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2043ー2057 高瀬邦彦
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高瀬の意識の空間は、何もなくただ明るい。天の向こうは見えない。明るい壁の向こうは見えない。
カイ……。
私はここから出られないのか? 高瀬が死ぬまで亡霊として高瀬に取り憑くことになるのか?
相馬はイオンに入れたではないか。ここから出ることさえできれば、私もイオンに移れるはずだったのだ。
なぜできない?
私は例外の規則違反者ではなかったのか⁉︎
ガッ
伏したままの私を蹴り転がして仰向けにした高瀬は、無表情に私を見下ろした。
ぼんやりと見返す私と目が合うと同時に、高瀬は手を伸ばして私の首を押さえつけてきた。
「あがっ……はっ……はあっ……」
……本当の肉体がなくても、苦しいな……
「抵抗しないのか?」
私を睨む高瀬の顔が近づく。朦朧とする意識の中で、絶え絶えに漏れる吐息まで強引に塞がれながら、この苦しみが永遠に続こうとも肉体を持たない私に死は訪れないことを笑った。
「何がおかしい? 堕落の極みだな」
高瀬は、かすれる笑いを罵声で塞いだ。
「やめ……ろ……離せ……」
手を伸ばせばその手を引き戻され、這って逃れようとすれば痕がつくほど押さえつけられ、執拗にエネルギーを奪われる苦痛に溢れる涙さえも剥ぎ取られて憔悴する私を高瀬は笑った。
私が希薄になっていく。だが、お前は全てを奪い尽くさない。放り出されて再び満ちる間もなく、さらに激しく奪い取る。
こんな牢獄にいたら、気が狂いそうだ。
カイ……私がここから出る方法はないのか? このまま全て奪われて消えるしかないのか?
カイ……。
その名は魂に刻まれている。私はその名しか望まない。
ただ欲しい。死神だけが与える苦痛と恐怖の恍惚を私は欲している。
「何を考えている?」
私の顔を掴んで尋問する高瀬にも憔悴の色が浮かぶ。
そうだ。お前こそいい迷惑だな。
出て行くはずの私は未だここにいる。
イオンに魂を移す機会をわざわざ作ってくれたというのに、私はそれに応えられなかった。
「シキ、あなたは私を殺そうと思わないのか?」
私を見つめる瞳には怖れがはっきりと表れていた。
「あなたは私の魂とやらを追い出して肉体を奪えるのだろう? 私に成り代わって生きられるのだろう?」
高瀬は答えを待たず私から離れると、倒れるように床に仰向けになって目を閉じた。
高瀬は私以上に絶望している。自分に取り憑く得体の知れない存在に本能的な恐怖を抱いている。
お前こそ、奪いつくせば私を消滅させられるかもしれないぞ。
なぜ、やらない?
わずかに動く力さえ残っていないというのに、考えることだけはできる自分が恨めしかった。
きっともうだいぶ以前から、私の輪郭はぼやけていたのだ。
この身体から抜け出す力が、私にはもはやないのか……?
カイ……。
私はここから出られないのか? 高瀬が死ぬまで亡霊として高瀬に取り憑くことになるのか?
相馬はイオンに入れたではないか。ここから出ることさえできれば、私もイオンに移れるはずだったのだ。
なぜできない?
私は例外の規則違反者ではなかったのか⁉︎
ガッ
伏したままの私を蹴り転がして仰向けにした高瀬は、無表情に私を見下ろした。
ぼんやりと見返す私と目が合うと同時に、高瀬は手を伸ばして私の首を押さえつけてきた。
「あがっ……はっ……はあっ……」
……本当の肉体がなくても、苦しいな……
「抵抗しないのか?」
私を睨む高瀬の顔が近づく。朦朧とする意識の中で、絶え絶えに漏れる吐息まで強引に塞がれながら、この苦しみが永遠に続こうとも肉体を持たない私に死は訪れないことを笑った。
「何がおかしい? 堕落の極みだな」
高瀬は、かすれる笑いを罵声で塞いだ。
「やめ……ろ……離せ……」
手を伸ばせばその手を引き戻され、這って逃れようとすれば痕がつくほど押さえつけられ、執拗にエネルギーを奪われる苦痛に溢れる涙さえも剥ぎ取られて憔悴する私を高瀬は笑った。
私が希薄になっていく。だが、お前は全てを奪い尽くさない。放り出されて再び満ちる間もなく、さらに激しく奪い取る。
こんな牢獄にいたら、気が狂いそうだ。
カイ……私がここから出る方法はないのか? このまま全て奪われて消えるしかないのか?
カイ……。
その名は魂に刻まれている。私はその名しか望まない。
ただ欲しい。死神だけが与える苦痛と恐怖の恍惚を私は欲している。
「何を考えている?」
私の顔を掴んで尋問する高瀬にも憔悴の色が浮かぶ。
そうだ。お前こそいい迷惑だな。
出て行くはずの私は未だここにいる。
イオンに魂を移す機会をわざわざ作ってくれたというのに、私はそれに応えられなかった。
「シキ、あなたは私を殺そうと思わないのか?」
私を見つめる瞳には怖れがはっきりと表れていた。
「あなたは私の魂とやらを追い出して肉体を奪えるのだろう? 私に成り代わって生きられるのだろう?」
高瀬は答えを待たず私から離れると、倒れるように床に仰向けになって目を閉じた。
高瀬は私以上に絶望している。自分に取り憑く得体の知れない存在に本能的な恐怖を抱いている。
お前こそ、奪いつくせば私を消滅させられるかもしれないぞ。
なぜ、やらない?
わずかに動く力さえ残っていないというのに、考えることだけはできる自分が恨めしかった。
きっともうだいぶ以前から、私の輪郭はぼやけていたのだ。
この身体から抜け出す力が、私にはもはやないのか……?
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