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第三話
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僕は外に出た。そして校舎の周りをまわっていった。
学校は人もたくさんいるから事件には事欠かないから退屈しないはずだ。そのうえいろいろな道具もあるし、遊ぶのには絶好の場所ともいえる。鶏やウサギも飼育しているから夜にあれらと遊んでいることもある。たくさんの妖精がこの学校にいるに違いない。
歩いているうちに木の実のなった木を見つけた。その下にはちょうど隠れられそうなぐらいに草が茂っている。
こちらから見えないか、茂みを透かすようにして見てみた。
「どうしたの、片山君?」
谷崎先輩が訊いた。
「ちょっと、静かにしてください」
僕は言った。
すかして見ると、茂みの先に赤いものが見えた。ちょくちょく動いている。生きている。
その妖精は赤い帽子をかぶっていた。僕はそれが赤帽子という妖精であるとわかった。その帽子は血で汚れて、汚れが落ち切る前にまた誰かしらの血を浴びるためにずっと帽子が赤いのだ。
こいつは気性がひどく荒い。妖精の中でも恐ろしく危険で、ナイフを持っている。運が悪ければ襲い掛かられて傷を負うこともあるし、最悪殺されるかもしれない。
こちらを警戒していないようだ。多分、木になっていた木の実を食べるのに夢中なのだ。
「いる?」
「います」
僕は答えた。
それと同時にちゃりん、という音がした。
「ははっ、間抜けな妖精もいたもんだ。あんなわかりやすいところに宝を隠しておくなんて」
山口先輩はそういってまたちゃりんと小銭を落とした。
「やめてください!」
僕は怒鳴った。
山口先輩が手を止めた。
茂みが動いた。妖精が飛び出す。妖精は銀色に光るものを握っていた。
僕は妖精を手でたたきつけた。妖精が地面にたたきつけられる。
「逃げてください!」
僕が怒鳴ると、全員が一斉にかけだした。
後ろを見ると、赤帽子が追ってきている。
「山口先輩、小銭を捨ててください!」
「えっ」
「それ捨てないと、どこまでも追いかけてきます」
「ああん、もう!」
小銭がばらばらと落ちる。それに赤帽子が飛びついた。
それを見届けると、僕は後ろには目もくれず走り続けた。
昇降口まで来て、僕は後ろを見た。
「追ってきていないか?」
谷崎先輩が訊く。
「はい」
僕は答えた。
僕らは昇降口から登って部室へといったん帰った。
「まあ、ちょっと危ないところだったけど。過ぎたことだし、誰も怪我しなかったし良しとしようか」
谷崎先輩が言った。
僕はうなずいた。一刻も早くこの場を治めてしまいたかった。
「ごめん皆」
山口先輩が頭を下げた。
「私が勝手なことしちゃったからあんなことになっちゃって。全部私の責任だ。謝るよ」
山口先輩の謝罪を聞いていると、後悔の気持ちが伝わってきた。そしてまた、自分だけが何もしなかったかのように座っているままでいるのが後ろめたくなってきた。
「いいです。僕も危険な目に合わせちゃってすいませんでした」
僕も頭を下げた。
「ううん、片山君は悪くないよ。私が悪かった」
「もういいじゃないか。自分が悪かったって認めて、そのうえ謝ったわけだし。君は実に正しい償い方をした。みんなももう、許してくれるよ」
「そうかな」
「僕はまあ、許せる立場かどうかわからないですけど許します」
僕は言った。
ほかの人たちも口々に許しの言葉をかけてくれた。
「悪かったね」
山口先輩は許しの言葉を聞いて、そう言った。
「さて、妖精を見ることもできたことだし、片山君」
「はい」
「入部してくれるね?」
「なんでですか?」
「え?」
「え?」
僕はどうしてこの部に入部するのだろうか。
妖精の話をせがまれたからして、笑われて、さらには危ない目に遭った。ついさっきまでは入部するだけで何もしなくてもいいなら別にいいとは思っていた。けれどもいざかかわりあってこういう目に遭ってみると、どうにも気が引ける。入部しているだけで今後も何かと迷惑をかけられるのではないかと思えてきた。
「ついさっきは入ってくれるって」
「いやでもよく考えてみたら、部活は一本に絞って絵に集中したほうがいいかと思いまして」
「そんな」
「ちょっと待って。うちの部に入るのも、そんなマイナスなことばかりじゃないよ」
御坂先輩は言った。
「例えば絵の題材なんかでさ、幻想上の生物なんかかくときにいい資料を紹介してあげられるかも。片山君一人だと、図書室や図書館に行って片っ端からあたっていかないといけないかもしれないけど、私たちならもう大抵のものは見つくしちゃってるし、いいものを紹介できると思うの。ほら、これなんかどう?」
御坂先輩はそういってカバンから一冊の画集を出した。それを僕に渡す。
それは主に吸血鬼や魔女といったものの西洋画であった。どれもこれも魅力的な絵だった。
ことに吸血鬼や魔女など日常に生で見ることはないから、こうした資料は欠かせない。この魅力的な資料は僕にとって必要不可欠ともいえた。
「これは、よく探し当てましたね」
「ほかにもあるけど、必要ならそろえるから、ね?」
「ああ、なるほど。わかりました。入部します」
「じゃあ、さっそくこれに書いて」
谷崎先輩は言った。
僕は入部届にに民俗学研究部と書いた。
学校は人もたくさんいるから事件には事欠かないから退屈しないはずだ。そのうえいろいろな道具もあるし、遊ぶのには絶好の場所ともいえる。鶏やウサギも飼育しているから夜にあれらと遊んでいることもある。たくさんの妖精がこの学校にいるに違いない。
歩いているうちに木の実のなった木を見つけた。その下にはちょうど隠れられそうなぐらいに草が茂っている。
こちらから見えないか、茂みを透かすようにして見てみた。
「どうしたの、片山君?」
谷崎先輩が訊いた。
「ちょっと、静かにしてください」
僕は言った。
すかして見ると、茂みの先に赤いものが見えた。ちょくちょく動いている。生きている。
その妖精は赤い帽子をかぶっていた。僕はそれが赤帽子という妖精であるとわかった。その帽子は血で汚れて、汚れが落ち切る前にまた誰かしらの血を浴びるためにずっと帽子が赤いのだ。
こいつは気性がひどく荒い。妖精の中でも恐ろしく危険で、ナイフを持っている。運が悪ければ襲い掛かられて傷を負うこともあるし、最悪殺されるかもしれない。
こちらを警戒していないようだ。多分、木になっていた木の実を食べるのに夢中なのだ。
「いる?」
「います」
僕は答えた。
それと同時にちゃりん、という音がした。
「ははっ、間抜けな妖精もいたもんだ。あんなわかりやすいところに宝を隠しておくなんて」
山口先輩はそういってまたちゃりんと小銭を落とした。
「やめてください!」
僕は怒鳴った。
山口先輩が手を止めた。
茂みが動いた。妖精が飛び出す。妖精は銀色に光るものを握っていた。
僕は妖精を手でたたきつけた。妖精が地面にたたきつけられる。
「逃げてください!」
僕が怒鳴ると、全員が一斉にかけだした。
後ろを見ると、赤帽子が追ってきている。
「山口先輩、小銭を捨ててください!」
「えっ」
「それ捨てないと、どこまでも追いかけてきます」
「ああん、もう!」
小銭がばらばらと落ちる。それに赤帽子が飛びついた。
それを見届けると、僕は後ろには目もくれず走り続けた。
昇降口まで来て、僕は後ろを見た。
「追ってきていないか?」
谷崎先輩が訊く。
「はい」
僕は答えた。
僕らは昇降口から登って部室へといったん帰った。
「まあ、ちょっと危ないところだったけど。過ぎたことだし、誰も怪我しなかったし良しとしようか」
谷崎先輩が言った。
僕はうなずいた。一刻も早くこの場を治めてしまいたかった。
「ごめん皆」
山口先輩が頭を下げた。
「私が勝手なことしちゃったからあんなことになっちゃって。全部私の責任だ。謝るよ」
山口先輩の謝罪を聞いていると、後悔の気持ちが伝わってきた。そしてまた、自分だけが何もしなかったかのように座っているままでいるのが後ろめたくなってきた。
「いいです。僕も危険な目に合わせちゃってすいませんでした」
僕も頭を下げた。
「ううん、片山君は悪くないよ。私が悪かった」
「もういいじゃないか。自分が悪かったって認めて、そのうえ謝ったわけだし。君は実に正しい償い方をした。みんなももう、許してくれるよ」
「そうかな」
「僕はまあ、許せる立場かどうかわからないですけど許します」
僕は言った。
ほかの人たちも口々に許しの言葉をかけてくれた。
「悪かったね」
山口先輩は許しの言葉を聞いて、そう言った。
「さて、妖精を見ることもできたことだし、片山君」
「はい」
「入部してくれるね?」
「なんでですか?」
「え?」
「え?」
僕はどうしてこの部に入部するのだろうか。
妖精の話をせがまれたからして、笑われて、さらには危ない目に遭った。ついさっきまでは入部するだけで何もしなくてもいいなら別にいいとは思っていた。けれどもいざかかわりあってこういう目に遭ってみると、どうにも気が引ける。入部しているだけで今後も何かと迷惑をかけられるのではないかと思えてきた。
「ついさっきは入ってくれるって」
「いやでもよく考えてみたら、部活は一本に絞って絵に集中したほうがいいかと思いまして」
「そんな」
「ちょっと待って。うちの部に入るのも、そんなマイナスなことばかりじゃないよ」
御坂先輩は言った。
「例えば絵の題材なんかでさ、幻想上の生物なんかかくときにいい資料を紹介してあげられるかも。片山君一人だと、図書室や図書館に行って片っ端からあたっていかないといけないかもしれないけど、私たちならもう大抵のものは見つくしちゃってるし、いいものを紹介できると思うの。ほら、これなんかどう?」
御坂先輩はそういってカバンから一冊の画集を出した。それを僕に渡す。
それは主に吸血鬼や魔女といったものの西洋画であった。どれもこれも魅力的な絵だった。
ことに吸血鬼や魔女など日常に生で見ることはないから、こうした資料は欠かせない。この魅力的な資料は僕にとって必要不可欠ともいえた。
「これは、よく探し当てましたね」
「ほかにもあるけど、必要ならそろえるから、ね?」
「ああ、なるほど。わかりました。入部します」
「じゃあ、さっそくこれに書いて」
谷崎先輩は言った。
僕は入部届にに民俗学研究部と書いた。
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