乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

文字の大きさ
106 / 236
第十一章⠀真相エンド

一途さに惹かれたんです。

しおりを挟む
 人の目も気になるので、ノエルにクロエ様を連れてくる場所を人気(ひとけ)のない塔の近く。

 ーーカミーリャ塔。
 塔の頂上が椿のような見た目をしていた。

 塔から見渡す景色はとても綺麗らしいのだが、怖い噂があるので誰一人として近付かない。

 もちろん、そんな噂はデマなのだが信じる人はかなり多い。

 それもそのはず、女性の霊が見えた人や顔がない騎士を見たとか目撃情報が多数あるんだ。

 女性の霊はカミーリャ塔を管理する人を見間違えただけ。
 顔のない騎士は鎧を着るのが下手くそでこっそりと練習するために塔付近で着替えているところをたまたま通りかかった人に見られたということだけ。

 鎧を頭から被っていたらしく、頭が無いものと思われたというわけだ。

 そもそも兜ならわかるのだが、他は頭からは被らないんだけど、その騎士はよっぽどおっとりしているんだろうな。

 その騎士がキースさんのような気がするけど……もしかしたら、キースさんを見たことあるのはそこかもしれないな。


 昔が処刑場でそれを取り壊して塔が建てられたらしいからそれもあるのだろう。

 そのことはゲームで知った話だからカミーリャ塔を待ち合わせ場所に指定したらノエルがとても心配そうにしていた。

 なんとか説得して呼んできてもらった。

 ノエルは心配だからと遠くから見守っているそうだ。

「お話とは?」
「……私に知恵を貸してください」

 クロエ様は驚いていたが、詳細を求めてきたので自分がわかる範囲で話をした。

 自分の前世やどこまでプレイ済みなのかや、転生してからの出来事を。

 クロエ様は頷いて私の話を最後まで聞いてくれた。

「話はわかりました。真相エンドなのですが……、悪役令嬢ルートから入り、『聖なる乙女』とヒロインが大きく関わってきます」
「どのルートでも大きく関わってきませんか? 『聖なる乙女』はヒロインに加護を与えています」

 どのルートでも加護を与えるシーンがある。
 それ以上に深く関わりを持つってどういうこと?

「確かにそうですが、なぜ『聖なる乙女』が加護を与えたのでしょう?」
「それはヒロインを気に入って……」

 クロエ様は首を左右に振った。

「違います。次の『聖なる乙女』として加護を与えたのです。深紅の瞳を持つ者は特別な魔力を秘めています。世界樹を護る役目に相応しいと加護を与えたんです」
「……あの、仮に世界樹が枯れれば世界はどうなるんですか?」
「魔力は無くなるので衰退は確実かと。暗黒時代が来るかも知れませんね。舞台が中世ヨーロッパなので」

 そっか。確か、暗黒時代って文化の停滞や衰退してたんだっけ。
 平民は魔法が無くても生きる術を知ってるけど貴族は魔法に頼ってる部分があるから生きにくい時代になるかもしれない。

「……『聖なる乙女』になったのですか?」
「はい。なりました。そして、精霊と化したヒロインは殿下の元に訪れ愛を誓い合う。そこで真相エンドは終わりです」
「あの、クロエ様は男性? ですよね。シナリオ通りに『聖なる乙女』の加護を授けられるかわかりませんよね」

 乙女と言われてるから、世界樹の精霊は女性限定なのかなって思うけど……。

「元の身体は女です。魔法で男の姿に変えてるだけで……その、心が男なので自分の身体とはいえ……着替えとか……」

 クロエ様は恥ずかしそうに言うので、私は首を傾げたがすぐに理解した。

 私まで恥ずかしくなってきた。そうよね、いくら自分の身体とはいえ、前世では男として育ったもの。

 女性の身体を見るのは抵抗があるものね。

 なんとか話題を変えようと必死に頭を悩ます。

「そうです! どうして悪役令嬢が好きなのですか? 我儘で好かれる要素なんて無いのに」
「そうですね、貴族になる前はとても良い子でした。ですが、両親が居なく、目が覚めれば会ったことがない人達。怖くて堪らなくなった悪役令嬢は恐怖をぶつけるようになるんです。両親が亡くなった真実を知らないので捨てられたと思い込み、心を閉ざしていくんです」

 そっか、私の場合は知っていたからそんなに病むことはなかった。
 けどゲーム内でのソフィアは何も知らない。また、皆が優しいから余計に寂しさが増してしまった……のかも。

「ですが、それだけで好きになるとは思えません」
「そうですね。それだとただの同情ですからね。一途さに惹かれたんです。真相エンドでは自分の恋を諦めて主人公ヒロインを応援していたエピソードがあります。なので、本当は友達思いで、好きになったら一途に想い続けているところが好きなんです」

 応援……悪役令嬢が!?

 信じられない。だったら悪役令嬢が可哀想だってネットが少し炎上していたのも納得するけども。

 ーーいや、納得はしないか。それだけだと私は好感持てない。

 まだありそうな気がするなぁ。

「また、頬を赤らめて『あなたのためにやったのではありませんから、勘違いしないで』という台詞に心を撃たれました」

 ツンデレかぁ……。ツンツンしていた子が急にデレたら可愛いって思うものなのかな。

 真相エンドはわかったけど、悪役令嬢の好感持てるのが微妙なんだよなぁ。

「……悪女と言われたソフィア彼女は王太子殿下の婚約者に相応しくあろうと勉学に励み、クロエ……、ゲーム内のヒロインに言葉は厳しいけれど何回か心配していました」
「心配?」
「はい。あなたもご存知かと思います。入学式の夜会で転んだ時に悪役令嬢のドレスに飲み物をかけてしまった」

 その場面なら覚えてる。

 確か、悪役令嬢がヒロインを思いっきり睨みつけ、「まぁ、汚らわしい」などと暴言を吐き捨てたんだったよね。

「暴言を吐き捨てましたよね」
「はい。その通りです。ただあの台詞には『転んでドレスが汚れてましてよ。着替えてきた方がいいですわ』という意味だったそうです。悪役令嬢の過去を考えると本音を言えないまま時は過ぎてしまったようなものですから、自然と悪癖が身についてしまったのでしょう」

 そっか。あれは悪役令嬢の優しさだったのか。

「それも真相エンドでわかることです。また、悪役令嬢(彼女)は美しく、とても強い女性だ。ヒロインと殿下の幸せを願い身を引くどころか応援していたし、自分が悪女だと認め、見つめ直し歪んだ性格を直そうと努力をした。少しずつですが、改善に向かっていきました」

 強い女性……。そっか、プライドが高い人ほど自分の悪いところは他人が指摘したところで『自分は違うんだ』と思い込み、認めたくないものだと思う。

 悪いところを自分が気付くのが一番良いんだけど、気付いたところで直そうとしないで『これが私なんだ』と受け入れてしまう人は少なくない。

 確かに、強い女性だね。

 自分と向き合う強さを持っている。元々あったのかも知れないけど、向き合うチャンスを自分から見逃していた。

 何年経とうが見つけることができ、自分の弱さを理解するのは、凄いことだと私は思う。

 私が口を開こうとした時、ノエルの悲鳴が聞こえた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...