91 / 200
1974ー2039 大村修一
46-(1/2)
しおりを挟む
相馬は結局、朝まで私の部屋にいた。私は年寄りなので早々に寝かせてもらったが、かなり遅くまで部屋に置いてあるイオンに関するデータをあさっていたようだ。
私が起きた時には、脱ぎ散らかした服もなくなっていた。服を脱いだ意味がわからない。
相馬はすぐに管理棟に呼び出されたらしい。昨夜の件の事情聴取か。私には何の連絡もないので、相馬が話をつけたのだろう。
相馬が派手に不調にさせた盗聴器や監視カメラは今日中に修理されるはずだ。私は日中にあえて研究棟を出て、研究施設の玄関口とも言える中央門まで散歩した。
敷地内であれば移動は自由だ。ただし、門外へ出るには相応の手続きとチェックが必要である。
機密を外部へ持ち出せば存在が消されるという噂がある。研究所には戸籍のない者もいると聞く。私が入社した頃に比べると段違いに情報統制は厳しくなっている。
外部から遮断された施設内で生きることを決意すれば、これほど快適な場所はない。私はそれを決めたひとりだ。相馬はどうだろう。
社会的自由と引き換えに最先端の研究が保証されるこの環境を喜んで受け入れたのだろうか。
中央門のすぐ脇には、小さな売店があった。外部からの搬入品の倉庫も兼ねている。その奥には食堂もある。敷地内外の接触を極力減らす工夫であろう。門にもその周辺にも警備員が常駐している。
ふらりと売店を覗いてみると普通のコンビニといった感じである。久しく菓子など食べていないと思い、商品棚を見てついキャラメルを手に取った。
博覧会で評判だといって、幼い頃に吉澤の家で食べた記憶がよみがえる。
一世紀半も昔になるのかと、急に懐かしくなって思わず買い求めた。
なぜ急に昔を思い出したのか。親子以上も年の離れた相馬と親しく話をしたせいだろうか。
昨夜相馬と妙な接触をしたことで、自分が年を取ったと実感させられた。この肉体は相応に老いてゆく。私には相馬ほどの活力は残っていない。
年を取らないイオンを長年見続けていて自分も若いつもりでいた。早川たちの年寄り扱いはどこか他人事のように感じていた。
だが、私は相馬に比べて明らかに気力も落ちている気がする。やはり精神は肉体に支配されているらしい。
研究棟に戻ると、相馬がイオンたちと話していた。
ただ談笑しているようにも見えるが、機械にとって雑談するほど難しいことはない。
変な間を置かずタイミング良く話し、複数人とでも分別認識して自然な表情を作る。特定の人間にだけ注意が向かないようにする。機械だというのに、気配りが欠かせないのだ。
イオンは自分から相手に声をかけて会話を続けるようにできており、また、自分から雑談を終了することさえある。
どこまでも人間らしく、人間と自然に接することができるアンドロイドになるべく彼らは調整されている。
相馬は話しながら詳細なデータを採取し、しばらく研究室にこもってまた出てくるを繰り返していた。
昨夜全裸ではしゃいでいたのと同一人物にはとても見えないな。
私が起きた時には、脱ぎ散らかした服もなくなっていた。服を脱いだ意味がわからない。
相馬はすぐに管理棟に呼び出されたらしい。昨夜の件の事情聴取か。私には何の連絡もないので、相馬が話をつけたのだろう。
相馬が派手に不調にさせた盗聴器や監視カメラは今日中に修理されるはずだ。私は日中にあえて研究棟を出て、研究施設の玄関口とも言える中央門まで散歩した。
敷地内であれば移動は自由だ。ただし、門外へ出るには相応の手続きとチェックが必要である。
機密を外部へ持ち出せば存在が消されるという噂がある。研究所には戸籍のない者もいると聞く。私が入社した頃に比べると段違いに情報統制は厳しくなっている。
外部から遮断された施設内で生きることを決意すれば、これほど快適な場所はない。私はそれを決めたひとりだ。相馬はどうだろう。
社会的自由と引き換えに最先端の研究が保証されるこの環境を喜んで受け入れたのだろうか。
中央門のすぐ脇には、小さな売店があった。外部からの搬入品の倉庫も兼ねている。その奥には食堂もある。敷地内外の接触を極力減らす工夫であろう。門にもその周辺にも警備員が常駐している。
ふらりと売店を覗いてみると普通のコンビニといった感じである。久しく菓子など食べていないと思い、商品棚を見てついキャラメルを手に取った。
博覧会で評判だといって、幼い頃に吉澤の家で食べた記憶がよみがえる。
一世紀半も昔になるのかと、急に懐かしくなって思わず買い求めた。
なぜ急に昔を思い出したのか。親子以上も年の離れた相馬と親しく話をしたせいだろうか。
昨夜相馬と妙な接触をしたことで、自分が年を取ったと実感させられた。この肉体は相応に老いてゆく。私には相馬ほどの活力は残っていない。
年を取らないイオンを長年見続けていて自分も若いつもりでいた。早川たちの年寄り扱いはどこか他人事のように感じていた。
だが、私は相馬に比べて明らかに気力も落ちている気がする。やはり精神は肉体に支配されているらしい。
研究棟に戻ると、相馬がイオンたちと話していた。
ただ談笑しているようにも見えるが、機械にとって雑談するほど難しいことはない。
変な間を置かずタイミング良く話し、複数人とでも分別認識して自然な表情を作る。特定の人間にだけ注意が向かないようにする。機械だというのに、気配りが欠かせないのだ。
イオンは自分から相手に声をかけて会話を続けるようにできており、また、自分から雑談を終了することさえある。
どこまでも人間らしく、人間と自然に接することができるアンドロイドになるべく彼らは調整されている。
相馬は話しながら詳細なデータを採取し、しばらく研究室にこもってまた出てくるを繰り返していた。
昨夜全裸ではしゃいでいたのと同一人物にはとても見えないな。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日当たりの良い借家には、花の精が憑いていました⁉︎
山碕田鶴
ライト文芸
大学生になった河西一郎が入居したボロ借家は、日当たり良好、広い庭、縁側が魅力だが、なぜか庭には黒衣のおかっぱ美少女と作業着姿の爽やかお兄さんたちが居ついていた。彼らを花の精だと説明する大家の孫、二宮誠。銀髪長身で綿毛タンポポのような超絶美形の青年は、花の精が現れた経緯を知っているようだが……。
(表紙絵/山碕田鶴)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる