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3・勇気を出して一歩前進
じゃれ合いと、ハグ。
しおりを挟む「んー……なんでだろうね?」
俺の質問に、雄代くんは一瞬目を見開いた。そして口を尖らせ、考えを巡らせるように上を向く。
「仲良くなりたいからかな!」
パッと見せてくれた爽やかな笑顔が、純粋な子供みたいだと思った。
「……ふっ! あはは!」
その可愛らしさに当てられて、俺は堪らず息を吹き出す。声を上げて笑ってしまったら、雄代くんが襲い掛かるように抱き着いてきて、俺を擽り始めた。
「あ! 笑ったな~こらっ」
「だって雄代くん、小学生みたいに言うから、っはは!」
「なんでだよ! 合ってるでしょうが!」
「っでもなんか、言い方が、っくふふ」
「このこのっ。じゃあ舞音くんは俺と仲良くなりたくないんですかー」
「なりたいよ、なりたい!」
そう言った瞬間ピタッと擽りが止まり、俺の体はリュックごと、雄代くんの腕に優しく包まれていた。
「……よかった」
雄代くんの安堵する声が、直接耳の中に届く。
「ゆうだい、くん?」
俺の声には答えずに、雄代くんは俺をハグしたまま動かない。
手持無沙汰に困ってなんとなく彼の腰のあたりに両手を添えたら、ハグをし直すように腕が動いて、さっきよりも密度が高くなった。
ハグしたままで黙っていると、お互いの鼓動が胸から響いて浸透していくみたいだ。そんなのは錯覚だって、わかってるんだけど。
「ごめん! 嬉しくてハグしちゃった」
背中にあった両手がパッと離れたと思ったら、その勢いで二の腕を掴まれて体を引き剥がされた。
目の前にあるのは、気恥ずかしそうに苦笑する顔。
「びっくりした……」
「だよね。俺もびっくりした」
「え、自分で?」
「そう、自分で」
苦く笑いながら本当に戸惑っている雄代くんが面白くて、ムズムズと湧き上がってくる思いのまま、またつい体を揺らして笑ってしまう。
すると雄代くんの顔も俺に釣られるかのように、自然な笑顔へと変わっていく。
「うん。やっぱり、笑ってるほうがいいよ。舞音くんは」
ドキッとした。雄代くんの手が、ふわりと俺の髪を梳くように撫でるから。
「よしっ、じゃあみんなが来る前に、動画撮っちゃお!」
「あ、うん!」
何事もなかったように俺から離れて、雄代くんは入口そばの荷物置き場へリュックを置く。俺もそれに倣ってリュックを置いて、中からジャージのズボンとダンスシューズを取り出して手早く着替えた。
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