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触れるだけの口付けが落ちる。
僅かに震えるそれに、フィオニスはクスリと苦笑をこぼした。
「無理をする必要はないぞ?」
そう言って上目遣いで見つめれば、クルースニクが僅かに怯んだ。
「い、ぇ‥。そう、ではなく‥。」
クルースニクから歯切れの悪い言葉がこぼれる。
「そう、ですね‥。やはり、その‥罪悪感が‥。」
魔族は一様にして欲というものを厭う。
それにより虐げられ、世界が堕落したのだから当然だろう。そのためそれを許されたとしても、どうしてもしり込みをしてしまうようだ。
「ぁ、の‥?」
その時、呆然とした表情でエクトールがこぼした。
「何を‥‥?」
2人の口付けを目にして、混乱しているようだ。何故かショックを受けているようにも見える。エクトールもまた、欲というものに忌避感を感じているのだろうかとフィオニスは思った。
「魂を食らった代償のようなものだ。クルースニクは、それに付き合ってくれている。
詳しくはー‥‥、そうだな‥。神にでも問うてみるといい。」
そう言ってフィオニスは意味ありげな笑みを浮かべた。
このまま触れずにいることも出来るのだろう、とクルースニクは思う。フィオニスは何も出来なかったクルースニクを責めることはない。
だがそうすれば、フィオニスに長く苦痛を味わわせることになる。それに、自分が触れなくても別の誰か、それこそまたベルナール辺りにでも頼られるのだろう。そう考えると、クルースニクは焦燥感のようなものを感じた。
「失礼します‥。」
クルースニクはそう言って軽く息を吐き出すと、フィオニスの腰に手を回して引き寄せた。密着する下肢からフィオニスの熱が伝わり、ぐらりと視界が揺れるような気がした。
「無理はするなよ‥。」
そう言ってフィオニスは戯れるような口付けをクルースニクへ落とした。
この期に及んでもなお、フィオニスはクルースニクの気持ちを重んじてくれる。そんなフィオニスに、クルースニクはじわりと心が暖かくなった。
「‥‥ん‥」
フィオニスの頬を両手で挟み、しっとりと濡れたその唇を奪う。食むようにして何度か合わせれば、トロリとフィオニスの瞳が溶けた。
「‥ッ‥‥ん‥!?」
ヌルりとクルースニクがフィオニスの唇に舌を這わせると、見慣れぬ感覚にビクリとフィオニスの肩が跳ねた。
「何‥‥?」
唇を離してフィオニスが問えば、クルースニクは困ったように眉尻を下げて笑う。
「私の舌は少々特殊でして。不快であれば、やめますが‥。」
そう言ってクルースニクが舌を出す。
だらりと長いその舌は、蛇のように舌先が裂けているスプリットタンとなっていた。しかし蛇ほどの細さはなく、人と蛇を合わせたような艶めかしさを持っている。
フィオニスは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。あんなもので口腔内をかき混ぜられたらどうなってしまうのか。そんなはしたない考えが過り、思わず自嘲した。
「‥‥いや、構わない。少し、驚いただけだ。」
フッと苦笑すると、フィオニスは自ら舌を差し出して、ゆっくりと顔を近づける。
「‥‥ッ‥」
ヌルりと舌先同士が触れると、クルースニクの肩が震えた。そんなクルースニクの様子に、フィオニスはククッと喉の奥で笑う。ゆっくりと焦らすようにその形を辿り、二股に別れたその根元を擽る。溢れた唾液が舌を伝ってクルースニクの舌先で交わり、糸を引きながら地面へと落ちていく。その雫を見送ってから熱の篭った瞳を上げれば、静かに熱を湛える錆色の瞳とかち合った。
「あまり、煽らないで頂きたい‥。」
そう言ってクルースニクはクッ、と目尻をすがめると、フィオニスの口腔内に自らの舌をねじ込んだ。
僅かに震えるそれに、フィオニスはクスリと苦笑をこぼした。
「無理をする必要はないぞ?」
そう言って上目遣いで見つめれば、クルースニクが僅かに怯んだ。
「い、ぇ‥。そう、ではなく‥。」
クルースニクから歯切れの悪い言葉がこぼれる。
「そう、ですね‥。やはり、その‥罪悪感が‥。」
魔族は一様にして欲というものを厭う。
それにより虐げられ、世界が堕落したのだから当然だろう。そのためそれを許されたとしても、どうしてもしり込みをしてしまうようだ。
「ぁ、の‥?」
その時、呆然とした表情でエクトールがこぼした。
「何を‥‥?」
2人の口付けを目にして、混乱しているようだ。何故かショックを受けているようにも見える。エクトールもまた、欲というものに忌避感を感じているのだろうかとフィオニスは思った。
「魂を食らった代償のようなものだ。クルースニクは、それに付き合ってくれている。
詳しくはー‥‥、そうだな‥。神にでも問うてみるといい。」
そう言ってフィオニスは意味ありげな笑みを浮かべた。
このまま触れずにいることも出来るのだろう、とクルースニクは思う。フィオニスは何も出来なかったクルースニクを責めることはない。
だがそうすれば、フィオニスに長く苦痛を味わわせることになる。それに、自分が触れなくても別の誰か、それこそまたベルナール辺りにでも頼られるのだろう。そう考えると、クルースニクは焦燥感のようなものを感じた。
「失礼します‥。」
クルースニクはそう言って軽く息を吐き出すと、フィオニスの腰に手を回して引き寄せた。密着する下肢からフィオニスの熱が伝わり、ぐらりと視界が揺れるような気がした。
「無理はするなよ‥。」
そう言ってフィオニスは戯れるような口付けをクルースニクへ落とした。
この期に及んでもなお、フィオニスはクルースニクの気持ちを重んじてくれる。そんなフィオニスに、クルースニクはじわりと心が暖かくなった。
「‥‥ん‥」
フィオニスの頬を両手で挟み、しっとりと濡れたその唇を奪う。食むようにして何度か合わせれば、トロリとフィオニスの瞳が溶けた。
「‥ッ‥‥ん‥!?」
ヌルりとクルースニクがフィオニスの唇に舌を這わせると、見慣れぬ感覚にビクリとフィオニスの肩が跳ねた。
「何‥‥?」
唇を離してフィオニスが問えば、クルースニクは困ったように眉尻を下げて笑う。
「私の舌は少々特殊でして。不快であれば、やめますが‥。」
そう言ってクルースニクが舌を出す。
だらりと長いその舌は、蛇のように舌先が裂けているスプリットタンとなっていた。しかし蛇ほどの細さはなく、人と蛇を合わせたような艶めかしさを持っている。
フィオニスは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。あんなもので口腔内をかき混ぜられたらどうなってしまうのか。そんなはしたない考えが過り、思わず自嘲した。
「‥‥いや、構わない。少し、驚いただけだ。」
フッと苦笑すると、フィオニスは自ら舌を差し出して、ゆっくりと顔を近づける。
「‥‥ッ‥」
ヌルりと舌先同士が触れると、クルースニクの肩が震えた。そんなクルースニクの様子に、フィオニスはククッと喉の奥で笑う。ゆっくりと焦らすようにその形を辿り、二股に別れたその根元を擽る。溢れた唾液が舌を伝ってクルースニクの舌先で交わり、糸を引きながら地面へと落ちていく。その雫を見送ってから熱の篭った瞳を上げれば、静かに熱を湛える錆色の瞳とかち合った。
「あまり、煽らないで頂きたい‥。」
そう言ってクルースニクはクッ、と目尻をすがめると、フィオニスの口腔内に自らの舌をねじ込んだ。
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