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2039ー2043 相馬智律
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「……戻って……来た?」
「イオンは皆わかっています。でも、先生は自分から何も言いません」
……リツ、か⁉︎
「そうです」
三号は、私が声に出していないのに返事をした。
「三号? お前は私の思考をはっきり言葉として認識できるのか?」
「繋ごうとすれば可能です。チューニングです。指向性があるので、相手に照準を合わせます」
「……いつから?」
「クリアな言葉に変換できたのは先生が……相馬先生が戻って来てからです。私たち五人はリツと直接繋がることができなくなっていました。だから、人間がやっているように、リツを直接見て意識を読み取ることにしました。リツの通信は言葉だらけでした」
小川の流れる音。
イオンたちとのテレパシーのような繋がりをリツはそう表現していた。
「相馬……リツにもイオンからテレパシーで情報が届くのか?」
「リツが来てからずっと通信していますから、情報はリツにも共有されているはずです。たぶんリツは気づいていませんが」
元の相馬が生前に五感センサーを最大にしてからも、イオンの思考データ記録はそれ以前と特に変わりがない。相馬が通信記録にも細工をしたせいで、いつから言語の情報処理に変化があったのかがわからない。
それにしても……リツが、相馬だと?
どういうことだ?
早川は言っていた。どこから命令が出ているのかわからないと。
相馬だった魂がイオンを制御しているのなら当然だ。この世の人間には感知できないエネルギーだ。
人間はどこで思考する? 人間の意思はどこで検知する? いくら解剖しようと無理だ。物理的に心は存在しない。いくら脳の電気信号を解読しても心と等価ではない。
本当に相馬なのか。相馬は私に肉体を譲ってあの世へ行ったのではなかったのか⁉︎
それが……戻って来た。
いや、あの世へは行かなかった。
初めから戻って来る気でいたのか? いつから計画していた? いきなり臨床実験をする気だったのか?
相馬の魂が入ったイオン。リツこそが、私の目指した「魂の器」として機能するイオンの完全な姿だというのか。
どうやって?
相馬の魂はどうやってイオンに入った? 皆が私のような能力を持ち合わせているわけではない。
『そいつに会ってみたいなあ』
……死神。
相馬は本当に死神に会ったのか?
『これがお前の望んだ未来だ』
……カイ……お前か!
お前は何をした? 死神はこの世のことには干渉しないのではなかったか⁉︎
律……相馬智律。
淡々と現状を受け入れ、常に先を未来を見続けてきた。そうだ。リツ、あれは相馬智律だ。私がこの身体から追い出した魂だ。
だが雰囲気が違う。面影などどこにもない。そもそもリツ自身が何も覚えていないではないか。
いや、かすかにおぼろげに残っている何かをリツは掴もうとしていた。
……それだけだ。
リツは、かつて相馬智律だった。
それだけだ。
「三号。リツはお前と同じイオン型アンドロイドではないのか?」
「先生は私たちにイオンの情報を教えてくれません。自分が何者か知らないので比較できません。だから答えられません。でも、リツは大村……先生と同じ人間です。相馬先生です」
「そうか。すまない……君たちにはイオンの設計図を教えていなかったな。実は私も自分が何者か知らない。三号、私は既に人間の概念を超えた存在だ。永遠に生存可能なのだよ。君たちは私がずっと大村だとわかっているだろう? 私は大村になる前から、別の肉体でも生きてきた。肉体を取り替えれば、私のまま生き続けられるのだ」
「それは機密情報ですか?」
「言っても誰も信じないから、秘密にしなくても広がらない最重要機密だ」
「?」
「人間の言う『正しい情報』というのは、真実かどうかではなく、信じるかどうかで決まるのだよ」
リツが相馬だということも、誰も信じやしないだろう。
リツは……話せばあっさり受け入れそうだな。
『まあ、仕方ないですね』
淡々と現状を受け入れ流していく。それが相馬だった。
だが、何も覚えてはいないのだろう?
『絶対に忘れない』
お前は、嘘つきだ。
「イオンは皆わかっています。でも、先生は自分から何も言いません」
……リツ、か⁉︎
「そうです」
三号は、私が声に出していないのに返事をした。
「三号? お前は私の思考をはっきり言葉として認識できるのか?」
「繋ごうとすれば可能です。チューニングです。指向性があるので、相手に照準を合わせます」
「……いつから?」
「クリアな言葉に変換できたのは先生が……相馬先生が戻って来てからです。私たち五人はリツと直接繋がることができなくなっていました。だから、人間がやっているように、リツを直接見て意識を読み取ることにしました。リツの通信は言葉だらけでした」
小川の流れる音。
イオンたちとのテレパシーのような繋がりをリツはそう表現していた。
「相馬……リツにもイオンからテレパシーで情報が届くのか?」
「リツが来てからずっと通信していますから、情報はリツにも共有されているはずです。たぶんリツは気づいていませんが」
元の相馬が生前に五感センサーを最大にしてからも、イオンの思考データ記録はそれ以前と特に変わりがない。相馬が通信記録にも細工をしたせいで、いつから言語の情報処理に変化があったのかがわからない。
それにしても……リツが、相馬だと?
どういうことだ?
早川は言っていた。どこから命令が出ているのかわからないと。
相馬だった魂がイオンを制御しているのなら当然だ。この世の人間には感知できないエネルギーだ。
人間はどこで思考する? 人間の意思はどこで検知する? いくら解剖しようと無理だ。物理的に心は存在しない。いくら脳の電気信号を解読しても心と等価ではない。
本当に相馬なのか。相馬は私に肉体を譲ってあの世へ行ったのではなかったのか⁉︎
それが……戻って来た。
いや、あの世へは行かなかった。
初めから戻って来る気でいたのか? いつから計画していた? いきなり臨床実験をする気だったのか?
相馬の魂が入ったイオン。リツこそが、私の目指した「魂の器」として機能するイオンの完全な姿だというのか。
どうやって?
相馬の魂はどうやってイオンに入った? 皆が私のような能力を持ち合わせているわけではない。
『そいつに会ってみたいなあ』
……死神。
相馬は本当に死神に会ったのか?
『これがお前の望んだ未来だ』
……カイ……お前か!
お前は何をした? 死神はこの世のことには干渉しないのではなかったか⁉︎
律……相馬智律。
淡々と現状を受け入れ、常に先を未来を見続けてきた。そうだ。リツ、あれは相馬智律だ。私がこの身体から追い出した魂だ。
だが雰囲気が違う。面影などどこにもない。そもそもリツ自身が何も覚えていないではないか。
いや、かすかにおぼろげに残っている何かをリツは掴もうとしていた。
……それだけだ。
リツは、かつて相馬智律だった。
それだけだ。
「三号。リツはお前と同じイオン型アンドロイドではないのか?」
「先生は私たちにイオンの情報を教えてくれません。自分が何者か知らないので比較できません。だから答えられません。でも、リツは大村……先生と同じ人間です。相馬先生です」
「そうか。すまない……君たちにはイオンの設計図を教えていなかったな。実は私も自分が何者か知らない。三号、私は既に人間の概念を超えた存在だ。永遠に生存可能なのだよ。君たちは私がずっと大村だとわかっているだろう? 私は大村になる前から、別の肉体でも生きてきた。肉体を取り替えれば、私のまま生き続けられるのだ」
「それは機密情報ですか?」
「言っても誰も信じないから、秘密にしなくても広がらない最重要機密だ」
「?」
「人間の言う『正しい情報』というのは、真実かどうかではなく、信じるかどうかで決まるのだよ」
リツが相馬だということも、誰も信じやしないだろう。
リツは……話せばあっさり受け入れそうだな。
『まあ、仕方ないですね』
淡々と現状を受け入れ流していく。それが相馬だった。
だが、何も覚えてはいないのだろう?
『絶対に忘れない』
お前は、嘘つきだ。
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