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1974ー2039 大村修一
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「ねえ教授。身体的欲求を持たないイオンに、自発的感情なんて生まれるんですか?」
相馬が横からいきなり訊いた。
「人間の欲はほぼ肉体のなせる技。本能とは肉体の声。自分が生き残り、子孫を残す。それだけでしょう? その欲を快楽と呼ぶわけで、人間は快楽を求めて外界に反応する。機械のイオンには自己複製する必要も能力もないのだから、生存本能なんてない。イオンがいくら外界の刺激を受容しても快楽を動機に反応はしないでしょう」
のんびりとくつろいだ様子で話すが、内容は
手厳しい。
「そうだろうね。だが私は、イオンが時々見せる一瞬の仕草にどうしても違和感を覚えてしまったのだよ。これは君がNH社に入るだいぶ前の話だ。あくまでも私の勘だから、君が見れば想定範囲内の行動だと言うかもしれない。ただし今は五感センサーを最低レベルにしてあるから、イオンはただの洗脳された奴隷状態だ」
「もしイオンに自我があったとしても、僕には教授が作る感情表現とイオンの本音の区別なんてできませんよ。今のイオンでさえ、本当に生きているように見える。僕は会話に整合性を持たせる点に集中して他のことは考えないようにしているけれど、正直イオンが怖い。これは機械なんだと自分に言い聞かせていないと怖い」
「そうか」
「イオンに自発的感情が生まれるかもしれないという仮説は面白いしすごく興味がありますが、僕は自我が生まれない派です。僕、頭が固いのかなあ。怖いから認めたくない。だから自我否定の理由を考えてみます。まず、機械は命令されれば抵抗せずに自分でシャットダウンする。それこそ生存本能がない証拠です。極端な話、アンドロイドが勝手に戦争を始めて人間を殺すことはありえない。人間と違って他者を排除する行動は生まれないし、自分から戦う発想は出ない。これは平和主義ではなくて単に生存本能がないからですよ。生存本能がないイコール自我がない。どうです?」
「確かに勝手に戦争を始めることはないだろうね。だが、洗脳された奴隷であるアンドロイドは人間の命令で躊躇なく戦争に加担する。アンドロイドの行動の判断基準は『命令する人間の喜ぶことをする』と設定されているから罪悪感もない。世の中の多くの人間が、いつの日かアンドロイドが意思を持って人間を支配するかもしれないと想像して怯える理由はそれだな。本当に怖いのはアンドロイドを操る人間だろうに」
「教授……僕たちってやっぱりロボット兵士の原型を作っているんですかね? ドローンとどっちが怖いかなあ。昔観たアニメにアンドロイド部隊の反乱みたいなのがあって、実はちょっとトラウマなんですよ」
「心配するな。NH社の社是はHCD、人間中心設計、機械は人間のためにある、だ」
「いや、そうですけどそんなキレイゴトを……」
相馬は頭を抱えたまま布団に顔をうずめた。
「おいおい、そんなに埋まると窒息するぞ」
私は目の前でうんうんうなる相馬が面白くなってきた。頭はキレるのに未だアニメがトラウマとは、ずいぶんと子供だな。
私はイオンを「魂の器」として使う際にイオンの心を殺す可能性を懸念しているだけだ。イオンの生存本能の有無など問題にしていないし、アンドロイドの軍事利用など今さらだろう。NH社の裏部門は、実質的に軍需企業なのだから。
この国は表面的に平和だが、武器を持たずに戦う者が大勢うごめいている。かつての私や第二部が担っていたような諜報の類を現代ではNH社、BS社の技術が担っている。
世界を見れば、暗殺やピンポイント攻撃といった武力行使はロボット技術が支えているのだ。ドローンでも入り込めない寝室の奥に人間のふりをした自爆装置がセキュリティをパスして自らの足で堂々と侵入し、ターゲットに抱擁で迎えられる悪夢は遠い未来の話ではない。
アンドロイドの職域は広がる一方で、両社は成長産業の筆頭として暗中飛躍している。
だが、この研究施設にいる限り技術開発が軍事に直結する現実味はない。頭では理解していても、どこか別世界の出来事だ。
NH社は研究者をあえて現実から遠ざけている。惨状から隔離して後ろめたさや良心の呵責を剥がし、どこまでも残酷な技術をそれと知らず生み出させるのだろう。
私はその是非を論じるつもりはない。
戦争を知らないのは幸せなことだ。それだけでも相馬は幸運な人間だ。吉澤識が生きた時代とは違う。お前は好きな研究に没頭できる今を素直に喜べばいい。私は今のお前の年まで生きることさえできなかった……。
相馬を見ながらふと考えて、自分で苦笑した。
私はまだ生きているではないか。
相馬が復活してこちらを向いた。
「イオンに自発的感情が生まれたら、人間の命令なんて聞きませんよね? 教授は、彼らが人間を力で支配し始めるとお考えですか? それとも、いきなり悟りを開いて救世主やら神様みたいな存在になって、人類に平和を説教し始めたりするんですか?」
「それもアニメのトラウマか? ロボットアニメを観て育った子供が大人になってロボットを作っているのだから、これも立派な洗脳だな。イオンが全人類を支配するメリットは何だ? 教えてくれ、私が聞きたい。それに、神はこの世の人間のやることに干渉はしないよ」
「はあ。なんだか神様と知り合いみたいな口ぶりですね」
「知り合いだからな」
「へ⁉︎」
「相馬君は確かに頭が固いようだな」
「……教授は何がしたいんですか? 機械に自我が生まれる可能性を調べるのは、アンドロイドの不規則行動による事故防止のためにアリですよ。でもなんだかこれ、どうしても核心の目的が見えてこないんですよ。機械の不規則行動をわざわざ自我と定義する意味がありますか? ここは心理学の研究所ではないのだから、ただのバグとして改善処理すれば終わりでしょう? 人間が違和感なく一緒に生活できるロボットなら自我なんて必要ないし、擬似的な個性を育てて楽しむなら既に愛玩用動物ロボットなんかが出回っている。スパイとかハニートラップ用だって、本物の感情は要らない。純粋な知的好奇心だとしても、アンドロイドを人間に近づけ過ぎると後で処分に困りますよ。新しい人類を本気で作る? いや、違うなあ。面白そうではあるけれど、一度踏み込んだら戻れない。それでも自我の有無を確認する意義ってなんだ? 必要性ってなんだ?」
相馬はかすれるほどの小声で話し続ける。彼は常に理詰めで答えを導き出す。行動はともかく、研究に関してはかなり常識人だ。
「根本的に見方が違うはずなんだ。あー、なんだろう? 教授の意図がわからない。うわあ、僕頭悪いなぁ」
頭を掻きむしりながら、相馬は狭いベッドの上を転がり回った。温厚だが、本来勝ち気な性格で謎が解けないことがかなり悔しいのだろう。何度か私にぶつかってきた後、私にピタリとくっついて離れなくなった。
「どうしよう」
「どうした?」
「教授が好き過ぎて頭が沸きました。今すぐ押し倒したい」
「相馬君は頭のネジが飛んでいるだけでなく、配線もおかしいようだな。だいたい、既に押し倒されている」
「うわ、すみません」
相馬は私の上から飛び退くと、また計画書に没頭した。
私が「魂の器」を完成させるためにやっている研究計画だ。お前がどれほど優秀でも、きっと答えにはたどり着けない。
計画書にはNH社の利益に直結する軍事用途をそれらしくあれこれ並べて、目くらましもしてある。それでも相馬は、この研究がNH社には相応しくないと感じたようだ。
もっと盛大に目的を偽って周囲を欺き、堂々と実験ができるよう書き直すべきか。
私は正直焦っていた。
はっきりと感じるのだ。私にはもう時間が残されていない。
これはきっと肉体の声だ。衰える肉体に縛られる心に、日々寂しさが募っていく。
大村の寿命が近づいている。
相馬が横からいきなり訊いた。
「人間の欲はほぼ肉体のなせる技。本能とは肉体の声。自分が生き残り、子孫を残す。それだけでしょう? その欲を快楽と呼ぶわけで、人間は快楽を求めて外界に反応する。機械のイオンには自己複製する必要も能力もないのだから、生存本能なんてない。イオンがいくら外界の刺激を受容しても快楽を動機に反応はしないでしょう」
のんびりとくつろいだ様子で話すが、内容は
手厳しい。
「そうだろうね。だが私は、イオンが時々見せる一瞬の仕草にどうしても違和感を覚えてしまったのだよ。これは君がNH社に入るだいぶ前の話だ。あくまでも私の勘だから、君が見れば想定範囲内の行動だと言うかもしれない。ただし今は五感センサーを最低レベルにしてあるから、イオンはただの洗脳された奴隷状態だ」
「もしイオンに自我があったとしても、僕には教授が作る感情表現とイオンの本音の区別なんてできませんよ。今のイオンでさえ、本当に生きているように見える。僕は会話に整合性を持たせる点に集中して他のことは考えないようにしているけれど、正直イオンが怖い。これは機械なんだと自分に言い聞かせていないと怖い」
「そうか」
「イオンに自発的感情が生まれるかもしれないという仮説は面白いしすごく興味がありますが、僕は自我が生まれない派です。僕、頭が固いのかなあ。怖いから認めたくない。だから自我否定の理由を考えてみます。まず、機械は命令されれば抵抗せずに自分でシャットダウンする。それこそ生存本能がない証拠です。極端な話、アンドロイドが勝手に戦争を始めて人間を殺すことはありえない。人間と違って他者を排除する行動は生まれないし、自分から戦う発想は出ない。これは平和主義ではなくて単に生存本能がないからですよ。生存本能がないイコール自我がない。どうです?」
「確かに勝手に戦争を始めることはないだろうね。だが、洗脳された奴隷であるアンドロイドは人間の命令で躊躇なく戦争に加担する。アンドロイドの行動の判断基準は『命令する人間の喜ぶことをする』と設定されているから罪悪感もない。世の中の多くの人間が、いつの日かアンドロイドが意思を持って人間を支配するかもしれないと想像して怯える理由はそれだな。本当に怖いのはアンドロイドを操る人間だろうに」
「教授……僕たちってやっぱりロボット兵士の原型を作っているんですかね? ドローンとどっちが怖いかなあ。昔観たアニメにアンドロイド部隊の反乱みたいなのがあって、実はちょっとトラウマなんですよ」
「心配するな。NH社の社是はHCD、人間中心設計、機械は人間のためにある、だ」
「いや、そうですけどそんなキレイゴトを……」
相馬は頭を抱えたまま布団に顔をうずめた。
「おいおい、そんなに埋まると窒息するぞ」
私は目の前でうんうんうなる相馬が面白くなってきた。頭はキレるのに未だアニメがトラウマとは、ずいぶんと子供だな。
私はイオンを「魂の器」として使う際にイオンの心を殺す可能性を懸念しているだけだ。イオンの生存本能の有無など問題にしていないし、アンドロイドの軍事利用など今さらだろう。NH社の裏部門は、実質的に軍需企業なのだから。
この国は表面的に平和だが、武器を持たずに戦う者が大勢うごめいている。かつての私や第二部が担っていたような諜報の類を現代ではNH社、BS社の技術が担っている。
世界を見れば、暗殺やピンポイント攻撃といった武力行使はロボット技術が支えているのだ。ドローンでも入り込めない寝室の奥に人間のふりをした自爆装置がセキュリティをパスして自らの足で堂々と侵入し、ターゲットに抱擁で迎えられる悪夢は遠い未来の話ではない。
アンドロイドの職域は広がる一方で、両社は成長産業の筆頭として暗中飛躍している。
だが、この研究施設にいる限り技術開発が軍事に直結する現実味はない。頭では理解していても、どこか別世界の出来事だ。
NH社は研究者をあえて現実から遠ざけている。惨状から隔離して後ろめたさや良心の呵責を剥がし、どこまでも残酷な技術をそれと知らず生み出させるのだろう。
私はその是非を論じるつもりはない。
戦争を知らないのは幸せなことだ。それだけでも相馬は幸運な人間だ。吉澤識が生きた時代とは違う。お前は好きな研究に没頭できる今を素直に喜べばいい。私は今のお前の年まで生きることさえできなかった……。
相馬を見ながらふと考えて、自分で苦笑した。
私はまだ生きているではないか。
相馬が復活してこちらを向いた。
「イオンに自発的感情が生まれたら、人間の命令なんて聞きませんよね? 教授は、彼らが人間を力で支配し始めるとお考えですか? それとも、いきなり悟りを開いて救世主やら神様みたいな存在になって、人類に平和を説教し始めたりするんですか?」
「それもアニメのトラウマか? ロボットアニメを観て育った子供が大人になってロボットを作っているのだから、これも立派な洗脳だな。イオンが全人類を支配するメリットは何だ? 教えてくれ、私が聞きたい。それに、神はこの世の人間のやることに干渉はしないよ」
「はあ。なんだか神様と知り合いみたいな口ぶりですね」
「知り合いだからな」
「へ⁉︎」
「相馬君は確かに頭が固いようだな」
「……教授は何がしたいんですか? 機械に自我が生まれる可能性を調べるのは、アンドロイドの不規則行動による事故防止のためにアリですよ。でもなんだかこれ、どうしても核心の目的が見えてこないんですよ。機械の不規則行動をわざわざ自我と定義する意味がありますか? ここは心理学の研究所ではないのだから、ただのバグとして改善処理すれば終わりでしょう? 人間が違和感なく一緒に生活できるロボットなら自我なんて必要ないし、擬似的な個性を育てて楽しむなら既に愛玩用動物ロボットなんかが出回っている。スパイとかハニートラップ用だって、本物の感情は要らない。純粋な知的好奇心だとしても、アンドロイドを人間に近づけ過ぎると後で処分に困りますよ。新しい人類を本気で作る? いや、違うなあ。面白そうではあるけれど、一度踏み込んだら戻れない。それでも自我の有無を確認する意義ってなんだ? 必要性ってなんだ?」
相馬はかすれるほどの小声で話し続ける。彼は常に理詰めで答えを導き出す。行動はともかく、研究に関してはかなり常識人だ。
「根本的に見方が違うはずなんだ。あー、なんだろう? 教授の意図がわからない。うわあ、僕頭悪いなぁ」
頭を掻きむしりながら、相馬は狭いベッドの上を転がり回った。温厚だが、本来勝ち気な性格で謎が解けないことがかなり悔しいのだろう。何度か私にぶつかってきた後、私にピタリとくっついて離れなくなった。
「どうしよう」
「どうした?」
「教授が好き過ぎて頭が沸きました。今すぐ押し倒したい」
「相馬君は頭のネジが飛んでいるだけでなく、配線もおかしいようだな。だいたい、既に押し倒されている」
「うわ、すみません」
相馬は私の上から飛び退くと、また計画書に没頭した。
私が「魂の器」を完成させるためにやっている研究計画だ。お前がどれほど優秀でも、きっと答えにはたどり着けない。
計画書にはNH社の利益に直結する軍事用途をそれらしくあれこれ並べて、目くらましもしてある。それでも相馬は、この研究がNH社には相応しくないと感じたようだ。
もっと盛大に目的を偽って周囲を欺き、堂々と実験ができるよう書き直すべきか。
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