ブレードシスター短編「剣と覚悟」

夢月 愁

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「剣と覚悟」

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 ミラリア達「ブレードシスター」一行は、冒険者ギルドでもある特務兵団「ロウブレイド」の団長である赤髪に眼帯の女団長ソレーヌの命で、冒険者としての初仕事として、サイアスという「悪魔に魂を売って力を付けた」という男を探すこととなった。

 「何でもかなりの罪を負っているという。無理とみたら捕縛でなくてもかまわないぞ」との言葉で、要は「危なくなるようなら成敗して構わない」と言う事なのだろう、とミラリアは解釈した。

 「情報収集はまかせて、その代わり荒事はたのむよ」と言い、一行の一人「トリックスター」を自称する手品師兼盗賊のロイザードは、巧みな変装で様々に姿を変えて、首都ラクティにて老若男女から情報を集めて、ラクティの簡易宿屋に待機している修道女剣士ミラリアと仮面の白騎士シルヴァンに報告をした。

 「お待たせ。ラクティの西にある、「廃都メビウス」でそいつの姿を見たという冒険者がいたよ。団長の情報と照らし合わせてみたけど、十中八九間違いないよ」

 「その男には、取り巻きとかはいるの?まさか一人じゃないわよね?」

 ミラリアの問いに、ロイザードは、表情を曇らせる。

 「死鬼たちが一緒さ。元は悪魔に魂を食われて、動く死体となった犠牲者だ。君が聖術の腕の立つシスターなら、救ってやってほしいけどね」

 「私は戒めを破って、剣を取った修道女。癒しの聖術が使えるあたり、まだ信奉する女神ルナス様には見放されていないようだけど、いつ使えなくなってもおかしくない。だから、私の救いはこの剣でするわ」

 決意に満ちたミラリアの覚悟に、横で聞いていたシルヴァンは感心したようで、

 「君の剣は、なにより彼らの救いになるさ。私も多少は聖術の心得はあるから、もし君の術の力が失われたら、今度は私が代わりに使おう。だから君は、自分の信じるように動けばいい」

 そしてロイザードが方針をまとめる。

 「荒事は、さっきも言ったけど、二人に任せるよ。僕は廃都の入り口で待ってるから、上手く死鬼を蹴散らして、サイアスを倒してくるんだ」

 「分かったわ」
 「任せてくれ」

 二人はうなずき、こうして三人は、西の廃都メビウスに向かった。

                     ☆

 -廃都メビウスは、かつては古代王国の首都であったといわれているが、実態は不明で、ゴーストタウンと化しており、道にあぶれたもの達が、住み着いている闇の巣窟である-

 三人は廃都メビウスに着くと、入口に荷物とロイザードを残す形をとり、ミラリアは太刀を、シルヴァンは長剣を構えて、警戒しつつ、奥に向かった。

 周囲の建物から、陰湿な視線を感じつつも、二人は気にせずに奥に進み、その中央広場に着いた。

 広場では、件の痩せぎすのローブの男、サイアスが、死鬼の群れを率いて二人を待ち構えていた。

 「また冒険者か、死鬼の群れのエサにしてくれる。太刀など持ったにわかシスターに、こいつらの相手が務まるかな?」

 嗤うサイアスに、ミラリアは毅然とした面持ちで言う。

 「生憎ね。私は女神を信奉しているけど、同じ位に剣も頼りにしているの」

 そして、ミラリアは愛用の黒太刀「黒牙」を以て、死鬼の群れに斬り込んだ。シルヴァンも長剣を持って後に続く。               
                      
                     ☆

 ミラリアの「黒牙」による神速の斬撃は、その抜群の切れ味をもって、死鬼達を次々と袈裟斬り、胴斬り、さらには縦に両断すらしてのけ、サイアスが茫然とする中で、次々と死鬼は数が減り、そして、ついには殲滅された。

 サイアスはミラリアをただのにわかシスターと侮っていた認識を改めざるを得なかった。が、それは既に手遅れだった。驚愕は恐怖に変わり、腰を抜かして、後ずさっていう。

 「た、助けてくれ、そこに死者からかき集めた五万の金貨がある。そもそも、あんたシスターだろ?太刀で殺生なんてしていいのか?罰があたるぞ」

 ミラリアの眼に険が宿る。そして一時だけ、前世の「魔剣士ヘルヴァルド」の一面を出す。声色が、重いものに変わる。

 「ならばこれは、ソルドガルの将、魔剣士ヘルヴァルドの太刀と知れ。冥府でその行いを悔いるがいい」

 そして、サイアスは、このシスターの背後に、太刀を持った長身の男の影を垣間見つつ、その言の一割も理解できないまま、黒太刀「黒牙」で、その首を刎ねられた。

                      ☆
 ミラリアとシルヴァンは、殲滅した死鬼とサイアスの遺骸を、その場を以って焼却した。

 そして入口で待っているロイザードと合流すると、自分達の所属する「ロウブレイド」のある砦へ帰還した。

 サイアスの五万の金貨は、報告を聞いた団長ソレーヌの計らいで、ラクティアの貧困層への義援金となった。

 そして、三人は、砦の四方にある見張りの塔の連絡通路の一角で夕日に当たっていた。

 そこでミラリアは自嘲して言う。

 「だめね、私。修道女のくせに、太刀を振るうしか能がなくて。でも、たとえ女神に見放されたとしても、もう、この生き方は変えられないわ」

 シルヴァンは、ミラリアを慰めるかのように優しく声をかける。

 「ミラリア。自分を卑下するものじゃない。君の剣は、にわかなシスターの心根よりもよほど正しい。だから、君はそのままでいいんだ」

 そう言って、シルヴァンはミラリアを抱きしめる。ミラリアは涙目で答える。

 「バカね。私の前世はソルドガルの将だったって知ってるでしょ。物好きにも程があるわよ」

 しかし、シルヴァンは真面目な口調で言い募る。

 「全てを承知で、私は君の相棒になった。この位は当然だよ」

 見ていたロイザードが茶化して言う。

 「青春だねえ。ここにも一人いるの忘れてない?」

 しかし、その声は二人に聞こえてはいないようで、抱擁を続けている。

 「まあいいか。この一件は落ち着いたし。次は、何がくるのかな」

 ロイザードは、ミラリアを抱きしめるシルヴァンの向こうの夕日を見やった。

 …三人の冒険は始まったばかりであり、そのため、その前途は確たる方向性を今は持ってはいなかった。


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