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14.妃の帰還
カーライルとローズが大公の執務室で半月ぶりに向き合う間に、大公妃が戻ったという知らせは大公邸中を沸かせていた。
妃の侍女たちは寝室を整え、庭師が摘んだ花を侍従や下女達が屋敷中に飾った。特に調理場では、食欲のなかった大公のための食事の用意に張り合いを失くしていた料理人が喜んだ。
夫婦揃っての晩餐では、交わす言葉は少ないが、時に目を合わせては微笑みを交わしていた。そのローズの目線や微笑みは艶かしく、給仕していた執事始め侍従たちがつい見とれ、新妻に向けられた邪な視線に気づいた大公閣下に睨み付けられていた。
料理長が大公妃の帰宅に歓迎の意をこめたデザートは華やかにフルーツで飾られ、ローズを喜ばせた。その姿をカーライルが愛おしげに見守っていた。
食事が終わると、カーライルがローズをエスコートし、それぞれの寝室へ入った。
ローズには侍女が付き、すぐに入浴の世話をした。ローズが戻ってからの夫婦の様子から、大公との閨の準備が必要と理解していた。嫁いでくるローズのために雇い入れられていた侍女たちは、数日で主人を失い、戻らない大公妃のために部屋を整え続けていた。
濡れたローズの豊かな髪をふたりがかりで拭き、香油を肌に塗り込み、シルクのナイトドレスを着せ、
「他にご用がなければ、下がらせていただきます」
と、そそくさと退出してしまった。
ローズは、心臓がドキドキ音を立てるのを感じながら、隣のカーライルの部屋に続く扉をノックした。
コツコツと二度目を叩くのを待たずに、勢いよく扉が開き、ローズは息をのんだ。
カーライルが飛び込んできて、ローズを両手で自分の胸に押し潰すように抱いた。
「遅い!待たせるな!」
カーライルはローズの肩と膝の裏に腕を回して持ち上げた。肩を引き寄せ、ローズの額に自身の唇を強く押し付けた。
――ああ、カーライル様は、こんなにも私を求めながら隠していらしたのね。
ローズは堪らなくカーライルを愛おしく思った。
カーライルはローズをベッドに寝かせると、自身のガウンを脱ぎ捨てて覆い被さり、自分の唇をローズの柔らかいそれに押し付けた。唇が絡み合い、舌がローズの口腔に差し入れられ、激しく暴れた。
ローズは必死で応えていたが、唇から、ぞわぞわと快感に呑まれていくのを感じ、無意識にカーライルの首に腕を絡ませ自ら引き寄せていた。
カーライルは、自身の腕にローズが戻ったのを実感し、落ち着きを取り戻した。
口づけはローズの頬、額への優しいものに変わった。
時にローズの顔を見て、また口づけをし、ローズを慈しむ。
洗いざらしの髪を撫で付けずにいるカーライルは、少し幼く見える。
「そんなにお待ちだったのでしたら、呼びにいらっしゃればよかったのに」
「・・・侍女たちがいただろう。」
「大公閣下の使用人ですもの、人払いをなされば…」
侍女たちの前で、閨に新妻を迎えに行くようなことが恥ずかしくて出来なかったのだろう。
ローズはクスクスと笑った。
「なんだ。」
「いえ、わたくしの大公閣下は、大層かわいらしい方だと思いましたの。」
「こら、そんなことを言ってからかうと、仕置きをするぞ。」
カーライルはローズの愛らしい鼻に噛みつくふりをした。
ローズも笑いながら悲鳴を上げた。
「・・・天下の大公も、そなたにかかればただの情けない一人の男だ…。海賊どもは倒せても、そなたには敵わん。
今日までそなたを迎えに行けずに過ごしてしまった…。」
カーライルはローズの顔を見られなくなり、ローズの首元に頭を落とした。その頭をローズが撫でた。
「今日、勇気を出して、本当の気持ちを伝えてくださったわ。だから、もう」
本当のことを言えば、まだ、夫ではない男に体を弄ばれたことに傷ついている。
そんなことをさせた夫を許し切れてもいない。間違いだったのは事実だ。
―でも、もう、この人と離れているのは、私には無理。
「カーライル様、これまでのことは忘れたいのです。
今日、この夜が、二人の初夜です。」
カーライルは、婚儀の後の初夜の出来事を、馬車の中でのあの恥辱を、忘れたいと訴えるローズの傷に心が痛んだ。
そして、自分がつけたその傷を癒すことを自分に課してくれるローズに感謝した。
うなずいて、もう一度唇を重ねた。
妃の侍女たちは寝室を整え、庭師が摘んだ花を侍従や下女達が屋敷中に飾った。特に調理場では、食欲のなかった大公のための食事の用意に張り合いを失くしていた料理人が喜んだ。
夫婦揃っての晩餐では、交わす言葉は少ないが、時に目を合わせては微笑みを交わしていた。そのローズの目線や微笑みは艶かしく、給仕していた執事始め侍従たちがつい見とれ、新妻に向けられた邪な視線に気づいた大公閣下に睨み付けられていた。
料理長が大公妃の帰宅に歓迎の意をこめたデザートは華やかにフルーツで飾られ、ローズを喜ばせた。その姿をカーライルが愛おしげに見守っていた。
食事が終わると、カーライルがローズをエスコートし、それぞれの寝室へ入った。
ローズには侍女が付き、すぐに入浴の世話をした。ローズが戻ってからの夫婦の様子から、大公との閨の準備が必要と理解していた。嫁いでくるローズのために雇い入れられていた侍女たちは、数日で主人を失い、戻らない大公妃のために部屋を整え続けていた。
濡れたローズの豊かな髪をふたりがかりで拭き、香油を肌に塗り込み、シルクのナイトドレスを着せ、
「他にご用がなければ、下がらせていただきます」
と、そそくさと退出してしまった。
ローズは、心臓がドキドキ音を立てるのを感じながら、隣のカーライルの部屋に続く扉をノックした。
コツコツと二度目を叩くのを待たずに、勢いよく扉が開き、ローズは息をのんだ。
カーライルが飛び込んできて、ローズを両手で自分の胸に押し潰すように抱いた。
「遅い!待たせるな!」
カーライルはローズの肩と膝の裏に腕を回して持ち上げた。肩を引き寄せ、ローズの額に自身の唇を強く押し付けた。
――ああ、カーライル様は、こんなにも私を求めながら隠していらしたのね。
ローズは堪らなくカーライルを愛おしく思った。
カーライルはローズをベッドに寝かせると、自身のガウンを脱ぎ捨てて覆い被さり、自分の唇をローズの柔らかいそれに押し付けた。唇が絡み合い、舌がローズの口腔に差し入れられ、激しく暴れた。
ローズは必死で応えていたが、唇から、ぞわぞわと快感に呑まれていくのを感じ、無意識にカーライルの首に腕を絡ませ自ら引き寄せていた。
カーライルは、自身の腕にローズが戻ったのを実感し、落ち着きを取り戻した。
口づけはローズの頬、額への優しいものに変わった。
時にローズの顔を見て、また口づけをし、ローズを慈しむ。
洗いざらしの髪を撫で付けずにいるカーライルは、少し幼く見える。
「そんなにお待ちだったのでしたら、呼びにいらっしゃればよかったのに」
「・・・侍女たちがいただろう。」
「大公閣下の使用人ですもの、人払いをなされば…」
侍女たちの前で、閨に新妻を迎えに行くようなことが恥ずかしくて出来なかったのだろう。
ローズはクスクスと笑った。
「なんだ。」
「いえ、わたくしの大公閣下は、大層かわいらしい方だと思いましたの。」
「こら、そんなことを言ってからかうと、仕置きをするぞ。」
カーライルはローズの愛らしい鼻に噛みつくふりをした。
ローズも笑いながら悲鳴を上げた。
「・・・天下の大公も、そなたにかかればただの情けない一人の男だ…。海賊どもは倒せても、そなたには敵わん。
今日までそなたを迎えに行けずに過ごしてしまった…。」
カーライルはローズの顔を見られなくなり、ローズの首元に頭を落とした。その頭をローズが撫でた。
「今日、勇気を出して、本当の気持ちを伝えてくださったわ。だから、もう」
本当のことを言えば、まだ、夫ではない男に体を弄ばれたことに傷ついている。
そんなことをさせた夫を許し切れてもいない。間違いだったのは事実だ。
―でも、もう、この人と離れているのは、私には無理。
「カーライル様、これまでのことは忘れたいのです。
今日、この夜が、二人の初夜です。」
カーライルは、婚儀の後の初夜の出来事を、馬車の中でのあの恥辱を、忘れたいと訴えるローズの傷に心が痛んだ。
そして、自分がつけたその傷を癒すことを自分に課してくれるローズに感謝した。
うなずいて、もう一度唇を重ねた。
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