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独覚女と夢使いの少年(あらすじ編)
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独覚女と夢使いの少年(あらすじ編)
幼いころから、少女には不思議な力があった。
「霊妙なるモノ」が視えるのだ。
しかし両親は、いや、両親もそのテの家系の人だったので、迫害するようなこともなく、
「それは、私達に代々授かる力。だから、大事に、善い事につかいなさい」といった。
しかしその後、この両親は事故で亡くなり、少女は親類の老夫婦に引き取られた。
この親類の老夫婦は、穏やかで良い人であったが、霊妙には無縁だった。
なので少女は、独自にその力を制御するすべを見出すしかなかった。
修験者だったという、先祖に伝わる八角棒が、彼女の得物となり、
それに「力」をやどして振りかざすと、悪霊の類-彼女はそれを気配で察し、判別できるほどに「視える」ようになっていた。-は消滅するか、退散した。
成長した彼女は悪魔祓い的な退魔をしばしば行ったが、それで金銭をもらうことはしなかった。
少なくとも、老夫婦が揃って亡くなるまではそうだった。
彼女は学校を出ていない。
差別、奇視されてから、老夫婦が行かせなかったのだ。
他の親類は、彼女に好意的ではなかったので、困った彼女は悪魔祓いをしながらの旅をすることにした。
さすがに、路銀がいるので、無料というわけにはいかなくなったが、彼女の力は強いようで、大抵の悪霊は、彼女に退治されていった。
しかし、こういう仕事には、変わったケースも中にはあった。その極めつけが、「夢の中に逃げ込んだ息子を、助けて欲しい」という、少年の父親からの強い願いだった。
彼女は、昏睡状態の少年の手を握ると、その大方を察した。
この少年は、人間不信になり、夢の中に逃げ込んだ。それも、よくわからない系統の「術」を使って。
無論、独覚で力を使っている彼女も独自の系統の術を使っているわけなのだが、少年の「それ」は変わっていた。
「夢」を自由に操れるのだ。今はまだ、本人の中でしか使われていないが、他の人間の「夢」にも多分応用できるだろう。
-「危険だ」-
そう、彼女は直感した。
-しかし、いい方にこの力を使えば、この少年は優秀な退魔士になれる-とも確信した。
悪霊は、主に「心」や「夢」につくものだから。
彼女は、人払いすると、手を握ったまま、意識を彼の下に送った。
「彼」はそこでは旅人だった。そして、優秀な召喚士でもあった。
彼は、西洋の英雄的な姿の「使い魔」-彼は「キャラクター」と呼んでいた-を用い、多種多様なそれをもって、「自分に都合のいい冒険」を夢の中で旅していた。
彼女が諭しても、聞く耳をもたず、時には攻撃さえためらわなかった。反撃して倒した「キャラクター」は退却して次に会った時には復活したのかまた出てきた。
激戦の末、彼を説得-交渉ともいえる-を果たして、彼を起こしたとき、彼は肉体的に相当衰弱していた。
事の詳細を彼の父親に話すと、彼の父親は彼女に、
「この子が回復したら、弟子に使ってやって欲しい」といいだした。
確かに、このテの戦いにおいては、彼は戦力になりうる。逆を言えば、悪用すれば危険な力でもあるので、
彼女は、不本意ながらも少年を弟子にすることにした。
とはいえ、彼女も独覚なので、教えるのは困難を伴った。少年は、「こちら側」の知識については豊富だったので、主に、精神的な心構えを叩き込むこととなった。
彼は悪魔祓いにおいて、無類の力を発揮した。彼女は特殊な「銀盤」ごしに彼の戦いぶりを見たが、
彼の用いる勇者的な「使い魔」達が、対象の「夢」つまり「心の世界」で、ついた悪霊を、剣で、魔法で、
圧倒的な数とバリエーションで、滅ぼすさまは、とても半人前とは思えないものであった。
そうして、おおよそ「合格」-あくまで彼女的な判断ではあるが-といえるくらいにまで上達した少年は、今度は自分は熱病になってしまった。彼女に対して、師に対する憧れ以上の感情を抱いてしまったのである。-俗にいう、「恋わずらい」というものだ。
「女性なんて、他にいくらでもいるでしょう。私である必要はないわ」
「あんたじゃなければダメなんだ!俺を理解して、救って、この道を示してくれたあんたじゃないと!」
彼女は、ふう、とため息をついて、「ダメダメ、他を当たりなさい」というが、少年も引かない。
「今も、これからも、俺はあんたの役に立つ!そして、必ず、幸せにする!それじゃあ、いけないか?」
-不器用だが、本気なのは彼女にも伝わった。そして、これを拒否したら、この少年は、また人間不信になるかもしれない。この「夢」を操る力も悪用するようになるかもしれない-と彼女は思い、とりあえずこういうことにした。
得物の八角棒で、少年の頭を軽くこづき、
「そういうセリフは、もっと修練して、私を超える位になってからいいなさい。率直にいうと、十年早いって奴ね」
いわゆる、延長戦というやつだ。これで、この少年は、当分の間、真面目に修練しながら私と、悪魔祓いを続けるだろう。少し、ずるい話ではあるが。
少年は、こう口にした。
「絶対、そのうち、あんたを超えて、逆にホレさせてみせるから、覚悟しとけよ!」と。
こうして、夢を旅していた少年は、彼女の弟子、兼貴重な戦力として、各地で悪魔祓いをして、共に旅するのであった。やがて成長した彼は、師である独覚女を超えてまたひと悶着あるのだが、それはまた、別の話である。
(了)
幼いころから、少女には不思議な力があった。
「霊妙なるモノ」が視えるのだ。
しかし両親は、いや、両親もそのテの家系の人だったので、迫害するようなこともなく、
「それは、私達に代々授かる力。だから、大事に、善い事につかいなさい」といった。
しかしその後、この両親は事故で亡くなり、少女は親類の老夫婦に引き取られた。
この親類の老夫婦は、穏やかで良い人であったが、霊妙には無縁だった。
なので少女は、独自にその力を制御するすべを見出すしかなかった。
修験者だったという、先祖に伝わる八角棒が、彼女の得物となり、
それに「力」をやどして振りかざすと、悪霊の類-彼女はそれを気配で察し、判別できるほどに「視える」ようになっていた。-は消滅するか、退散した。
成長した彼女は悪魔祓い的な退魔をしばしば行ったが、それで金銭をもらうことはしなかった。
少なくとも、老夫婦が揃って亡くなるまではそうだった。
彼女は学校を出ていない。
差別、奇視されてから、老夫婦が行かせなかったのだ。
他の親類は、彼女に好意的ではなかったので、困った彼女は悪魔祓いをしながらの旅をすることにした。
さすがに、路銀がいるので、無料というわけにはいかなくなったが、彼女の力は強いようで、大抵の悪霊は、彼女に退治されていった。
しかし、こういう仕事には、変わったケースも中にはあった。その極めつけが、「夢の中に逃げ込んだ息子を、助けて欲しい」という、少年の父親からの強い願いだった。
彼女は、昏睡状態の少年の手を握ると、その大方を察した。
この少年は、人間不信になり、夢の中に逃げ込んだ。それも、よくわからない系統の「術」を使って。
無論、独覚で力を使っている彼女も独自の系統の術を使っているわけなのだが、少年の「それ」は変わっていた。
「夢」を自由に操れるのだ。今はまだ、本人の中でしか使われていないが、他の人間の「夢」にも多分応用できるだろう。
-「危険だ」-
そう、彼女は直感した。
-しかし、いい方にこの力を使えば、この少年は優秀な退魔士になれる-とも確信した。
悪霊は、主に「心」や「夢」につくものだから。
彼女は、人払いすると、手を握ったまま、意識を彼の下に送った。
「彼」はそこでは旅人だった。そして、優秀な召喚士でもあった。
彼は、西洋の英雄的な姿の「使い魔」-彼は「キャラクター」と呼んでいた-を用い、多種多様なそれをもって、「自分に都合のいい冒険」を夢の中で旅していた。
彼女が諭しても、聞く耳をもたず、時には攻撃さえためらわなかった。反撃して倒した「キャラクター」は退却して次に会った時には復活したのかまた出てきた。
激戦の末、彼を説得-交渉ともいえる-を果たして、彼を起こしたとき、彼は肉体的に相当衰弱していた。
事の詳細を彼の父親に話すと、彼の父親は彼女に、
「この子が回復したら、弟子に使ってやって欲しい」といいだした。
確かに、このテの戦いにおいては、彼は戦力になりうる。逆を言えば、悪用すれば危険な力でもあるので、
彼女は、不本意ながらも少年を弟子にすることにした。
とはいえ、彼女も独覚なので、教えるのは困難を伴った。少年は、「こちら側」の知識については豊富だったので、主に、精神的な心構えを叩き込むこととなった。
彼は悪魔祓いにおいて、無類の力を発揮した。彼女は特殊な「銀盤」ごしに彼の戦いぶりを見たが、
彼の用いる勇者的な「使い魔」達が、対象の「夢」つまり「心の世界」で、ついた悪霊を、剣で、魔法で、
圧倒的な数とバリエーションで、滅ぼすさまは、とても半人前とは思えないものであった。
そうして、おおよそ「合格」-あくまで彼女的な判断ではあるが-といえるくらいにまで上達した少年は、今度は自分は熱病になってしまった。彼女に対して、師に対する憧れ以上の感情を抱いてしまったのである。-俗にいう、「恋わずらい」というものだ。
「女性なんて、他にいくらでもいるでしょう。私である必要はないわ」
「あんたじゃなければダメなんだ!俺を理解して、救って、この道を示してくれたあんたじゃないと!」
彼女は、ふう、とため息をついて、「ダメダメ、他を当たりなさい」というが、少年も引かない。
「今も、これからも、俺はあんたの役に立つ!そして、必ず、幸せにする!それじゃあ、いけないか?」
-不器用だが、本気なのは彼女にも伝わった。そして、これを拒否したら、この少年は、また人間不信になるかもしれない。この「夢」を操る力も悪用するようになるかもしれない-と彼女は思い、とりあえずこういうことにした。
得物の八角棒で、少年の頭を軽くこづき、
「そういうセリフは、もっと修練して、私を超える位になってからいいなさい。率直にいうと、十年早いって奴ね」
いわゆる、延長戦というやつだ。これで、この少年は、当分の間、真面目に修練しながら私と、悪魔祓いを続けるだろう。少し、ずるい話ではあるが。
少年は、こう口にした。
「絶対、そのうち、あんたを超えて、逆にホレさせてみせるから、覚悟しとけよ!」と。
こうして、夢を旅していた少年は、彼女の弟子、兼貴重な戦力として、各地で悪魔祓いをして、共に旅するのであった。やがて成長した彼は、師である独覚女を超えてまたひと悶着あるのだが、それはまた、別の話である。
(了)
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