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御芳にて
もてなす
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マキノはリョウちゃんをそのまま家まで連れて帰って、リュックをおろすように勧めた。
日が傾いてきて、エアコンも効き始めて、暑さがちょっとマシになった。
「さっき夕ご飯を作り始めてたからね。・・続きをするから、ちょっと待ってて。」
「・・はい。」
マキノはささがきゴボウの続きを始めた。
リョウちゃんものっそりと横に立ってマキノの手の動きを観察している。
「おもしろい?」
「うん。」
ゴボウをささがき終えて、次の作業に移るときに、はたと気がついた。
「汗かいたでしょ。ごはんはすぐできるからシャワーでも浴びる?お湯を張ろうか?お湯につかったほうが疲れとれるんじゃない?」
「シャワーで、いいです・・。」
一度包丁を置いて、先にリョウちゃんをお風呂へと案内した。
「このシャンプーの匂い大好きなんだ。使ってね。タオルはこれ使えばいいよ。赤いのを回してしばらく待てば、ちょうどいいお湯が出るからね。」
「はい。」
リョウちゃんがシャワーをしている間に、自分は台所仕事をどんどん進めていく。献立どうしよう。サクラも来るし、きんぴらと、豚バラこんにゃくと、お味噌汁だけではちょっと寂しい。何か追加しよう。野菜はコールスローがさっぱりしていいかな。マグロのおさしみが冷凍庫にあった。足りなければ、お素麺でもゆがこうか。
キャベツを切って塩を振りしばらく置く。しんなりしてきたら、水分をギュッと絞ってハムとマヨネーズとはちみつであえたらコールスローのできあがり。こんにゃくは手でちぎってアクを抜きフライパンでちりちりと炒める。豚肉を投入して調味料を加えて水分が飛ぶまで炒める。簡単なレシピだが結構おいしいのだ。いつのまにかリョウちゃんがシャワーから戻っていて、さっきと同じように台所でつったったままマキノの動きを見学している。
「もうすぐできるから、テレビでも見てる?」
リモコンを渡したが、リョウちゃんはそのまま台所に居座った。
マキノは、リョウちゃんの動向は気にも留めずにそのまま作業を続ける。さっきささがいたゴボウは、牛コマも投入して炒め煮にして仕上げ。次は、スライサーでしゃしゃっと大根のつまをこしらえて、半解凍にしたお刺身を切ってバランの上に盛り付けた。庭で青シソを育てておけばよかったなぁと思いついた。そして、なめこのお味噌汁。そうめんの出汁は市販のものだけど、県内産のお素麺は細くて腰があっておいしい。
サクラが嬉しそうに食べる顔が思い浮かんで、先に自分が嬉しくなってきた。
「リョウちゃん。ごはんですよ。」
「・・はい。」
相変わらずリョウちゃんは口数が少ない。・・でも、最初よりはずいぶん表情が柔らかい。
「いただきます。」
「い・・いただきます。」
マキノがいただきますの挨拶をして、もぐもぐと食べ始めると、リョウちゃんもそのあと小さな声で真似をして、もそもそと食事を口へと運び始めた。
「これ、おいしいです。」
こんにゃくを口の中でもごもごとかみしめながら、リョウちゃんが言った。そういえば、自分から口を開いたのは今が最初かもしれないな。ごはんは気に入ったのかな。
「それはありがとう。たんとおあがり。」
リョウちゃんが食べているのを見ていると、お母さんになったような気分になってきた。
そのままふたりとも寡黙に食事を終えて、しばらくすると、サクラがたどりついた。
「こんばんはー。ごめんくださーい。」
丁度その時、マキノとリョウちゃんは、食後の夏みかんをむいていた。
「リョウちゃん心配したよ~。ここがマキノの新居かぁ。あ、お世話になったね、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「ここは、車が横付けできていいねぇ。」
「地面が広いのが取り柄なの。畑をつぶせばもっと停められるけどね。サクラちゃんも、ごはんはいかが?」
「えっ、いいのー!」
マキノがサクラのために取ってあった料理を冷蔵庫から出して、目の前に並べ始めると、サクラの目がキラキラと輝いた。
「うっはー。素敵・・。」
会社の近所で一人暮らしをしていた時と同じように、サクラはあたりまえのごとく食卓に座って「いただきまーす。」と、次々と口に放り込み始めた。
そして食べながら、マキノにはリョウちゃんのことを簡単に説明した。
サクラのお母さんと、リョウちゃんのお母さんと、今回リョウちゃんが滞在する予定だったO市のおばさんとが、三姉妹で、リョウちゃんは夏休みの間、おばさんちで過ごす予定になっているのだ。
サクラは、お刺身を食べ、豚コンニャクを食べ、ごはんをかきこんで、コールスローを食べ、お味噌汁を飲んだ。
食べる勢いが素晴らしい。スポーツマンみたい。
「サクラちゃん、ちゃんと噛んで食べようね・・。」
「んんん。わがっでるぅ。」
サクラは食事を終えて冷たい麦茶を飲みほした。
「ぷはー。ああおいしい。マキノのお料理好きだわぁ。」
「はいはい、それはどうもありがとう。」
「早くカフェ開業すればいいのに。」
「いやいや・・まだノウハウ積めてない気がするのよね。ここの改装資金も足りないし。」
マキノはサクラに、保健所でもらった要項をサクラに見せた。
サクラは、しばらくその書類に目を通して「ふむ。」とひとつうなずいて、自分の座っている場所からぐるっと部屋を見渡した。
「何か書くモノ、紙と鉛筆貸して。」
サクラは、マキノからルーズリーフと鉛筆を受け取ると、おもむろに立ち上がって間取りを描きながら家の中をぐるぐるとまわりはじめた。
「ふーん。・・・・これってさ、トイレだけお客さんも使えるようになんとかして、調理場と、こことを区切れるようにドアをつければ、いいだけじゃないかな。」
「えっ。なんて?」
サクラは、さらさらと現状の間取りをラフに書いたあと、いくつかの線を入れた。
「サクラさんて、どうしてそんな正確な図が書けるの?そんな才能初めて知ったよ。」
「才能かどうか知らないけど、物や建物の配置とか質量とか空間を把握するのがね、わりと得意なのよ。わたし。」
「それは、ええと、動物的なあれかな・・帰巣本能的な。」
「何言ってんの。ほらこれ見て、その要項に書いてある条件だけなら、こことここだけ、なんとかすればとりあえずは営業の許可は下りるね。」
「あ、ほんとだ。でも調理場とか座敷とか、今のままだと使い勝手悪いし・・。」
「本格的にやらなくても、週末だけっていうのもありじゃない?」
「週末営業・・・そ、そうか。その手もあるのか・・。」
一瞬、ちらりと何かが見えた気がした。
「でも、どうせ改装するなら、部分部分を少しずつするより、一気にやったほうが効率はいいから、そこんとこはよく考えたほうがいいかもしんないね。」
サクラの意外な才能に驚きつつ、視点を変えて家の中を見まわす。自分が考えている以外にも、いくつも方法はあることに気づかされた。サクラの言葉は、会社を辞めてカフェを始める時も背中を押してくれたのだ。本人にはそんな自覚はないだろうが・・。
マキノは、サクラの書いた図と家の中をもう一度見比べた。
あ・・。ふと、横でテレビを見ていたリョウちゃんが目に入った。
サクラとの話が弾んで、つい引き留めてしまったが、リョウちゃんも疲れているのか眠そうだ。そういえば、サクラもリョウちゃんを送ってこれから自宅まで長距離を運転しなきゃいけないのだった。
「明日は日曜日だし、二人とも泊まってく?」
「えーいいの?!遠慮しないよ? ね。リョウちゃん。」
「・・うん。」
「じゃあサクラちゃんのパジャマ代わりのTシャツ、出してあげるよ。リョウちゃんはお着替えあるんでしょ?保護者さん達にも連絡入れてね。」
「サンキューサンキュー。」
サクラは調子よくうなずきながらスマートフォンの文字をスタタタと打った。
お泊りを提案しておきながら、夜具が揃っていないので、マキノは、隣の座敷にマットレスや座布団や敷布団をいろいろと敷いて、タオルケットや肌布団や大きめのバスタオルを引っ張り出してきた。
サクラがそれを見て、楽しそうにクスクスと笑った。
「おもしろそうだねぇ。」
「ひとり暮らしゆえ、まともな夜具はそろってませんよ。すみませんね。」
「夏なんだからなんでもいいよ。」
「迷子になって疲れてるでしょ。今日は早く寝ちゃおう。」
「うんうん。それがいい。」
その日は、さっさと片づけを済ませて、川の字になって寝ることにした。
日が傾いてきて、エアコンも効き始めて、暑さがちょっとマシになった。
「さっき夕ご飯を作り始めてたからね。・・続きをするから、ちょっと待ってて。」
「・・はい。」
マキノはささがきゴボウの続きを始めた。
リョウちゃんものっそりと横に立ってマキノの手の動きを観察している。
「おもしろい?」
「うん。」
ゴボウをささがき終えて、次の作業に移るときに、はたと気がついた。
「汗かいたでしょ。ごはんはすぐできるからシャワーでも浴びる?お湯を張ろうか?お湯につかったほうが疲れとれるんじゃない?」
「シャワーで、いいです・・。」
一度包丁を置いて、先にリョウちゃんをお風呂へと案内した。
「このシャンプーの匂い大好きなんだ。使ってね。タオルはこれ使えばいいよ。赤いのを回してしばらく待てば、ちょうどいいお湯が出るからね。」
「はい。」
リョウちゃんがシャワーをしている間に、自分は台所仕事をどんどん進めていく。献立どうしよう。サクラも来るし、きんぴらと、豚バラこんにゃくと、お味噌汁だけではちょっと寂しい。何か追加しよう。野菜はコールスローがさっぱりしていいかな。マグロのおさしみが冷凍庫にあった。足りなければ、お素麺でもゆがこうか。
キャベツを切って塩を振りしばらく置く。しんなりしてきたら、水分をギュッと絞ってハムとマヨネーズとはちみつであえたらコールスローのできあがり。こんにゃくは手でちぎってアクを抜きフライパンでちりちりと炒める。豚肉を投入して調味料を加えて水分が飛ぶまで炒める。簡単なレシピだが結構おいしいのだ。いつのまにかリョウちゃんがシャワーから戻っていて、さっきと同じように台所でつったったままマキノの動きを見学している。
「もうすぐできるから、テレビでも見てる?」
リモコンを渡したが、リョウちゃんはそのまま台所に居座った。
マキノは、リョウちゃんの動向は気にも留めずにそのまま作業を続ける。さっきささがいたゴボウは、牛コマも投入して炒め煮にして仕上げ。次は、スライサーでしゃしゃっと大根のつまをこしらえて、半解凍にしたお刺身を切ってバランの上に盛り付けた。庭で青シソを育てておけばよかったなぁと思いついた。そして、なめこのお味噌汁。そうめんの出汁は市販のものだけど、県内産のお素麺は細くて腰があっておいしい。
サクラが嬉しそうに食べる顔が思い浮かんで、先に自分が嬉しくなってきた。
「リョウちゃん。ごはんですよ。」
「・・はい。」
相変わらずリョウちゃんは口数が少ない。・・でも、最初よりはずいぶん表情が柔らかい。
「いただきます。」
「い・・いただきます。」
マキノがいただきますの挨拶をして、もぐもぐと食べ始めると、リョウちゃんもそのあと小さな声で真似をして、もそもそと食事を口へと運び始めた。
「これ、おいしいです。」
こんにゃくを口の中でもごもごとかみしめながら、リョウちゃんが言った。そういえば、自分から口を開いたのは今が最初かもしれないな。ごはんは気に入ったのかな。
「それはありがとう。たんとおあがり。」
リョウちゃんが食べているのを見ていると、お母さんになったような気分になってきた。
そのままふたりとも寡黙に食事を終えて、しばらくすると、サクラがたどりついた。
「こんばんはー。ごめんくださーい。」
丁度その時、マキノとリョウちゃんは、食後の夏みかんをむいていた。
「リョウちゃん心配したよ~。ここがマキノの新居かぁ。あ、お世話になったね、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「ここは、車が横付けできていいねぇ。」
「地面が広いのが取り柄なの。畑をつぶせばもっと停められるけどね。サクラちゃんも、ごはんはいかが?」
「えっ、いいのー!」
マキノがサクラのために取ってあった料理を冷蔵庫から出して、目の前に並べ始めると、サクラの目がキラキラと輝いた。
「うっはー。素敵・・。」
会社の近所で一人暮らしをしていた時と同じように、サクラはあたりまえのごとく食卓に座って「いただきまーす。」と、次々と口に放り込み始めた。
そして食べながら、マキノにはリョウちゃんのことを簡単に説明した。
サクラのお母さんと、リョウちゃんのお母さんと、今回リョウちゃんが滞在する予定だったO市のおばさんとが、三姉妹で、リョウちゃんは夏休みの間、おばさんちで過ごす予定になっているのだ。
サクラは、お刺身を食べ、豚コンニャクを食べ、ごはんをかきこんで、コールスローを食べ、お味噌汁を飲んだ。
食べる勢いが素晴らしい。スポーツマンみたい。
「サクラちゃん、ちゃんと噛んで食べようね・・。」
「んんん。わがっでるぅ。」
サクラは食事を終えて冷たい麦茶を飲みほした。
「ぷはー。ああおいしい。マキノのお料理好きだわぁ。」
「はいはい、それはどうもありがとう。」
「早くカフェ開業すればいいのに。」
「いやいや・・まだノウハウ積めてない気がするのよね。ここの改装資金も足りないし。」
マキノはサクラに、保健所でもらった要項をサクラに見せた。
サクラは、しばらくその書類に目を通して「ふむ。」とひとつうなずいて、自分の座っている場所からぐるっと部屋を見渡した。
「何か書くモノ、紙と鉛筆貸して。」
サクラは、マキノからルーズリーフと鉛筆を受け取ると、おもむろに立ち上がって間取りを描きながら家の中をぐるぐるとまわりはじめた。
「ふーん。・・・・これってさ、トイレだけお客さんも使えるようになんとかして、調理場と、こことを区切れるようにドアをつければ、いいだけじゃないかな。」
「えっ。なんて?」
サクラは、さらさらと現状の間取りをラフに書いたあと、いくつかの線を入れた。
「サクラさんて、どうしてそんな正確な図が書けるの?そんな才能初めて知ったよ。」
「才能かどうか知らないけど、物や建物の配置とか質量とか空間を把握するのがね、わりと得意なのよ。わたし。」
「それは、ええと、動物的なあれかな・・帰巣本能的な。」
「何言ってんの。ほらこれ見て、その要項に書いてある条件だけなら、こことここだけ、なんとかすればとりあえずは営業の許可は下りるね。」
「あ、ほんとだ。でも調理場とか座敷とか、今のままだと使い勝手悪いし・・。」
「本格的にやらなくても、週末だけっていうのもありじゃない?」
「週末営業・・・そ、そうか。その手もあるのか・・。」
一瞬、ちらりと何かが見えた気がした。
「でも、どうせ改装するなら、部分部分を少しずつするより、一気にやったほうが効率はいいから、そこんとこはよく考えたほうがいいかもしんないね。」
サクラの意外な才能に驚きつつ、視点を変えて家の中を見まわす。自分が考えている以外にも、いくつも方法はあることに気づかされた。サクラの言葉は、会社を辞めてカフェを始める時も背中を押してくれたのだ。本人にはそんな自覚はないだろうが・・。
マキノは、サクラの書いた図と家の中をもう一度見比べた。
あ・・。ふと、横でテレビを見ていたリョウちゃんが目に入った。
サクラとの話が弾んで、つい引き留めてしまったが、リョウちゃんも疲れているのか眠そうだ。そういえば、サクラもリョウちゃんを送ってこれから自宅まで長距離を運転しなきゃいけないのだった。
「明日は日曜日だし、二人とも泊まってく?」
「えーいいの?!遠慮しないよ? ね。リョウちゃん。」
「・・うん。」
「じゃあサクラちゃんのパジャマ代わりのTシャツ、出してあげるよ。リョウちゃんはお着替えあるんでしょ?保護者さん達にも連絡入れてね。」
「サンキューサンキュー。」
サクラは調子よくうなずきながらスマートフォンの文字をスタタタと打った。
お泊りを提案しておきながら、夜具が揃っていないので、マキノは、隣の座敷にマットレスや座布団や敷布団をいろいろと敷いて、タオルケットや肌布団や大きめのバスタオルを引っ張り出してきた。
サクラがそれを見て、楽しそうにクスクスと笑った。
「おもしろそうだねぇ。」
「ひとり暮らしゆえ、まともな夜具はそろってませんよ。すみませんね。」
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どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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