乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第二十一章 悪魔は嗤う

辛いと思ってしまったら……

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 寮に戻り、夕飯やら色々と済ませるとソファーに寛いだ。

 アイリスがそんな私の様子を見てふふっと笑った。

「何?」
「なんでもありませんよ」

 なんでもないと言っているわりには満面の笑みなのだけども。
 嬉しいことでもあったのかもしれない。

 ふと、ノア先生の顔が浮かんで聞きそうになったが今は止めておこう。それどころじゃないんだ。

 アイリスが部屋から出ていくと、通信用の魔導具を取り出す。

 通信相手は勿論ーーノア先生だ。

「……急に連絡してしまい、すみません」

 映像が映し出される。

 映っているノア先生は首を左右に振り、優しい口調で言う。

 〈何かありましたか?〉
「お元気そうで良かったです。シーアさんと話したいのですが、どうすれば良いのでしょう」
 〈気まぐれですからね。願いながら就寝すれば夢に出てきそうですが……〉
「夢、そうですよね。やりみます。……それとノア先生」
 〈はい?〉
「……あの時、生意気言ってしまい申し訳ありませんでした」

 私はアイリスを助けたい一心でノア先生に我儘を言ってしまった。
 後々、凄く後悔してしまった。

 〈あの時??〉
「アイリスの……侍女が悪口言っている現場に居合わせて、言い返そうとしたらノア先生が止めに入って……、私が心配になって先にアイリスの様子を見たいと言った時です」
 〈ああ、あの時。生意気だなんてとんでもない。寧ろ、ソフィア様の勇気ある行動で私の考えも改められました。感謝してますよ〉
「……でも」
 〈何かまた悩んでるようですが、聞いても良いですか?〉

 聞いてくれるのは嬉しい。けど、私は首を左右に振った。

 相談しても解決はしない。

「大丈夫です。ありがとうございます」

 通信魔導具からの映像が切れる。

 シーアさんは寝ると夢に出てくるかもしれないらしいけど……、今夜は眠れそうになさそうなんだよね。

 夜風にあたってよう。

 そう思い、薄着なのもあり、ケープを羽織って寮の外に出る。

 一人で出てきてしまったけど、寮の近くだろうし大丈夫だろうという安易な気持ちで寮付近のベンチに腰を下ろし、夜空を見上げる。

 空は青暗い中にも星が光り輝いていてとても綺麗だった。

 私にとって負の感情は……死を招く。だからこそ、心を強く持たせないといけない。

 わかってる。わかってるけど……。

「前世でも今世でも、ネガティブ思考はしてはいけないのね」

 前世では、ネガティブ思考はあったけど、言語化にしてしまったら心が壊れそうだったから傷つかないフリをずっとしてきた。その結果が現実から逃げることだったんだけど。

 今世は、ネガティブ思考になればなるほど闇に呑まれてしまう。闇に堕ちたら……私は死に、多くの人も亡くなるでしょうね。だからなるべく前向きに考えるように必死だった。

 ネガティブ発言はたまにしてたけど……、それでもやっぱり足りない。

 辛いと思ってしまったら、堪らなく泣きたい気持ちになってしまう。

 夜風にあたりながら、暗闇でも必死に光り輝いている星々を眺め、一粒の涙を流す。

 誰かにこの辛さを助けてほしいとは思わない。

 それでも……、

 私は自身を抱き締める。

 どうしてアレン様の顔が浮かぶのか、分からない。助けてって言ってしまいそうで怖くなる。

 それはあまりにも矛盾している感情で戸惑ってしまう。

「ソフィア嬢?」
「~~っ!!!?」

 背後から音も無く(正確には音も聞こえないほど考え事をしていて)近付いてきて、声をかけられた。

 今、一番会いたくて、会いたくない人がそこにいた。

「ア、アレン様」

 振り向き、名前を呼ぶとアレン様は困り顔になった。





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