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第六話
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その日の部活の帰り道、僕はそれとなく帰る時間を調整するよう努めた。そして谷崎先輩が帰ると、僕も教室を出た。
「谷崎先輩」
「うん?」
「聞きたいことがあるんですけれども、御坂先輩のことで」
「え、なに?」
「あのですね、御坂先輩の家族のことで聞きたいんですけど、会ったこととかありますか?」
「いや、僕もまだ会ったことはないよ。どうしてそんなことを聞くの?」
「えっとですね、御坂先輩のことをよく知りたいな、って思いまして」
「それって何、君も御坂さんのこと狙っているってことかな?」
「えー、まあ」
「そうかあ!いや僕も実はね、御坂さんのこと、いいなあと思っていてね。いや、いつかはって思っていたんだけれど。そうか、君も御坂さんが気になっているんだね。うん、わかるよわかる。美人だものね。でもそうなったら、僕と君はライバルってわけだね」
「そう、ですね」
「お互い頑張ろうね、片山君!それと、どっちが付き合うことになったとしても、恨みっこな死ってことでいいよね?」
「はい、それはもう」
「君はいいやつだ。僕も応援しているよ。だから君も僕のことを応援してくれよな」
「ええ、もちろん」
「まあ、君を応援するという意味でも御坂さんのことを教えてやりたいのはやまやまなんだけれどね、実は僕もよく知らないんだ」
「そうなんですか?」
「御坂さん、あんまり自分のこと話さないから」
「誰か、御坂さんと親しそうな人とか知りませんか?」
「あー、それも、見たことないんだよなあ」
「え?友達がいないってことですか」
「性格が悪いとかじゃないとは思うんだよ。ただ美人だし、近寄りがたいっていうところはあるのかもしれないね。あ、でも一人だけ親友っていうか、よく話してそうな人はいるな。坂口安美っていうんだけど」
「坂口安美先輩、ですか」
「そう。御坂さんと同じクラスのはずだよ、確か。まあとにかく御坂さんのこと何か知っているかも知れないし、聞いてみるといいよ」
「はい」
「あ、どうせ聞くのなら、もし御坂さんのことで分かったことがあったら、僕にも教えてくれよ」
「わかりました」
「ありがとう。よろしく頼むね」
「はい」
翌日、僕は放課後にげた箱のほうへと向かった。部活には遅れていくつもりだった。
部長である谷崎先輩にこのことは話してあった。理由は宿題の補習ということにしておいた。むろん、谷崎先輩には本当のところがわかっていたようで、
「よろしく頼むよ」
と言われた。
そうして下駄箱に行き、まずは坂口先輩の靴があるかどうかを確認した。そしてあることを知った。
僕らそれから、下駄箱の場所を確認して、ずっとそこを見張るようにした。
やがて坂口先輩のげた箱を開けて靴を取り出す人を見た。
「坂口先輩、ですか?」
坂口先輩はびくりと体を震わせてこちらを見た。しかし僕の姿を見ると少しだけ表情を緩めた。
「そう、だけど」
「あの、御坂先輩と親しいっていうことを聞きまして、あ、帰りながら話しますか?」
「そうしたいね」
僕は自分の靴を履いて、外に出た。入口の外で坂口先輩と合流して、再び話を始めた。
「あの、御坂先輩の両親に会ったことってありますか?」
「あるよ」
「どんな人でした?」
「ええっとね、お父さんはすごいイケメンなのね。でも私はあの人が嫌い。なんていうか作り笑いっていうの?そういう作った態度が気持ち悪くてしょうがないの。本当、話していて吐き気がしそうだった。お母さんの方はね、やっぱり美人なんだけど、ものすごくやつれてて。本当に頬がこけちゃって、まるで栄養失調みたいだった。で、それだからだと思うんだけど、私があってしばらくしてから死んじゃって。御坂さん、そのことでかなりつらい思いをしたと思う」
僕は母親が死んでいたという話を聞いた時、ははあ、これだなと思った。
僕はこれを聞いたから、これ以上訊く必要もないかなとも思ったが、谷崎先輩との約束もあるのでもう少し聞いておくことにした。
「ほかに、御坂先輩のことで教えてもらってもいいですか?例えば好きな食べ物とか」
「何、なんでそんなこと聞くの?もしかして、奈緒ちゃんのこと好きなの?」
「あ、いやまあ」
「そうなんだあ。へええ。そうか、そういうことならね、奈緒ちゃんが好きな食べ物はねチョコレート。学校によく持ってきて食べてるの。それと本が好き。読書家なの。すんごい難しいの読むんだよ。太宰文学とか芥川文学。外国の本もよく読むわね。なんとかスキーとかいうやつの本。話をしたければ文学に興味があるっぽいことをほのめかしたらいいから。そうするとね、奈緒ちゃんのほうが勝手に話してくれるから。その時の奈緒ちゃんったら、もうとどまるところを延々と知らず語り続けることができるの。本当に天才なんだろうね。まあ、私が知っているのはこれぐらいかな」
「ありがとうございます。あと、ほかに御坂先輩のことをよく知っている人と買っていますかね?」
「いない」
「そうなんですか?」
「ああ、違うの。そうじゃないの。奈緒ちゃんに友達がいないとかじゃなくて、ちょっと運が悪かったっていうか」
「何かあったんですか?」
「あのね、これは他言無用ってやつなんだけど、いい?誰かに安易に話すようなことはしちゃだめだからね?」
「はい」
「前は奈緒ちゃんもたくさん友達がいたの、美人のね。その中に一人、私みたいなブスが混じっていたんだけど。だけどね、いつ頃だったかなあ、確か去年の夏頃だったと思う。奈緒ちゃんの友達がみんなレイプされたのよ。それでみんながみんな妊娠しちゃったから今はもう、この学校にはいないんだけれど。まあ私は無事だったけどね。ブスだから。そういうのとか心配いらないから。でも、そんなことがあってから奈緒ちゃんに近寄る人がいなくなっちゃって。ていうのは、奈緒ちゃんの友達がみんなレイプされたから何かあるとか勘繰られてしまったの。本当は何もないのにね。裏にやくざか何かがいるとでも思っているんでしょうね。もしやくざが裏にいるんだとしたら、原因はあのお父さんねきっと。まあ私は今も友達として奈緒ちゃんのそばにいるけれど、みんなは近寄ってこない。表立って非難もしないけど、かといって親しくしたりはしないっていうそんな関係ね」
僕は何とも言えない気持ちになった。どう相槌を打っていいものかわからず、思わず黙り込んでしまった。
「おい、見つかっちゃったぞ!」
僕が振り返ると、谷崎先輩が走ってきて、しきりにわめいている。
「ああ、それじゃあね。さっき言ったことはよろしくね」
坂口先輩は言った。
「はい」
「おい、大変だよ。御坂さんが君のことを見つけちゃって」
「ええ!」
「谷崎先輩」
「うん?」
「聞きたいことがあるんですけれども、御坂先輩のことで」
「え、なに?」
「あのですね、御坂先輩の家族のことで聞きたいんですけど、会ったこととかありますか?」
「いや、僕もまだ会ったことはないよ。どうしてそんなことを聞くの?」
「えっとですね、御坂先輩のことをよく知りたいな、って思いまして」
「それって何、君も御坂さんのこと狙っているってことかな?」
「えー、まあ」
「そうかあ!いや僕も実はね、御坂さんのこと、いいなあと思っていてね。いや、いつかはって思っていたんだけれど。そうか、君も御坂さんが気になっているんだね。うん、わかるよわかる。美人だものね。でもそうなったら、僕と君はライバルってわけだね」
「そう、ですね」
「お互い頑張ろうね、片山君!それと、どっちが付き合うことになったとしても、恨みっこな死ってことでいいよね?」
「はい、それはもう」
「君はいいやつだ。僕も応援しているよ。だから君も僕のことを応援してくれよな」
「ええ、もちろん」
「まあ、君を応援するという意味でも御坂さんのことを教えてやりたいのはやまやまなんだけれどね、実は僕もよく知らないんだ」
「そうなんですか?」
「御坂さん、あんまり自分のこと話さないから」
「誰か、御坂さんと親しそうな人とか知りませんか?」
「あー、それも、見たことないんだよなあ」
「え?友達がいないってことですか」
「性格が悪いとかじゃないとは思うんだよ。ただ美人だし、近寄りがたいっていうところはあるのかもしれないね。あ、でも一人だけ親友っていうか、よく話してそうな人はいるな。坂口安美っていうんだけど」
「坂口安美先輩、ですか」
「そう。御坂さんと同じクラスのはずだよ、確か。まあとにかく御坂さんのこと何か知っているかも知れないし、聞いてみるといいよ」
「はい」
「あ、どうせ聞くのなら、もし御坂さんのことで分かったことがあったら、僕にも教えてくれよ」
「わかりました」
「ありがとう。よろしく頼むね」
「はい」
翌日、僕は放課後にげた箱のほうへと向かった。部活には遅れていくつもりだった。
部長である谷崎先輩にこのことは話してあった。理由は宿題の補習ということにしておいた。むろん、谷崎先輩には本当のところがわかっていたようで、
「よろしく頼むよ」
と言われた。
そうして下駄箱に行き、まずは坂口先輩の靴があるかどうかを確認した。そしてあることを知った。
僕らそれから、下駄箱の場所を確認して、ずっとそこを見張るようにした。
やがて坂口先輩のげた箱を開けて靴を取り出す人を見た。
「坂口先輩、ですか?」
坂口先輩はびくりと体を震わせてこちらを見た。しかし僕の姿を見ると少しだけ表情を緩めた。
「そう、だけど」
「あの、御坂先輩と親しいっていうことを聞きまして、あ、帰りながら話しますか?」
「そうしたいね」
僕は自分の靴を履いて、外に出た。入口の外で坂口先輩と合流して、再び話を始めた。
「あの、御坂先輩の両親に会ったことってありますか?」
「あるよ」
「どんな人でした?」
「ええっとね、お父さんはすごいイケメンなのね。でも私はあの人が嫌い。なんていうか作り笑いっていうの?そういう作った態度が気持ち悪くてしょうがないの。本当、話していて吐き気がしそうだった。お母さんの方はね、やっぱり美人なんだけど、ものすごくやつれてて。本当に頬がこけちゃって、まるで栄養失調みたいだった。で、それだからだと思うんだけど、私があってしばらくしてから死んじゃって。御坂さん、そのことでかなりつらい思いをしたと思う」
僕は母親が死んでいたという話を聞いた時、ははあ、これだなと思った。
僕はこれを聞いたから、これ以上訊く必要もないかなとも思ったが、谷崎先輩との約束もあるのでもう少し聞いておくことにした。
「ほかに、御坂先輩のことで教えてもらってもいいですか?例えば好きな食べ物とか」
「何、なんでそんなこと聞くの?もしかして、奈緒ちゃんのこと好きなの?」
「あ、いやまあ」
「そうなんだあ。へええ。そうか、そういうことならね、奈緒ちゃんが好きな食べ物はねチョコレート。学校によく持ってきて食べてるの。それと本が好き。読書家なの。すんごい難しいの読むんだよ。太宰文学とか芥川文学。外国の本もよく読むわね。なんとかスキーとかいうやつの本。話をしたければ文学に興味があるっぽいことをほのめかしたらいいから。そうするとね、奈緒ちゃんのほうが勝手に話してくれるから。その時の奈緒ちゃんったら、もうとどまるところを延々と知らず語り続けることができるの。本当に天才なんだろうね。まあ、私が知っているのはこれぐらいかな」
「ありがとうございます。あと、ほかに御坂先輩のことをよく知っている人と買っていますかね?」
「いない」
「そうなんですか?」
「ああ、違うの。そうじゃないの。奈緒ちゃんに友達がいないとかじゃなくて、ちょっと運が悪かったっていうか」
「何かあったんですか?」
「あのね、これは他言無用ってやつなんだけど、いい?誰かに安易に話すようなことはしちゃだめだからね?」
「はい」
「前は奈緒ちゃんもたくさん友達がいたの、美人のね。その中に一人、私みたいなブスが混じっていたんだけど。だけどね、いつ頃だったかなあ、確か去年の夏頃だったと思う。奈緒ちゃんの友達がみんなレイプされたのよ。それでみんながみんな妊娠しちゃったから今はもう、この学校にはいないんだけれど。まあ私は無事だったけどね。ブスだから。そういうのとか心配いらないから。でも、そんなことがあってから奈緒ちゃんに近寄る人がいなくなっちゃって。ていうのは、奈緒ちゃんの友達がみんなレイプされたから何かあるとか勘繰られてしまったの。本当は何もないのにね。裏にやくざか何かがいるとでも思っているんでしょうね。もしやくざが裏にいるんだとしたら、原因はあのお父さんねきっと。まあ私は今も友達として奈緒ちゃんのそばにいるけれど、みんなは近寄ってこない。表立って非難もしないけど、かといって親しくしたりはしないっていうそんな関係ね」
僕は何とも言えない気持ちになった。どう相槌を打っていいものかわからず、思わず黙り込んでしまった。
「おい、見つかっちゃったぞ!」
僕が振り返ると、谷崎先輩が走ってきて、しきりにわめいている。
「ああ、それじゃあね。さっき言ったことはよろしくね」
坂口先輩は言った。
「はい」
「おい、大変だよ。御坂さんが君のことを見つけちゃって」
「ええ!」
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