1 / 1
婚約者に呼ばれて異世界に-錬金料理始めました-
しおりを挟む外は豪雪の降る、とある冬の病院内で、俺の婚約者は細い身体を白いベッドに横たえたまま俺に最後に言い残した。
「私、あなたに会えて、よかった…」
そしてほどなくして彼女は死んだ。
不治の病だった。
その色白い死に顔が安らかだった。
眠るように亡くなった彼女。俺は、何もできなかった。
★
その後、しがないサラリーマンとして2LDKのアパートでありふれた生活を送る俺、20才の御堂春人(みどうはると)
だが、ある時朝のゴミ出しの際に不覚にも下りの階段を踏み外して、前のめりに落ちるところで淡い光に包まれた。
(何だ?この光は…)
それは、暖かく、優しい白い光だった…。
★
俺が気づくと、いつのまにか魔法陣の上に寝ていた。地面は石で、周囲には中世の騎士らしき人々で囲まれている。
そして、魔法陣の上で横になる俺の顔を覗き込むようにする、青い髪に蒼い瞳の女性の顔が見えた。純白のローブに手には樫の木の杖を持っている。
俺は驚愕した。その女性の外見は髪と瞳の色と服装以外は、今は亡くなって失われた、婚約者の白雪純子(しらゆきじゅんこ)そのものだったから。
★
「良かった。召喚は成功ね。ハル、ようこそ『エル・ベルト』に!」
純白のローブ姿の彼女、白雪純子は魔法陣の上で俺に笑顔でそういい、寝ていた俺を、手にした樫の木の杖を横に置いて両手で起こした。
★
ここは異世界『エル・ベルト』というらしい。そしてここでは彼女は「転生者」であり、同時にこの国を怪物から守る「結界」も司っている「聖女」だという。
白い壁の継ぎ目に黒のラインの入った神殿での彼女の部屋に移り、俺と向かい合う形で茶色の丸テーブルに備え付けの椅子に座る彼女と語り合う俺。
何でもここの「神殿」で「結界」を張れる聖女は数人いて、持ち回りのローテーションで、この国を守る結界を維持しいていると、彼女は語った。
(異世界召喚って奴か…。マジかよ…)
俺は彼女の「聖女」の力でこの『エル・ベルト』に異世界転移させられたらしいが、今一つピンと来ないので、ここで彼女に召喚を行った理由を聞いてみた。
「で、何で俺はここに呼ばれて、これからここで何をすればいいんだ?まさか漫画みたいに魔王を倒せとかいうんじゃないだろうな」
長く青い髪と愛らしい瞳の彼女はにっこりとそれは晴れ晴れとした魅力的な笑顔でこれに答える。
「私がハルを呼ぶのに「好き」だという以上に理由がいるのですか?いつも一緒だと誓ったじゃないですか」
俺は、昔、草原で交わした彼女との昔の会話を思い起こした。そういえばそういう事を言った覚えはある。
「…そういえばそうだな。で、今現在俺は君と一緒に居る。それはいい。だけど俺はこれからここでどうやって過ごせばいい?」
「神殿に程近い私の家で、ごろごろしてもらって構わないわ。ハルには私の相手をしてもらえればそれでいいのです」
「…えーと、それは楽かもしれないが、少し俺としては納得しかねるな…」
俺は、この話に納得できなかった。愛しい彼女と異世界で一緒に居るのに異存はない。むしろ嬉しい。しかし、彼女が聖女の役割を果たしているのに、俺だけごろごろして怠惰に生活していたら、まるでヒモである。
「俺だけ何もせずに暮らすのには抵抗がある。何かできることはないか?」
俺は、真面目に彼女に聞いてみた。彼女はその答えも用意していたようで、クスリと微笑んで形のいい口ですらすらと答える。
「ハルらしくて安心したわ。じゃあ、とりあえず家の事をしてもらいましょうか。私には神殿で聖女の仕事がありますので、家の雑事は全部お付の女官まかせなんです」
「つまり、俺に主夫になれと?」
…彼女の話では、彼女の家、部屋は、管理するお付の女官で掃除、洗濯、炊事等の家事はなされていた。それは、俺が彼女の木造の2階建ての家に移ってもてきぱきと行われていたので、立ちすくんだまま、俺は一言呟いた。
(これ、おれ、要らなくはないか?)
女官達の働きぶりを見て思った俺だが、何にでも盲点という物はある。ここでは強いて言えば、炊事であった。ここの女官は、ローテーションのきっちりと型にはまった、それでいて味気ない調理しかしないのだ。
なので、俺は女官達に多少無理を言って台所を借りて、試しにここにある材料でパスタを作ってみることにした。
異世界『エル・ベルト』でも、乾麺やトマト、ケチャップ等はあるらしく、俺はそれ等を使ってナポリタンのソースを作る。
そして、聖女の仕事が終わって帰ってきた彼女に茹でたパスタに暖かいナポリタン風のソースをかけた料理を振舞った。
神殿から疲れて帰ってきたであろう彼女は、茶色い居間の白い四角いテーブルに着き、俺の作ったパスタを上品な手つきでフォークで絡めて、口にすると、その出来栄えを俺に絶賛する。
「ありがとう。ケチャップが程よい濃さで美味しいわ。麵の固さもやわめで私好み。久々にいいものをたべさせてもらった感じね」
彼女の話では何でも、この異世界では「料理」はあくまで「栄養を摂る手段」であって「味」は重要視されていないらしい。
「そうか、よかった。ならこれから食事は俺が作るよ」
「それは嬉しいわ。ハルの料理、楽しみにしてるわね」
-こうして、ここ異世界『エル・ベルト』で、俺は「聖女」の彼女の家での料理担当になった。
★
俺は、夜には彼女と同じ寝室で一緒のベッドで寝たが、添い寝以上の事はしなかったし、そもそもできなかった。
それというのも、なんでもここの聖女は純潔を守らないと「聖女の力」つまり「結界を張る力」が無くなるそうだからだ。
彼女と心は通じているのに手が出せないのは、ある意味俺は男として生殺しに近いが、彼女が横で幸せそうな表情で休んでいるのを見ると、これはこれでいいかもしれないとおもえた。
(手を出せなくても、この女(ひと)が、俺の大事な人なのには変わりはないしな…)
…洗濯、掃除は変わらず聖女お付きの女官達がしてくれているので、俺は彼女のために料理の腕を磨くことにした。
そしてある、晴れ晴れとした陽光の暖かい日に、女官の一人に街を案内してもらって、料理用の食材を売っている店を教えてもらう、そこで俺は、この後を劇的に変えることになる存在、痩せぎすの黒いローブを纏った錬金術師のアルと出会った。
★
このアルは、食材を選ぶ俺が料理に興味があると知ると、親切にも自前の工房に案内して「錬金術での料理」について教えてくれた。
彼の工房で、俺は試しに実践で調味料を作ってみる。やり方は丁寧にアルが教えてくれる。
「錬金術は、1+1を+αに変える技術。つまり、元の材料とは、全然違うものが出来ます。しかし、ランダムではなく、足し算に法則性があるように、同じやり方をすれば同じ物が出来ます。そして、ここが肝心ですが、法則性を完全に理解できれば、ありとあらゆる物が作れて「創造の神」に近づく事ができるのです」
様々な薬品や魔道具で雑然とした工房内でアルは一息にそう言うと、彼は俺に一つの冊子をくれる。それは料理のレシピのようだった。
「私の研究の一部です。大したものではありませんし、私にはもう不要のもの、『あなたの聖女』のために役立ててください」
アルはそう言って、俺が教わるままに試しに作った「錬金術での黒胡椒」を瓶に詰めて、手土産にと俺に渡す。
俺は、親切すぎるこのアルにどうしてここまで親切にするのかを聞いてみる。
「どうして、俺にこうして親切にしてくれるんだい?」
アルは少し虚ろな眼を向けて、俺にこう答える。
「あなたには才能があります。じきに出世するでしょう。私には分かるのです。その時には私を引き立てて頂きたい。それだけです」
…アルの親切は、どうやら慈善事業ではなかったようだが、俺にはそのほうがしっくり来た。理由もなくここまでしてくれるのは、聖人か、よほどのお人よしであり、俺にはアルはそのどちらにも見えなかったからだ。
★
俺はこの日には新鮮な牛肉を仕入れて、この黒胡椒をまぶしたステーキを焼いて作り、家に疲れて帰ってきた聖女の彼女に振舞った。
「有難う。肉の柔らかさと絶妙な黒胡椒がよく効いていてとても美味しいわ。高級なお店で出てくるものか、それ以上に。何か特殊な事したの?」
茶色い居間の白いテーブルにつき、ナイフとフォークで上品な手つきでステーキを切り分けて口に運ぶ彼女。俺の料理を褒めつつも、彼女の言には戸惑いもあった。それはそうだ。いきなり料理の腕が飛躍的に上がったら、誰でもそうおもうだろうから。だが、俺はこの場はこう誤魔化す。
「特殊な隠し味をくわえたのさ。何を加えたのかは、企業秘密」
その後も、家で時間のある時には、俺はアルのくれた冊子を読みふけった。その冊子には、錬金術での調味料製作の複雑な調合なども書いていたが、何故か俺にはすんなり理解できた。これが彼の言う「才能」なのだろうか。
アルの冊子を元に、俺は様々な調味料を作り、様々な料理にそれを加えた。聖女の彼女は、その後もその料理を絶賛し続けたので、俺はこの「錬金術による料理人」の道を進む事に決めた。
★
アルの錬金工房の扉を叩き、俺は彼の弟子になった。彼は料理関連の錬金術にはそれほど興味がないようで、自分の研究の副産物の「錬金術による調味料の製作」の粋を、惜しまず俺に教え込んでくれた。それは、系統立った数式を伴ったが、俺は熱心にそれを知識として吸収した。
「この国は聖女様に助けられていますからね」
不愛想にアルはそう言い、つぎ足すようにこうも言う。
「上手く料理人として出世できたら、約束の件は忘れないでください」
と、念を押しても来る。俺は恩はきちんと返すものだと思っているので、それに対しては黙って頷いた。
★
それからしばらく時が経つと、俺は聖女の彼女の推薦で「聖女付きの料理人」として王宮の人間にもなじむようになり、彼らにも俺は料理の腕を振るった。
絢爛豪華な王宮の専属料理人が作る料理もそれは立派なものではあったが、俺の「錬金術を交えた料理」はそれを上回る程好評だった。
「あなたのおかげで、望むべき研究に打ち込めます。感謝していますよ」
俺の進言で王宮付きの錬金士に取り立ててもらったアルも、研究の資金を王国から出してもらって不愛想な彼にしては珍しくにこやかで、至極ご満悦のようだ。
「ハルを呼んで、よかったわ。異世界でこんなに美味しい食事ができるなんて、私はある意味幸せね」
「それは光栄です。聖女様」
白い料理服姿の俺は、家の茶色い居間の白いテーブルにつき幸せそうにナイフとフォークで上品に食事をする、純白のローブ姿をした彼女の傍らに立ち、柄にもなく気取ってそう返した。
そうして、俺はここ『エル・ベルト』での居場所を確立して、聖女の彼女のお付の料理人として、錬金術で味付けをした、美味しい料理を作りながら、彼女と幸せに同じ刻を過ごすのだった…。
「『-錬金料理始めました-』了」
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる