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第五話
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部活動が終わり、帰り道を歩いていた。すると先に帰った御坂先輩を前のほうに見つけた。御坂先輩は立ち止まっていた。それだから歩いていけば行くほど近くに来た。
ある程度近づくと、御坂先輩が青いアジサイを見て立ち止まっているのだということが分かった。
さらに近づいていって、御坂先輩が泣いていることが分かった。
御坂先輩がこちらを見た。やはりその目は涙にぬれていた。御坂先輩は歩きさって言ってしまった。
僕は声をかけることもできないまま、立ち尽くしていた。青いアジサイの横に。
僕は部室に向かって歩いていた。
「片山君」
振り向くと、御坂先輩がいた。
「あのさ、昨日のことだけどさ」
昨日のことといわれて、僕はアジサイの前で泣いていた一件を思い出した。
「はい」
「あれさ、誰かに話したりとか、わけを誰かに訊いたりとかしないでね?」
「ええ……」
「泣いていたって言っても、たいしたことじゃないから。むしろ変に騒がれるほうが嫌だからさ。お願いね」
「あの」
「うん?」
「御坂先輩からは教えてもらえないですかね、泣いていた理由?」
「どうして話す必要があるの?」
「心配だからです」
「心配してくれるのはうれしいけど、でも迷惑かけると悪いし」
「いや、そんなものどんどんかけてくれて構わないんで」
「じゃあ、死ぬかもしれないって言ったら?」
僕は唐突なその死ぬという言葉に驚いてしまって、言葉を続けることができなくなってしまった。
その言葉はあまりにも重みがあった。それを言った時の御坂先輩の目は全くぶれることのないものだった。すっかり追い詰められた人間が発する、すっかり肝がすわった時の表情に見えた。
「いやいや、そんな冗談なのに。本気にしな」
「もし、御坂先輩がそんな誰かが死ぬようなぐらい大変な目に遭っているっていうのなら」
「いやだから、冗談だって」
「一人で放っておくわけにはなおさら行きませんよ。あと今の表情だと全然嘘に見えませんでしたから」
「冗談だから。今の表情も含めて。はい、この話は終わりにしよ」
「ちょっと待ってください」
「待たない。あと、昨日泣いていたことは話さないでね」
御坂先輩はそしてさっさと行ってしまって、部室へと入っていった。
ある程度近づくと、御坂先輩が青いアジサイを見て立ち止まっているのだということが分かった。
さらに近づいていって、御坂先輩が泣いていることが分かった。
御坂先輩がこちらを見た。やはりその目は涙にぬれていた。御坂先輩は歩きさって言ってしまった。
僕は声をかけることもできないまま、立ち尽くしていた。青いアジサイの横に。
僕は部室に向かって歩いていた。
「片山君」
振り向くと、御坂先輩がいた。
「あのさ、昨日のことだけどさ」
昨日のことといわれて、僕はアジサイの前で泣いていた一件を思い出した。
「はい」
「あれさ、誰かに話したりとか、わけを誰かに訊いたりとかしないでね?」
「ええ……」
「泣いていたって言っても、たいしたことじゃないから。むしろ変に騒がれるほうが嫌だからさ。お願いね」
「あの」
「うん?」
「御坂先輩からは教えてもらえないですかね、泣いていた理由?」
「どうして話す必要があるの?」
「心配だからです」
「心配してくれるのはうれしいけど、でも迷惑かけると悪いし」
「いや、そんなものどんどんかけてくれて構わないんで」
「じゃあ、死ぬかもしれないって言ったら?」
僕は唐突なその死ぬという言葉に驚いてしまって、言葉を続けることができなくなってしまった。
その言葉はあまりにも重みがあった。それを言った時の御坂先輩の目は全くぶれることのないものだった。すっかり追い詰められた人間が発する、すっかり肝がすわった時の表情に見えた。
「いやいや、そんな冗談なのに。本気にしな」
「もし、御坂先輩がそんな誰かが死ぬようなぐらい大変な目に遭っているっていうのなら」
「いやだから、冗談だって」
「一人で放っておくわけにはなおさら行きませんよ。あと今の表情だと全然嘘に見えませんでしたから」
「冗談だから。今の表情も含めて。はい、この話は終わりにしよ」
「ちょっと待ってください」
「待たない。あと、昨日泣いていたことは話さないでね」
御坂先輩はそしてさっさと行ってしまって、部室へと入っていった。
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