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第二章 『魔力』が無いと勝手に思い込んでいました

こんなのあったかな

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 魔導日記をノア・マーティン先生に届けたら、最強魔導士を決める大会が近いという合図の音が響いた。
 この音は、最強魔導士を決める大会が近いという合図なのだろうと思ったが、先生の反応を見る限りそうでは無いらしい。

 先生が部屋を出ていこうとしているととっさに引き止めた自分に驚いた。
 結局、先生は出ていってしまったけど……。

 どうして、引き止めようとしたのか自分でも分からない。

 ふと、前にも似たようなことがあったような。
 そんなことを考えてみるが、なにかの間違いだろうと思った。

 もう二度と会えないような気がするなんて。
 死亡フラグを立ててるようなものじゃない。
 ゲームではノア先生の話題が少しでるだけ。

 それにしても……。

「こんなのあったかな」

 大会があったのは知ってるけどあの音を大会以外で鳴らすのは、貴族の誰かが行方不明者が出たのか。もしくは国にとって悪質ななにかがあったのか。
 それはゲームでは語られてなかった。むしろ、今の時期には大会が開催されていなかった。
 ゲームで、攻略対象者の会話でその大会映像が見られなかったと話していたっけ。

「先生」

 嫌な予感がする。それは私の直感だからその予感が的中しなければいいと強く思った。

 急いで部屋を出て、周りを見渡すがすでに先生の姿が見えなかった。

 引き止めようとしてもきっと私の手を振りほどくだろう。
 確信を持たない言葉なんてとても安っぽいんだから。

「ソフィア様!!」
「アイリス」

 どうしようかと悩んでいたらアイリスが早歩きで近づいてきた。

「お怪我はありませんでしたか?」
「え。怪我って」
「攻撃魔法は発動しませんでしたか!?」

 心配する彼女がなんでそんなに心配しているのだろうと思っていたら魔導日記の攻撃魔法が発動しなかったかどうかを聞いてきた。
 それで私が怪我をしなかったのかを心配していたようだ。

「大丈夫。それよりもさっきの音って」
「それならご心配ありませんよ。なにかの不具合でしょう。先程、通信用の魔導具で宰相様からご連絡がありました」

 どこも怪我をしてないのがわかるとアイリスは胸を撫で下ろしてニコッと微笑んだ。

「不具合、ねぇ」

 それは嘘。でも、断定は出来ないのがもどかしい。
 証拠がないもの。

「ソフィア様?」
「ああ、なんでもない。それよりもノア先生を見なかった?    話したいことがあるのだけど」

 考え事をしていたらアイリスが心配そうに顔を覗き込んできたから私は安心させるように微笑んだ。
 アイリスは私の微笑みを見て安心した表情になる。

「ノアさんでしたら先程すれ違いました。どこか急いでいるようにも見えたのですが、なにかあったのでしょうか?」
「えぇ。ちょっと、聞きたいことがあったのだけど」

 今から行っても追いつけるかどうか。
 屋敷内に居たらいいけど、外に行ったなら諦めるしかない。
 どの道、私は結界の外には出られないんだもの。

 悩んでいたらアイリスが「もしよろしければ、お伝えしましょうか?」と心配そうに言ってくれたけど、私は首を左右に振った。
 通信用の魔導具で伝えるのだろうけど、誰にも知られてはいけない内容だから自分で聞くしかない。

「ありがとう。その気持ちだけ受け取っておくね」

 ノア先生の『魔法が消えている』その言葉がどうも引っ掛かる。
 確か、似たようなのをなんかの本で読んだような。
 とりあえずその本を探してみよう。

 でもなんの本だったっけ。

 私は自分の寝室に向かった。

 寝室には、暇つぶしのために侍女に頼んで取り寄せてもらった本が置いてあるから。
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