勇者奇譚 三日月の大魔剣士

閻魔カムイ

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エーテル

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「さて、まずエーテルとは何か。これは生物が持つ、魂から生じる生体エネルギー全般を指す言葉だ。中国だと気と呼ばれてる。」



「知らない奴は居ないと思うが、エーテルは三種類ある。基本のエーテルである霊力、悪魔や天使が使う魔力、仙人や神々が使う天力。そしてこれ等は、己の身体や武器、術式に纏わして、身体能力の向上や、武器の破壊力を上げたり、術式を強化したり、回復にも応用出来るようになる。



「この技術をエンチャントと呼ぶ。霊力は物質に作用し、魔力は術式に、天力は魂に。物理的戦闘ならば霊力、術式での戦闘ならば魔力、回復なら天力だな。基本はこの使い方だ。だが、例外もあり、中には魔力や天力を物理的強化に用いる魔術師も居る。通常の霊力に加えて、魔力や天力を含めた総合量が物理的強化に加算される。これと同じことが、術式強化や回復でも出来る。」



「なのでこの三つ全てを使いこなすことが、一流の魔術師になる条件だ。」

「今日は霊力を纏い、鉄の甲冑を破壊する訓練をしてもらう。それでは、外へ向かうぞ。」初日から実戦的な授業だな。頑張ろう。



学生らしく、生徒達は会話に夢中になっている。昨日テレビ見た、とか誰々が好きなどという他愛の無い話題だ。



「静粛に!まず、俺が見本を見せる。使うのは安価な鋼で出来た武器だ。剣、槍、斧、手甲等、何でもある。好きなのを使え。では、実演するぞ。」



迅先生は、大きく息を吸い込む。それと同時に、手にした剣に力を流し込む。



すると、剣全体に青い半透明のオーラのようなモノが見えた。そして、鎧に兜割りを一閃。



金属音が響き渡り、見事に鎧が半分に割れた。「では順番にやっていくぞ。まずはカイン、お前からだ。」



「あいよ、先生。」カインも同じように息を吸い込み、精神統一する。先生のオーラより、今度ははっきりと見える。「スゥゥゥゥゥゥ...はっ!」拳での一撃が見事に炸裂し、鎧は粉々になった。



「どうだ先生、中々のモノだろ?」



「エーテル魔術の名門、アドム家の者らしく、見事なモノだった。次は新人の勇大にやってもらおうか。」



「はい。」



俺は先ほどのように息を吸い、霊力を込めた。だが、青いオーラは出てこない。ならば、これはどうだ?俺は霊力の込め方を変えた。すると、赤と緑のオーラが混ざり合い、黒色のオーラに変化した。「シッ!」剣を横薙ぎに一閃、無事、鎧は割れた。



「ほう。勇大は霊力こそ微少なモノだが、赤き魔力と緑の天力の総量は通常よりも多く、霊力の不足を補っているな。これは珍しいパターンだ。中々有望かもしれん。」



カインは目を輝かせて、俺を見ていた。「スゲェじゃん、勇大!前日までほぼ一般人だったのに、いきなり悪魔や仙人の力を使いこなすなんて!しかも黒いオーラなんて、ダークでカッコいいじゃねぇか!」



俺は褒められて、少し照れる気持ちになった。「いやいや、カインの霊力には及ばないよ。俺はまだまだ未熟だ。」そんなやり取りをしてる内に、生徒達は次々と練習をこなしていった。一時間程経った。



「よし、今日のエーテル魔術の練習はここまでだ。次は座学の時間だから、10分間しっかり休むように。」俺は剣を磨いて元の場所に戻し、校舎へと向かった。



1日分の授業が終わった。魔術師達がどう生まれ、どのように基礎が構築されていったという歴史の授業は、中々面白かった。



「ふう、疲れた。ミーシャの部屋にでも行くか。」



扉を開けたら、そこにはカインとアリスも居た。「お疲れ様、みんな。」



「勇大くんもお疲れ様。私とミーシャは、全然霊力を纏わせられなかったよ。魔力だけはあるんだけど、それを物理的な物質にエンチャントするのはかなり高度な技術だから、難しいよ。勇くんはいきなり出来て凄いなぁ。」



うんうんと、ミーシャも頷いている。



「コツとしては、怒りを物質に込める感じかな。ミーシャとアリスは、あまり戦いを好まない温厚な性格に見えるし、出来ないのは仕方ないよ。術式等の得意分野を伸ばしていこう。」



「そうだね。そういえば、勇大くんは何でこの学校に来たの?」



俺は言葉に詰まった。だけど、この学校に来てから自信も付いたし前より勇気も増えた。



よし、ここで話そう。



俺は重たい口を開いた。「俺には弟が居てな。名前は玲。そいつが事故で亡くなって、親父は俺にストレスをぶつけるようになった。毎日が地獄だった。顔を合わせれば暴言を吐かれて、機嫌が悪ければ殴られる。それで小学校にも居場所が無かった。そこでも喋らないのが気味が悪いと思われてたらしく、無視や馬鹿にされるのが当たり前だった。」



ミーシャとアリスは、涙で目が潤んでいた。この二人は優しいな。カインは真面目な顔で、黙って聞いていた。



「それで、親父はある日俺にこう言った。お前が玲の代わりに死ねば良かったのにと。それ以来、俺は部屋に籠って誰とも口をきかなくなった。結局、俺はただ逃げたかった。だから、この学校に来た。これが理由だ。」



ミーシャとアリスは、涙を流していた。



カインは長く閉ざしていた口をようやく開けた。



「今までよく耐えたな、勇大。俺は勉強も出来ないし、頭が良いとは言えない人間だけど、お前が地獄のような生活にひとりぼっちで、ずっと耐え続けてきたということは分かる。魔力と天力が使えたのも、そこから獲得した才能だ。親が憎かったよな。だけど、お前は自分がトラウマを抱えてるというのを表面に出さない。俺は大丈夫だ、と強がってな。でも、もう我慢する必要は無いんだぞ。いつでも、班の俺達を頼れ。俺達は、もう家族同然の関係なんだから。」



「ああ、本当に、ありがとうな、みんな。」俺は、自然と涙が溢れていた。きつく縛り上げた心が、誰かに受容されることで楽になっていく。これが安らぎという気持ちか。しばらく、俺はこの感情を忘れていた。



消灯時間が来た為、解散し、俺は床についた。今日はいつもよりよく眠った。
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