マキノのカフェで、ヒトヤスミ ~Café Le Repos~

Repos

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56.クリスマスの用意

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クリスマスまであと3日。

高校生バイトちゃん達が言いだしっぺのクリスマス会は、3000円の会費制で、料理とケーキそしてゲームの景品代にするつもりのようだ。お友達も3人まで呼んでもいいということになった。
それ以上増えると、お店に入らなくなる。うまく考えたものだ。


真央未来たちの計画を聞いて、おおむねOKを出してから、マキノはいくつかの提案をした。

「ヒロトは当日の料理人兼ウエイターってことで。お店の忘年会も兼ねてもらいたいから、お料理の半分はお店から出すね。そうだ。遊もウエイターしてもらおうかな?いつものカフェのユニフォームで。うちのイケメン2名がホスト。いいかもよ。」 

「遊はともかく、オレはいつからイケメン扱いになったんですか?」
「あらヒロト君、わたしは最初からそう思ってたけど?うふふ。」
真央ちゃんと未来ちゃんはそれぞれ、マキノの提案をメモしている。

「それと、子どもを連れてきたい人がいるでしょ?中学生以下の子どもの分の会費は無料にしておいて。乾杯のシャンパン以外のアルコールが欲しい人は各自持参することにしよう。」
未成年といっしょの集まりだから、大人はお酒のことに関しては自己責任。でも全然アルコールがないのも寂しいから。
「了解です。」

「大変かもしれないけど、先にこれ渡しておくね。参加する人数がわかったら景品を買いに行ってください。」
そう言ってマキノは3万円を渡した。
「ええっと、景品の分にこんなに使うとお料理の分がちょっとになるけど、いいんですか?」
「・・高校生に任せるならそれぐらいが妥当と思ったの。忘年会費用の一端だからお料理は心配しなくてもいいよ。」
「そうですか?」
「たくさん景品選ぶの大変だけど、きっとすごく楽しいと思うから、頑張って。」
「わかりました!」


「お料理係さん。人数はきちんとわかったほうがいい?」とマキノがヒロトにたずねた。
「いや、オードブル形式にするから、もう今わかってる人数でそのまま行きます。多めにするつもりだから。多少変わっても大丈夫ですよ。」
「了解。」
お料理のことは、ヒロトに任せておけば、何も心配いらないな。


さてそのヒロトだが、自分が仕事を作って追い込んでいる責任も感じているんだけれど、最近のお疲れ具合がマキノは少々気になっていた。

スーパーへの納品は、仕入と下準備と製造まで、ヒロトは一人でやっている。朝市工房には何時に入っているのかマキノは把握していない。
収めている数はまだ少ないが、今のところ毎日完売だ。
数を増やせずにいるのは、台所の使い勝手にも慣れていないし、やり方が安定するまで試行錯誤しているからだろう。

「ヒロトは、朝は何時に入ってるの?」
「今日・・家を出たのは4時半。明日は4時に出ようと思ってます。」
「それって・・労基法違反にならないのかしら。」
「いや。勝手にやってますから。」
「まだ一気に増やさなくてもいいんだよ。焦らず効率考えて徐々にいこう。カフェのスタッフも工房とで共有するように考えてもいいんだよ。みんな手伝ってくれるよ。」
「はい。苦しいときはお願いすると思います。」
「うん。」


ヒロトの仕事はあらかた午前中に終わる。
スーパーの分とお弁当を全部仕上げて、片づけをして翌日の仕込みをしていると、2時頃まで工房にこもっていることが多くなった。
そこから一旦カフェに戻ってきて、いつもの時間まで仕事をする。
ヒロトは、今カフェの仕事をあまりできないことを気にして、なるべく急いで帰ってこようと気を遣っているのがわかる。気持ちも張りつめているのもわかる。
うまくいけば一か月何十万と返済していけるかもしれないという望みの綱だから、確かに、ヒロトとしては正念場なのだ。


今、スーパーに400円のお寿司を15パックおいているが、30日間毎日完売できたとしたら、18万。
種類を増やして数を増やせば、倍ぐらいは大丈夫だろう。1店舗30万の売り上げを見込むとして、2店舗に置けたら60万になるし,3店舗に置けたら90万。お弁当は週4日20個ずつ売れれば,16万だけど,宣伝して専念すればこれも倍ぐらいになると思う。るぽブランドの商品に人気が出てくれば,いいものを値段を上げて作っても買ってもらえると思う。この調子でうまく軌道に乗せることができれば,材料費を引いてもかなりの利益を出せるはず。そこまでやれたら人を雇っても大丈夫だし、仕事も楽になってゆくはず。


今月お試しでうまくいったら、朝市工房での作業はカフェとすべて切り離して、そこでの収入はすべてヒロトの物にすればいいと言ってある。配達はカフェの誰かが行くけれど、配達代として工房の収入からカフェに戻すことになる。
いずれは違うお店として分けてしまう前提だから・・、まぁ、敏ちゃんに計算してもらうから、細かい事はお任せするとして、数字の管理だけは今からきちんとしておかなくちゃいけない。


お父さんも帰ってきたようだし、心配事は一つ無くなった。
以前の職場の同僚から同じような建設業関係の会社の就職を世話してもらって、そこで働けるようになったらしい。
このご時世に奇跡だよ。
そう聞くと、事態はいい方向へ流れてきたかなと思う。


おぜん立ては整ってきた。意地でも頑張ってほしい。
1人でやるのは苦しいだろうけれど、弱音を吐く様なそぶりは見せていない。覚悟もできているようだ。



だから・・・唯一の心配は。


「ヒロトくん、寝不足大丈夫?遊の隣でお泊りしたらどう?忘年会の日は遅くなるでしょ?」
「あー、そうさせてもいます。運転してると事故りそうになるから・・。」
「遊、いいでしょ?」
「どうぞどうぞ。嬉しいな。居候させてあげる立場になれるなんて。」
「あれ?何で家主になったようなこと言うのよ。遊だって相変わらず居候じゃない。」
「そうだった。家主って言うか、オレは責任もって宿直してるんだからね。」
「なにが責任持ってなのよ。」

えへへと笑いながら、遊はヒロトが泊まりに来ると決まって、それを喜んでいるようだ。


「スーパーはお休みはないけど、ヒロト、あなたはお休み取らないとダメだよ。」
「そうですね。でも、売れるから、つい休みたくなくて・・。」
「じゃあ、今度私も手伝いに行こうか。お寿司習っておかないとヒロトの代わりがまったくいないのはまずいし。体壊して休んじゃったら意味がなくなるし。るぽの名前を使ってるんだからね。みんなでかわるがわる習いに行くようにするわ。」
「あ・・ありがとうございます。ほどほどに頑張ります。」


順調に進んでいるのはいいことだが、本人は必死だから無理してでもやるつもりになっている。
ここは回りの者が慎重になって見守るべきだな。

「じゃ、ヒロト君、今日はもう帰りなさい。自主的にやってるにしてもお疲れの色が濃いよ。」

まだ4時だが、マキノはヒロトに帰るように言った。

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