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85.マキノと春樹のバレンタイン
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土曜日は朝市がある。
マキノは、朝8時にヒロトの工房のほうへ顔を出した。
千尋さんは、今日はお休みだから、マキノが配達に行くことになっていた。
本店と各支店へ順番に配達して行って、最後はG支店。
全部陳列棚に置いていると、知らないお客さんから声をかけられて、「節分の時これ買ったのよ。おいしかったわー。」と褒めてもらい、とても幸せな気分になった。ヒロトに教えてあげようと思う。
並べ終わってから、そばにいた店員さんと数量の確認をし、サインをもらって、バックヤードの棚にあるファイルに伝票を挟む。昨日の売れ残りがあれば、店員さんが見てくれるときに伝票の数字を書き直すのだが、ありがたいことに今日も返品はなし。納品して空になった箱を、ぽいと車に放り込んだ。
自社の商品を褒められ気をよくして、今日の夜春樹さんにごちそうするお刺身もG支店で買って帰ることにした。売り場をウロウロと歩くと、いろいろ気づきがある。この支店も本店も同じスーパーのはずなのに、入っている魚屋さんが違うので、商品のラインナップも目新しい。たかがスーパーされどスーパー。上等なものだって置いてある。今日は少し特別だから、少しお高めのトロと・ハマチ・タイ・サーモン・イカの盛り合わせを買った。
チョコレートは買うか迷っていたが、通りかかったお酒のコーナーに『焼酎の飲み比べセット』というものを見つけた。720ml瓶が3本入って、5000円もする。
最近焼酎の水割りをよく飲んでるから、これにブラウニー1個付けておけば、ビターな春樹にもきっと喜んでもらえるに違いない。
あっいけない、ゆっくりしすぎた。朝市があったのに!
慌てて朝市の広場まで戻ると、ヒロトはマキノが戻ってこないことに業を煮やしたらしくて、自分で朝市の出品をして、真央に売り子さんを頼んでくれたようだった。
「真央ちゃん、ごめんごめん遅くなって。買い物してたんだ。今日は美緒ちゃんは?」
「今日はバレンタインだからきっと来ると思うけど、まだですね。カフェが忙しくないか、ちょっとだけ心配。」
「遊だから大丈夫だよきっと。ここはお願いしていい?先に戻っとくね。」
「はーい。」
カフェに戻ると、玄関の前の駐車場にお客さんの車が3台停まっていたので、マキノは裏庭に自分の車を停めた。
カランカランとベルを鳴らして「いらっしゃいませ~。」と言いながらそのまま厨房へ入る。
ランチには早い時間だったので、注文はドリンクと軽食だけで、何とか回せていたようだ。
「次のお客さんが来たら、真央を呼び戻そうかなと思ってたよ。」
「遅くなってすみません。すべてバレンタインが悪うございますので。」
マキノが冷蔵庫に買い物してきたものをしまっているのを見て、遊は面白くなさそうな顔で“フン”と鼻を鳴らした。
「そんな顔しなさんなって・・。」
マキノがなだめようとしたら、カランカランとお客さんがまた入ってきた。
「いらっしゃいませー。」
明るく挨拶をして、マキノがお冷とおしぼりを出しに行く。
まだ12時になっていないが、ランチのご注文だ。
「今日もゆるゆると忙しいね。」
「うん。」
土曜日と日曜日は、日替わり定食のメニューは作っていない。煮込みハンバーグとミックスフライのランチが1つずつだった。
遊に調理を任せて、自分は座敷のはしっこで料理があがるのを待って待機する。
しばらくすると、真央も朝市から戻ってきた。
「3番ランチあがり―。」
と遊が呼んだ。
戻ったばかりの真央のほうがマキノより一瞬反応が早く「はあい。」と返事をして、ミックスフライのランチプレートをひとつ運んで行った。マキノも続いてハンバーグのプレートを運んだ。
食事が進むまで、コーヒーはしばらく待機だ。
「んーとね。遊にはこれ。」
マキノは、バレンタインのラッピングをした袋を自分の荷物の中から出してきて遊に渡した。
「あ、私もあるよ。春樹さんと,ヒロトさんにも。」
真央もそう言って、ロッカーへ何かを取りに行った。
「遊、開けてごらんよ。」
遊が巾着型に縛ってある袋の口のリボンをほどいて、ガサガサと袋を開けた。
「くつしたかぁ。」
「足元があったかいと、ソコソコしあわせでしょ。」
「そこそこね。ありがとう。」
そのやりとりを見ていて、真央も無造作にプレゼントらしいものを遊に差し出した。
「真央ちゃんのは?」
「カップケーキ?チョコマフィンかな。」
「おお。やるねぇ。手作り?遊、チョコゼロ回避だね。ありがたく思いなさいよ。」
「思ってるよ。ありがとう真央。」
「いいえ、どういたしまして。マキノさん今日は春樹さん来ないの?」
「どうかな。最近土曜日にジムに行ったりしてるし、そのまま来ないかも。」
「じゃあ、これ。マキノさんと春樹さんの分。」
真央は、遊に渡したものと同じラッピングのチョコマフィンをマキノに渡した。
「うわあ、ありがとう。女の子にはホワイトデーに何かするからね。」
「ヒロトさんは戻ってくるかなぁ。さっき、工房へ持って行けばよかった。」
「もうすぐ戻ってくるよ。そう言えば美緒ちゃんが来てないね。」
「今日、自動車の仮免許の試験うけてるって言ってたよ。」
「ほーそうだったのか。配達行ってくれる気満々だったりしてね。」
「マキノさんは、人を使う計算が早いからね。」
「何言ってるの、美緒ちゃんは自分とヒロトの将来を考えてるだけなんだからね。」
游の軽口にマキノが言い返した。
― ― ― ― ― ― ― ―
春樹は、最近の土曜日は、午前中はカヌー部ジュニアのお手伝いをして、午後からは自分のジムに行くようにしている。
昼はカフェに食べに行ってもいいのだが、店が忙しくしているのに邪魔するのも気が引けて、自宅で簡単なものを食べたりコンビニで買ったりするようになった。
適当に帰って来て、洗濯物を取り込んだり、ダラダラごそごそと過ごしていると、マキノが帰ってきた。
そういえば,今日はバレンタインだから早めに帰ってくると、昨日から宣言していた。
そんないいかげんな理由で早引けしていいんだろうかね。
マキノの店だから自由だけどさ。
「ただいま。これ、真央ちゃんからもらったよ。」
「お、カップケーキ?手作りか。真央がんばったな。遊はどうしてた?」
以前に直感で、真央遊に脈あり?と思ったことを思い出して聞いてみたが、マキノの返事はつれなかった。
「渡してたけど・・でも、これもヒロトにもみんな同じようなラッピングだったよ。差をつけてる感じもなかったし、みんなの前で平等に。」
「意識して平等にしたと思うね。オレは。」
「なんでそういうのがわかるの?というか、その予想は本当に本当なの?」
「根拠なんてないよ。はずれてても責任は取らないし。はは。」
無責任に笑った春樹の前に、どん とマキノが飲み比べセットの箱を食卓に置いた。
「んで、これは、わたしからのバレンタイン。」
「なになに?お。うわぉ。これは嬉しい。これスーパーにもたまに置いてあるけど買ったことなかったんだ。ちょっとお高めだろ?」
「そりゃ、普通に売ってる紙パックのよりはだいぶ高いけど、キラッと光る石のことを思えば激安だもの。」
「やったぁ・・。まだ夕食には早いけど,呑んでていい?」
「いいよ。先にお刺身だけ並べる?」
「うん。ちびちびやるから。マキノにも作ろうか。」
「わたしは、あとでいい。」
「そうか?んー。これ最高だなぁ。」
春樹は、気になっていた3本セットの中の1本を手に取り撫でるようにした。
最近、自分は焼酎が気に入っていて、オンザロックにしたり水割りにしたり、種類は特にこだわりはなくて、芋でも麦でも黒糖なんかも、どれも風味や味の違いを楽しんでいる。マキノが、ピンポイントに気になっていたのを選んだことが、偶然にしても自分の傾向をちゃんと読んでいるんだと少し感心した。
「・・よかった。よろこんでくれて。」
「愛だね、愛。」
「愛は、どうだかしらないけどさ。」
今日の献立はオレのリクエストでトロロ飯。マキノはオレがそれをリクエストするとメニューを全部和食にそろえようとする。カフェのメニューが洋風のことが多いので、和食が並ぶと新鮮だ。
全部そろってから食べ始めるのがいいのかな。と思ったが・・、せかせかと動くマキノを眺めたり、隣の部屋のつけっぱなしになっているTVを眺めたりしながら、焼酎をたしなむのも、・・・悪くない。
グラスに氷を入れながらマキノも誘ってみる。
「マキノもちょっと呑めば?」
「うん・・でものんじゃうと料理が進まなくなるもん。」
自分だけ焼酎の水割りを作って、たまり醤油を手皿に用意して、自分の席に落ち着いた。
マキノが並べた刺身に箸を伸ばした。
次の肴ができるまでのつなぎのつもりか、マキノは柿の種の小袋を開けた。
「まだ時間早いし・・慌てて進めなくていいって。」
「うん。わかってる。」
マキノが背中で返事をした。
しばらくすると、佐々木のじいちゃんにもらったと言ってた白菜のからしあえが出てきた。
ツン・・とからしの刺激が鼻にくる。
少し行儀は悪いが、春樹はテーブルに片肘をついた。
「春休みに入ったら土日に続いて休みをとってさ、2泊3日ぐらいで旅行しないか。」
と提案をした。
「旅行?」
「うん。4月は・・何かとバタバタするし、休みを1日だけとって、3月最後の金土日か、土日月がいいかな。」
「んー・・・そうだね。お店はどうしようかな・・・その頃はもう、遊も、真央も、未来も、・・・いないね。」
「・・そうだね。いないね。」
マキノは口をつぐんで、まな板で切っていた野菜をくるりと後ろを向いて鍋に入れた。
背中が、なんとなく丸まって見える。
・・何かに触れたかなぁ・・。
あきらかに、しょんぼりしてる感じ。
ふ・・・と春樹はマキノに気づかれないぐらいの小さなため息をついた。
マキノは、朝8時にヒロトの工房のほうへ顔を出した。
千尋さんは、今日はお休みだから、マキノが配達に行くことになっていた。
本店と各支店へ順番に配達して行って、最後はG支店。
全部陳列棚に置いていると、知らないお客さんから声をかけられて、「節分の時これ買ったのよ。おいしかったわー。」と褒めてもらい、とても幸せな気分になった。ヒロトに教えてあげようと思う。
並べ終わってから、そばにいた店員さんと数量の確認をし、サインをもらって、バックヤードの棚にあるファイルに伝票を挟む。昨日の売れ残りがあれば、店員さんが見てくれるときに伝票の数字を書き直すのだが、ありがたいことに今日も返品はなし。納品して空になった箱を、ぽいと車に放り込んだ。
自社の商品を褒められ気をよくして、今日の夜春樹さんにごちそうするお刺身もG支店で買って帰ることにした。売り場をウロウロと歩くと、いろいろ気づきがある。この支店も本店も同じスーパーのはずなのに、入っている魚屋さんが違うので、商品のラインナップも目新しい。たかがスーパーされどスーパー。上等なものだって置いてある。今日は少し特別だから、少しお高めのトロと・ハマチ・タイ・サーモン・イカの盛り合わせを買った。
チョコレートは買うか迷っていたが、通りかかったお酒のコーナーに『焼酎の飲み比べセット』というものを見つけた。720ml瓶が3本入って、5000円もする。
最近焼酎の水割りをよく飲んでるから、これにブラウニー1個付けておけば、ビターな春樹にもきっと喜んでもらえるに違いない。
あっいけない、ゆっくりしすぎた。朝市があったのに!
慌てて朝市の広場まで戻ると、ヒロトはマキノが戻ってこないことに業を煮やしたらしくて、自分で朝市の出品をして、真央に売り子さんを頼んでくれたようだった。
「真央ちゃん、ごめんごめん遅くなって。買い物してたんだ。今日は美緒ちゃんは?」
「今日はバレンタインだからきっと来ると思うけど、まだですね。カフェが忙しくないか、ちょっとだけ心配。」
「遊だから大丈夫だよきっと。ここはお願いしていい?先に戻っとくね。」
「はーい。」
カフェに戻ると、玄関の前の駐車場にお客さんの車が3台停まっていたので、マキノは裏庭に自分の車を停めた。
カランカランとベルを鳴らして「いらっしゃいませ~。」と言いながらそのまま厨房へ入る。
ランチには早い時間だったので、注文はドリンクと軽食だけで、何とか回せていたようだ。
「次のお客さんが来たら、真央を呼び戻そうかなと思ってたよ。」
「遅くなってすみません。すべてバレンタインが悪うございますので。」
マキノが冷蔵庫に買い物してきたものをしまっているのを見て、遊は面白くなさそうな顔で“フン”と鼻を鳴らした。
「そんな顔しなさんなって・・。」
マキノがなだめようとしたら、カランカランとお客さんがまた入ってきた。
「いらっしゃいませー。」
明るく挨拶をして、マキノがお冷とおしぼりを出しに行く。
まだ12時になっていないが、ランチのご注文だ。
「今日もゆるゆると忙しいね。」
「うん。」
土曜日と日曜日は、日替わり定食のメニューは作っていない。煮込みハンバーグとミックスフライのランチが1つずつだった。
遊に調理を任せて、自分は座敷のはしっこで料理があがるのを待って待機する。
しばらくすると、真央も朝市から戻ってきた。
「3番ランチあがり―。」
と遊が呼んだ。
戻ったばかりの真央のほうがマキノより一瞬反応が早く「はあい。」と返事をして、ミックスフライのランチプレートをひとつ運んで行った。マキノも続いてハンバーグのプレートを運んだ。
食事が進むまで、コーヒーはしばらく待機だ。
「んーとね。遊にはこれ。」
マキノは、バレンタインのラッピングをした袋を自分の荷物の中から出してきて遊に渡した。
「あ、私もあるよ。春樹さんと,ヒロトさんにも。」
真央もそう言って、ロッカーへ何かを取りに行った。
「遊、開けてごらんよ。」
遊が巾着型に縛ってある袋の口のリボンをほどいて、ガサガサと袋を開けた。
「くつしたかぁ。」
「足元があったかいと、ソコソコしあわせでしょ。」
「そこそこね。ありがとう。」
そのやりとりを見ていて、真央も無造作にプレゼントらしいものを遊に差し出した。
「真央ちゃんのは?」
「カップケーキ?チョコマフィンかな。」
「おお。やるねぇ。手作り?遊、チョコゼロ回避だね。ありがたく思いなさいよ。」
「思ってるよ。ありがとう真央。」
「いいえ、どういたしまして。マキノさん今日は春樹さん来ないの?」
「どうかな。最近土曜日にジムに行ったりしてるし、そのまま来ないかも。」
「じゃあ、これ。マキノさんと春樹さんの分。」
真央は、遊に渡したものと同じラッピングのチョコマフィンをマキノに渡した。
「うわあ、ありがとう。女の子にはホワイトデーに何かするからね。」
「ヒロトさんは戻ってくるかなぁ。さっき、工房へ持って行けばよかった。」
「もうすぐ戻ってくるよ。そう言えば美緒ちゃんが来てないね。」
「今日、自動車の仮免許の試験うけてるって言ってたよ。」
「ほーそうだったのか。配達行ってくれる気満々だったりしてね。」
「マキノさんは、人を使う計算が早いからね。」
「何言ってるの、美緒ちゃんは自分とヒロトの将来を考えてるだけなんだからね。」
游の軽口にマキノが言い返した。
― ― ― ― ― ― ― ―
春樹は、最近の土曜日は、午前中はカヌー部ジュニアのお手伝いをして、午後からは自分のジムに行くようにしている。
昼はカフェに食べに行ってもいいのだが、店が忙しくしているのに邪魔するのも気が引けて、自宅で簡単なものを食べたりコンビニで買ったりするようになった。
適当に帰って来て、洗濯物を取り込んだり、ダラダラごそごそと過ごしていると、マキノが帰ってきた。
そういえば,今日はバレンタインだから早めに帰ってくると、昨日から宣言していた。
そんないいかげんな理由で早引けしていいんだろうかね。
マキノの店だから自由だけどさ。
「ただいま。これ、真央ちゃんからもらったよ。」
「お、カップケーキ?手作りか。真央がんばったな。遊はどうしてた?」
以前に直感で、真央遊に脈あり?と思ったことを思い出して聞いてみたが、マキノの返事はつれなかった。
「渡してたけど・・でも、これもヒロトにもみんな同じようなラッピングだったよ。差をつけてる感じもなかったし、みんなの前で平等に。」
「意識して平等にしたと思うね。オレは。」
「なんでそういうのがわかるの?というか、その予想は本当に本当なの?」
「根拠なんてないよ。はずれてても責任は取らないし。はは。」
無責任に笑った春樹の前に、どん とマキノが飲み比べセットの箱を食卓に置いた。
「んで、これは、わたしからのバレンタイン。」
「なになに?お。うわぉ。これは嬉しい。これスーパーにもたまに置いてあるけど買ったことなかったんだ。ちょっとお高めだろ?」
「そりゃ、普通に売ってる紙パックのよりはだいぶ高いけど、キラッと光る石のことを思えば激安だもの。」
「やったぁ・・。まだ夕食には早いけど,呑んでていい?」
「いいよ。先にお刺身だけ並べる?」
「うん。ちびちびやるから。マキノにも作ろうか。」
「わたしは、あとでいい。」
「そうか?んー。これ最高だなぁ。」
春樹は、気になっていた3本セットの中の1本を手に取り撫でるようにした。
最近、自分は焼酎が気に入っていて、オンザロックにしたり水割りにしたり、種類は特にこだわりはなくて、芋でも麦でも黒糖なんかも、どれも風味や味の違いを楽しんでいる。マキノが、ピンポイントに気になっていたのを選んだことが、偶然にしても自分の傾向をちゃんと読んでいるんだと少し感心した。
「・・よかった。よろこんでくれて。」
「愛だね、愛。」
「愛は、どうだかしらないけどさ。」
今日の献立はオレのリクエストでトロロ飯。マキノはオレがそれをリクエストするとメニューを全部和食にそろえようとする。カフェのメニューが洋風のことが多いので、和食が並ぶと新鮮だ。
全部そろってから食べ始めるのがいいのかな。と思ったが・・、せかせかと動くマキノを眺めたり、隣の部屋のつけっぱなしになっているTVを眺めたりしながら、焼酎をたしなむのも、・・・悪くない。
グラスに氷を入れながらマキノも誘ってみる。
「マキノもちょっと呑めば?」
「うん・・でものんじゃうと料理が進まなくなるもん。」
自分だけ焼酎の水割りを作って、たまり醤油を手皿に用意して、自分の席に落ち着いた。
マキノが並べた刺身に箸を伸ばした。
次の肴ができるまでのつなぎのつもりか、マキノは柿の種の小袋を開けた。
「まだ時間早いし・・慌てて進めなくていいって。」
「うん。わかってる。」
マキノが背中で返事をした。
しばらくすると、佐々木のじいちゃんにもらったと言ってた白菜のからしあえが出てきた。
ツン・・とからしの刺激が鼻にくる。
少し行儀は悪いが、春樹はテーブルに片肘をついた。
「春休みに入ったら土日に続いて休みをとってさ、2泊3日ぐらいで旅行しないか。」
と提案をした。
「旅行?」
「うん。4月は・・何かとバタバタするし、休みを1日だけとって、3月最後の金土日か、土日月がいいかな。」
「んー・・・そうだね。お店はどうしようかな・・・その頃はもう、遊も、真央も、未来も、・・・いないね。」
「・・そうだね。いないね。」
マキノは口をつぐんで、まな板で切っていた野菜をくるりと後ろを向いて鍋に入れた。
背中が、なんとなく丸まって見える。
・・何かに触れたかなぁ・・。
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