乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第十四章 悪役令嬢

やっと会えた

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 ああ、やっと会えた。

 私は、悪役令嬢ーーソフィアに抱きついた。

「なっ!? なんですの!!!?」

 いきなりのことで驚いた彼女は私を剥がそうと必死にもがく。

「やっと……やっと会えた」

 自然と思ってることを声に出してしまった。

 色んな感情が押し寄せ、複雑な気持ちになってはいるが私はずっと言いたかったことがある。

「この世界に導いてくれて、ありがとう」

 前世で死ぬ直前の出来事は私の不注意だった。でも、死ぬ間際、確かに聞こえていたんだ「……助けてあげて」と。

 消え入りそうなその声は、確かに悪役令嬢の声だったと思う。

 導いてくれていたんだと思った。今世でこの世界に転生してなければ私は色んな人の温かさを知らなかったのかもしれない。

「……アレン様を不幸にはさせたいとは望んでいなかった。でも、一時の感情が呪いとなって蝕んでいる。それが耐えられなかったから私を呼んだんでしょう?」
「有り得ませんわ。殿下は……私よりもあの女を選んだのです。憎くて憎くて、一生苦しめば良いんですわ!!」

 私と悪役令嬢の間に小さな電撃が走り、危ないと感じた。

 急いで距離を置くとアルくんが私を護るように前に出てきた。

「……あなたもです。その体は私のですわ。返してもらいます。……やり直すんですわ」
「返したところで、罪が消えるとは思えない!! 私も一緒に罪を背負うから、お願い。呪いを解いて」
「呪いを解くことは有り得ませんわ。苦しめばいいんです」

 地面から黒い手みたいなのが現れ、私とアルくんを包み込もうとする。

 アルくんが結界を張ってくれたおかげで黒い手は私に触れることが出来ない。私の属性を使えば無効化出来るとは思うけど、完全には無効化出来ないだろう。

 そのぐらい、魔力が高く危険なんだ。

「……誰からも愛されなかった私とあなたは同じだった!! なのに、この扱いの差はなんだと言うのです? どうして、殿下に愛されているのですか? 私がどれだけ恋焦がれていても手に入れなかったというのに」

 何を……言ってるの?

「アレン様は私を愛してなどいないわ。優しいのは同情から、だから勘違いは絶対にしない」

 アレン様は私を愛してはいない。婚約を申し込んだのだって私を監視するため。好意があるフリをしているだけだわ。

 アレン様の優しさは残酷だと思う。でもその優しさに何度も救われている。

 変な気を起こしちゃダメだ。期待を持ってはいけない。

「そうなんですの。だったら、頂戴。今の位置を私にっ!!」

 ピシッと結界にヒビが入る。パリーンっと結果が破れ、アルくんは吹き飛ばされ、黒い手が私に伸びてきた。

 だが、私の属性のおかげが魔力が無効化となり灰となって消えていくが完全には無効化出来ていないため、針状となった黒い手が私の中へと入っていく。

「な……に、これ」
「あなたの魂が消滅するんですわ」

 嘘……。ドクンっと胸の高鳴りが早くなる。心臓に激痛が走り、地べたに座り込んで胸を抑える。

 これで私の今世が終わり?? 確かに、返さなくちゃいけないとは思った。でも……返したくない!!

 でも、目の前にいる悪役令嬢の心を救いたい。

 お願い……、お願いだから、私はこんなところで死にたくないっ!!

 欲張ってはいけないとわかっていても心はそうは思ってくれない。

 気持ちが死にたくない。この世界でソフィアとして生きていきたいと強く思ってしまった。

 魔法石が輝き出した。優しい光に包まると痛みが無くなる。

 誰かが私の頭を撫でてくれた。途端に涙が溢れた。

 涙を強引に拭いて、私はゆっくりと立ち上がって悪役令嬢に近付く。

 怖くないといえば嘘になる。あ・の・頃・のように怖いからといって動けないということは無いけど……、恐怖ってなかなか打ち勝つことは出来ない。

 今、私が動けるのは私の頭を優しく撫でてくれたおかげでもある。少しだけ恐怖が和らいだ。

 暖かな優しさは……今世での私の母親だ。

 目の前にいる悪役令嬢に伝えなくちゃいけないことがある。

 一人じゃないということと、両親に愛され、アレン様が気にかけてくださっていることを……。

 言葉ではきっと伝わらない。だったら魔法石を使うまで。




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