パッサージュで朝食を ~パリで出会った運命の人~

朝賀 悠月

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5 -Cinq-

パリで楽しむ日本のパン屋さん

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 メロンパンを専門に扱っているこのお店は、日本で売られている普通のメロンパンに加えて、切り口に生クリームやフルーツを挟んだような可愛いデコレーションのものも売られていた。

「うわぁ……どれも可愛い。あ、これなんだろ。ゴマ? 緑のは抹茶クリームなんだ。目がついてる、かわいい~」

 つい日本語で呟きながら商品を眺めていたら、テオが僕のそばに寄り添うように立った。

「迷ってる?」
「うん、どれも美味しそうで、かわいくて」
「食べたいもの全部でもいいよ」
「え、でも……」
「今日は俺の奢りだから、ね?」

 顔を覗き込んで微笑まれる。ちょっと大人な表情もまた、かっこいいと思ってしまう。

「……め、メルシー」

 ドキッとしたのを悟られたくなくて、つい顔をそらして小さな声でお礼を言ったら、テオさんは気にする素振りもなく僕の頭を優しく撫でて、「どれにしようかな~」と言いながらメロンパンを選んでいく。

「ん、まずは普通のメロンパンだな。優理は? 全部?」

 振り返ってニヤリと笑う。これは彼のジョークだとすぐにわかった。

「全部じゃない~。普通のと、生クリームとイチゴが挟んであるやつと、ゴマと抹茶クリームのやつ」
「ほぼ全部じゃん」

 そう言ってクスクス笑うから、僕はテオさんの肩をバシッと叩いた。
 店員さんは、日本語で「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」と接客する。日本で育って来た僕にとってはすごく親しみやすくて、ホッとする言葉。テオさんの反応が気になって、店を出てチラリと顔を見てみたら、「良いな。日本語って」と言いながら口角が上がっていた。

「この辺り、もう少し歩いてみようか」
「うん」

 ここからずっと真っ直ぐ歩いていくと、チュイルリー公園に着くらしい。そこを目指しながら歩いていると、すぐそばにメロンパンのお店系列のレストランとパン屋さんがあった。

「へぇ~、系列ってことは日本のパンが食べられるのかな」
「入ってみる?」
「いい?」
「もちろん」

 店内に入ってみると、やっぱり日本のパンが並んでいる。

「Wow! テオ見て! 日本のパンがいっぱい! わぁ、チョココロネもある~」
「素晴らしい! なんだこれ! カラフルだし本当に色んな種類があるな!」
「テオ、ほらこれ! 惣菜パン!」
「おお! これが!」

 僕たちは大興奮で、結局ここでもパンを買った。テオなんて勉強のためにといって店にある日本のパンを全部買ったりして。なんなら、僕よりはしゃいでた。

「入ってみて良かったね」
「日本に行かなきゃ食べられないと思ってたから、嬉しいな」
「唐揚げ弁当とかトンカツ弁当もあるし、ショートケーキも美味しそうだったなぁ。僕、ここは通っちゃうかもしれない」
「あ。ここ来るなら俺とだぞ。リュカと二人きりとかダメだからな」
「なんで?」
「なんでって……リュカに取られたくないからだよ、ユウリのこと」

 独占欲全開で口を尖らせる。そんなテオの一面も、愛おしいなと思ってしまう自分がいる。

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