1 / 1
「剣と覚悟」
しおりを挟むミラリア達「ブレードシスター」一行は、冒険者ギルドでもある特務兵団「ロウブレイド」の団長である赤髪に眼帯の女団長ソレーヌの命で、冒険者としての初仕事として、サイアスという「悪魔に魂を売って力を付けた」という男を探すこととなった。
「何でもかなりの罪を負っているという。無理とみたら捕縛でなくてもかまわないぞ」との言葉で、要は「危なくなるようなら成敗して構わない」と言う事なのだろう、とミラリアは解釈した。
「情報収集はまかせて、その代わり荒事はたのむよ」と言い、一行の一人「トリックスター」を自称する手品師兼盗賊のロイザードは、巧みな変装で様々に姿を変えて、首都ラクティにて老若男女から情報を集めて、ラクティの簡易宿屋に待機している修道女剣士ミラリアと仮面の白騎士シルヴァンに報告をした。
「お待たせ。ラクティの西にある、「廃都メビウス」でそいつの姿を見たという冒険者がいたよ。団長の情報と照らし合わせてみたけど、十中八九間違いないよ」
「その男には、取り巻きとかはいるの?まさか一人じゃないわよね?」
ミラリアの問いに、ロイザードは、表情を曇らせる。
「死鬼たちが一緒さ。元は悪魔に魂を食われて、動く死体となった犠牲者だ。君が聖術の腕の立つシスターなら、救ってやってほしいけどね」
「私は戒めを破って、剣を取った修道女。癒しの聖術が使えるあたり、まだ信奉する女神ルナス様には見放されていないようだけど、いつ使えなくなってもおかしくない。だから、私の救いはこの剣でするわ」
決意に満ちたミラリアの覚悟に、横で聞いていたシルヴァンは感心したようで、
「君の剣は、なにより彼らの救いになるさ。私も多少は聖術の心得はあるから、もし君の術の力が失われたら、今度は私が代わりに使おう。だから君は、自分の信じるように動けばいい」
そしてロイザードが方針をまとめる。
「荒事は、さっきも言ったけど、二人に任せるよ。僕は廃都の入り口で待ってるから、上手く死鬼を蹴散らして、サイアスを倒してくるんだ」
「分かったわ」
「任せてくれ」
二人はうなずき、こうして三人は、西の廃都メビウスに向かった。
☆
-廃都メビウスは、かつては古代王国の首都であったといわれているが、実態は不明で、ゴーストタウンと化しており、道にあぶれたもの達が、住み着いている闇の巣窟である-
三人は廃都メビウスに着くと、入口に荷物とロイザードを残す形をとり、ミラリアは太刀を、シルヴァンは長剣を構えて、警戒しつつ、奥に向かった。
周囲の建物から、陰湿な視線を感じつつも、二人は気にせずに奥に進み、その中央広場に着いた。
広場では、件の痩せぎすのローブの男、サイアスが、死鬼の群れを率いて二人を待ち構えていた。
「また冒険者か、死鬼の群れのエサにしてくれる。太刀など持ったにわかシスターに、こいつらの相手が務まるかな?」
嗤うサイアスに、ミラリアは毅然とした面持ちで言う。
「生憎ね。私は女神を信奉しているけど、同じ位に剣も頼りにしているの」
そして、ミラリアは愛用の黒太刀「黒牙」を以て、死鬼の群れに斬り込んだ。シルヴァンも長剣を持って後に続く。
☆
ミラリアの「黒牙」による神速の斬撃は、その抜群の切れ味をもって、死鬼達を次々と袈裟斬り、胴斬り、さらには縦に両断すらしてのけ、サイアスが茫然とする中で、次々と死鬼は数が減り、そして、ついには殲滅された。
サイアスはミラリアをただのにわかシスターと侮っていた認識を改めざるを得なかった。が、それは既に手遅れだった。驚愕は恐怖に変わり、腰を抜かして、後ずさっていう。
「た、助けてくれ、そこに死者からかき集めた五万の金貨がある。そもそも、あんたシスターだろ?太刀で殺生なんてしていいのか?罰があたるぞ」
ミラリアの眼に険が宿る。そして一時だけ、前世の「魔剣士ヘルヴァルド」の一面を出す。声色が、重いものに変わる。
「ならばこれは、ソルドガルの将、魔剣士ヘルヴァルドの太刀と知れ。冥府でその行いを悔いるがいい」
そして、サイアスは、このシスターの背後に、太刀を持った長身の男の影を垣間見つつ、その言の一割も理解できないまま、黒太刀「黒牙」で、その首を刎ねられた。
☆
ミラリアとシルヴァンは、殲滅した死鬼とサイアスの遺骸を、その場を以って焼却した。
そして入口で待っているロイザードと合流すると、自分達の所属する「ロウブレイド」のある砦へ帰還した。
サイアスの五万の金貨は、報告を聞いた団長ソレーヌの計らいで、ラクティアの貧困層への義援金となった。
そして、三人は、砦の四方にある見張りの塔の連絡通路の一角で夕日に当たっていた。
そこでミラリアは自嘲して言う。
「だめね、私。修道女のくせに、太刀を振るうしか能がなくて。でも、たとえ女神に見放されたとしても、もう、この生き方は変えられないわ」
シルヴァンは、ミラリアを慰めるかのように優しく声をかける。
「ミラリア。自分を卑下するものじゃない。君の剣は、にわかなシスターの心根よりもよほど正しい。だから、君はそのままでいいんだ」
そう言って、シルヴァンはミラリアを抱きしめる。ミラリアは涙目で答える。
「バカね。私の前世はソルドガルの将だったって知ってるでしょ。物好きにも程があるわよ」
しかし、シルヴァンは真面目な口調で言い募る。
「全てを承知で、私は君の相棒になった。この位は当然だよ」
見ていたロイザードが茶化して言う。
「青春だねえ。ここにも一人いるの忘れてない?」
しかし、その声は二人に聞こえてはいないようで、抱擁を続けている。
「まあいいか。この一件は落ち着いたし。次は、何がくるのかな」
ロイザードは、ミラリアを抱きしめるシルヴァンの向こうの夕日を見やった。
…三人の冒険は始まったばかりであり、そのため、その前途は確たる方向性を今は持ってはいなかった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる