、サイラスは視線で問い返す。本当に自覚がないのだな、とラトクリフは思う。気付かせるべきか悩んだラトクリフだったが、無自覚のまま放置すればサイラスがどのような行動に出るか分からない。最も、気付かせた所でどうなる事でもないだろうが。
ラトクリフは深いため息をついてから、顔をあげる。
「‥‥気づいていないのか?」
「何がですか。」
「お前がそんなに人を気にかけた事など、今までないだろう?」
そうラトクリフが返すと、サイラスはピタリと動きを止めた。
サイラスという男は、およそ人らしからぬ感情を持たない人物だった。上からの命令には逆らわず、必要があれば女子供ですら手にかける。合理的で機械のような男。
愛想はよく、言動も常人と変わらないように見せているので初見でその性質を見抜く事は難しいが、ラトクリフやオーヴァンなど一部の付き合いの長い者には周知の事実だった。サイラスもそれを承知しているので、ラトクリフ達の前で自分を偽る事はしない。
通常のサイラスであれば、器の事もその場で処理するか、少なくともラトクリフに報告をあげただろう。
今だってそうだ。サイラスは明らかにその子供の身を案じている。いつものサイラスでは見られない光景だ。
「‥‥サイラス。」
動かなくなってしまったサイラスに、ラトクリフが声をかける。すると虚空を見つめていたサイラスの瞳がゆっくりとラトクリフを捉えた。
「お前が僅かでも人に興味を持ったのはいい事だと思う。だがな、相手が悪い。」
そう言ってラトクリフが席を立つ。
大股でサイラスに近づくとその肩にポンッと手を置いた。
「‥‥よく、考えろ。何が最善かをな。」
そう言い残し、ラトクリフはサイラスを置いて執務室を出ていった。
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