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第十七章 三作品目のヒロインの想い人
それは少しだけシナリオと外れてますね
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私はノア先生と別れて寝室に行き、一息ついてから通信用の魔導具に手をつける。
ただ、今の時間帯は寝ているか入浴中な気もするけど状況が状況な為、申し訳ない気持ちになりつつも通信を試みる。
すると、すぐにクロエ様が映像として映し出される。
湯上りのようで火照っていた。若干、髪も濡れていてとても色っぽい。
いくら周りが美男美女揃いだけども、慣れないものは慣れない。
私は恥ずかしくて顔を逸らした。
「す、すみません……。タイミング悪かったですよね」
〈いえ。お待ちしてましたよ。もうそろそろ連絡してくるかと思ってましたので〉
挙動不審になっている私があまりにもおかしかったのかクスクス笑っているクロエ様。
私は、恥ずかしさを誤魔化すように咳払いして、要件を伝える。
「『クリムゾン メイジ』のシリーズもので私の専属侍女が関わってくる話ってあるのでしょうか?」
〈ありますよ。三作品目に。……それもソフィア様の専属侍女、アイリス・ルイス様がヒロインの〉
「アイリスが……じゃあアイリスが実家に帰ったりするのも」
〈シナリオ通りです。ただ、この三作品目の悪役令嬢がソフィア様なので、死亡フラグにはお気をつけて〉
「シナリオ通りなら……、アイリスは誰ルートになってるか分かりますか?」
〈それがまだ分からないんです。連絡してくるということはソフィア様のところでも何かしら動きがあったのですよね? お聞かせください〉
「ノア先生にアイリスからの空白の手紙と宝石を渡して、調べて貰いました。それで……宝石には鍵が入っているらしいのですが、魔力の他に何かが必要みたいでして」
〈……それは少しだけシナリオと外れてますね。本来なら攻略対象者に手紙と宝石を託すんです。その魔力の他に必要なものはアイリスさんが過去に言った気持ちです。攻略対象者に対する想いを〉
「攻略対象者じゃない私に渡したから……えっ、そんなこと有り得るんですか?」
話をしていて、驚いた。だって私は攻略対象者じゃない。ましてや悪役令嬢だ。
私に全てを託した? 多分違うはず。私が迷わずノア先生に相談したように……もしかしたらアイリスも?
私には優しめかなノア先生ならば、私の頼みを断れないと思ったから?
アイリスは……、ノア先生のことを……?
「あの、ノア先生って……攻略対象者に入っているのでしょうか?」
クロエ様はゆっくりと頷いた。
私は息を飲んだ。そっか、アイリスは……。
「ふふっ……。自分の心に嘘をつかないでって言っといて、アイリスのバカ。本当に……」
私は俯いて、拳を握る。じわっと目頭が熱くなる。
これは嘘をつかれて悲しいからじゃない。アイリスの心に気付かなかった自分に腹が立っているんだ。
自分のことで精一杯でアイリスのことなんて気にかける余裕がなかった。
自分が情けなさ過ぎて、腹が立って、その苛立ちをどこにぶつけて良いのか分からないから、アイリスに悪態をついてしまった。
そんなことが言いたいわけじゃないのに。感情が上手くコントロール出来なくて苦しい。
でも、一番苦しんでるのはアイリスだと思うから……、弱音は全て終わった後だ。
私は乱暴に涙を拭く。
〈ソフィア様、大丈夫ですか?〉
「……アイリスはどうなるんでしょうか?」
〈政略結婚をしますよ。……ただ、結婚式に攻略対象者が現れてアイリス様を連れ去って行きますが。悪役令嬢は攻略対象者によっては、その時に死んでしまいますが〉
だったら……結婚式にアイリスを救うチャンスがあるということね。
「結婚式の招待状って」
〈……ソフィア様の屋敷にも来る予定ですが、結婚式には行けないんですよ。何しろ……闇の〉
クロエ様は言いずらそうに口篭る。
私は闇属性だ。設定上、私は参加出来ない。それなのに何故、結婚式に行けたのか疑問。
「どうやって行ったのですか?」
〈逆上したのです。侍女が先に結婚なんて図々しいと。文句を言いに〉
「ああ……なるほど」
私はため息をすると、クロエ様は提案してきた。
〈ソフィア様がアイリス様を連れ戻したいと願うなら、僕の侍女として結婚式に行きますか?〉
きっと、私は結婚式には行けない。ゲームの悪役令嬢みたく図々しくも堂々と結婚式になんて行けないもん。
それをわかってるからこそ、クロエ様がそんな提案をしてきたんだろう。
ただ、私の独断では決められない。いや、決めちゃいけないような気がする。
「少し、時間をください」
と、クロエ様に伝えた。
ただ、今の時間帯は寝ているか入浴中な気もするけど状況が状況な為、申し訳ない気持ちになりつつも通信を試みる。
すると、すぐにクロエ様が映像として映し出される。
湯上りのようで火照っていた。若干、髪も濡れていてとても色っぽい。
いくら周りが美男美女揃いだけども、慣れないものは慣れない。
私は恥ずかしくて顔を逸らした。
「す、すみません……。タイミング悪かったですよね」
〈いえ。お待ちしてましたよ。もうそろそろ連絡してくるかと思ってましたので〉
挙動不審になっている私があまりにもおかしかったのかクスクス笑っているクロエ様。
私は、恥ずかしさを誤魔化すように咳払いして、要件を伝える。
「『クリムゾン メイジ』のシリーズもので私の専属侍女が関わってくる話ってあるのでしょうか?」
〈ありますよ。三作品目に。……それもソフィア様の専属侍女、アイリス・ルイス様がヒロインの〉
「アイリスが……じゃあアイリスが実家に帰ったりするのも」
〈シナリオ通りです。ただ、この三作品目の悪役令嬢がソフィア様なので、死亡フラグにはお気をつけて〉
「シナリオ通りなら……、アイリスは誰ルートになってるか分かりますか?」
〈それがまだ分からないんです。連絡してくるということはソフィア様のところでも何かしら動きがあったのですよね? お聞かせください〉
「ノア先生にアイリスからの空白の手紙と宝石を渡して、調べて貰いました。それで……宝石には鍵が入っているらしいのですが、魔力の他に何かが必要みたいでして」
〈……それは少しだけシナリオと外れてますね。本来なら攻略対象者に手紙と宝石を託すんです。その魔力の他に必要なものはアイリスさんが過去に言った気持ちです。攻略対象者に対する想いを〉
「攻略対象者じゃない私に渡したから……えっ、そんなこと有り得るんですか?」
話をしていて、驚いた。だって私は攻略対象者じゃない。ましてや悪役令嬢だ。
私に全てを託した? 多分違うはず。私が迷わずノア先生に相談したように……もしかしたらアイリスも?
私には優しめかなノア先生ならば、私の頼みを断れないと思ったから?
アイリスは……、ノア先生のことを……?
「あの、ノア先生って……攻略対象者に入っているのでしょうか?」
クロエ様はゆっくりと頷いた。
私は息を飲んだ。そっか、アイリスは……。
「ふふっ……。自分の心に嘘をつかないでって言っといて、アイリスのバカ。本当に……」
私は俯いて、拳を握る。じわっと目頭が熱くなる。
これは嘘をつかれて悲しいからじゃない。アイリスの心に気付かなかった自分に腹が立っているんだ。
自分のことで精一杯でアイリスのことなんて気にかける余裕がなかった。
自分が情けなさ過ぎて、腹が立って、その苛立ちをどこにぶつけて良いのか分からないから、アイリスに悪態をついてしまった。
そんなことが言いたいわけじゃないのに。感情が上手くコントロール出来なくて苦しい。
でも、一番苦しんでるのはアイリスだと思うから……、弱音は全て終わった後だ。
私は乱暴に涙を拭く。
〈ソフィア様、大丈夫ですか?〉
「……アイリスはどうなるんでしょうか?」
〈政略結婚をしますよ。……ただ、結婚式に攻略対象者が現れてアイリス様を連れ去って行きますが。悪役令嬢は攻略対象者によっては、その時に死んでしまいますが〉
だったら……結婚式にアイリスを救うチャンスがあるということね。
「結婚式の招待状って」
〈……ソフィア様の屋敷にも来る予定ですが、結婚式には行けないんですよ。何しろ……闇の〉
クロエ様は言いずらそうに口篭る。
私は闇属性だ。設定上、私は参加出来ない。それなのに何故、結婚式に行けたのか疑問。
「どうやって行ったのですか?」
〈逆上したのです。侍女が先に結婚なんて図々しいと。文句を言いに〉
「ああ……なるほど」
私はため息をすると、クロエ様は提案してきた。
〈ソフィア様がアイリス様を連れ戻したいと願うなら、僕の侍女として結婚式に行きますか?〉
きっと、私は結婚式には行けない。ゲームの悪役令嬢みたく図々しくも堂々と結婚式になんて行けないもん。
それをわかってるからこそ、クロエ様がそんな提案をしてきたんだろう。
ただ、私の独断では決められない。いや、決めちゃいけないような気がする。
「少し、時間をください」
と、クロエ様に伝えた。
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