こんな破廉恥な悪役令嬢が出てくるゲームって何?!

高瀬ゆみ

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51.悪役令嬢を幸せにしたいって何?(3)

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「いやあああッ!」

 身の危険を感じて声を張り上げる。
 拘束から逃れようと必死に体を揺する私を見て、男は動きを止めると出来の悪い生徒を前にしたときのように優しく諭した。

「無駄ですよ。どれだけ大声を出しても声が漏れないよう、部屋に魔法をかけてありますから」

 だからどれだけ騒いでも助けが来ることはないと言う。
 それでも、私はただただ必死だった。
 魔法によって記憶を消されて、勝手に未来を変えられるなんて嫌だ。
 この男のものになどなりたくない。
 あの人以外の男に触られるなんて、絶対に受け入れられない!

「イヤ! 絶対にイヤ! ……ッ、クロード! クロードッ! ~~もうっ、なにやってるのよ! 主人のピンチなのよ⁉ 早く助けに来なさいよーーっ!」
「……クロード? 誰ですかそいつは?」

 男が怪訝な顔で尋ねた、その時――
 突然、胸元が発火したように熱くなった。

「――ッ!」

 その場所から体全体に流れ込むように熱が広がっていく。そして体の奥底から魔力の高まりを感じた。
 ドクンと心臓が飛び跳ねる。
 そして、カシャン――と音を立てて何かが床に落ちた。

「あ……ぁ……」

 体の内側から発せられる熱。私は熱を逃がすように息をついた。

「なっ、なに……?」

 熱いうねりがお腹から胸に駆け上がり、胸の奥から知らない何かが込み上げてくるのを感じる。
 それは、強力な魔法を使うときに魔力を引き出す感覚に似ているけれど、でも、こんな力強い魔力は、自分のものではない。
 異変に気付いたツタは、その魔力を吸収しようと体に集まり出す。けれど魔力はどんどん増していって、私の胸元から強い光が放たれた。

「きゃっ!」
「な、なんだ⁉」

 部屋中に広がる眩い光。目を開けていられない程の強い光に目を細める。
 すると、光として具現化した高濃度の魔力に、体に集まっていたツタは焼き消されるようにジュッと消滅していく。
 みるみるうちにツタが消えていくのを呆然と見つめていた私は、次の展開を予想できなかった。
 体を吊るしていたツタが消えた結果、私の体は地面に向けて落下した。

「わっ!」

 落ちる! と目をつぶった私の耳に届いた、聞き馴染んだ低い声。

「――大丈夫ですか?」

 体を地面に打ち付けることなく抱きかかえられる。
 目を開けて顔を上げると、見慣れた執事の姿があった。

「クロード!」

 黒い執事服を身に纏ったクロードは、いつもと変わらず真っ直ぐに私を見つめている。
 待ち望んでいた人物の登場に、喜びよりも先に驚きの声が出る。

「どうしてここに⁉」

 その問い掛けにクロードはこちらを見つめたまま何も言わず、ただ目を細める。
 地面にそっと下ろすと、クロードはあきれたような顔で口を開いた。

「……私の魔力に服を溶かす効果はないと思うのですが、どうしてお嬢様には毎回破廉恥なことが起こるのでしょうね」
「……?」

 クロードの視線を辿って自分の胸元に視線を落とす。
 すると、光が放たれたときになくなったのか、円を描くように制服の一部分が消えていて私の胸の谷間をさらけ出していた。

「な……っ!」

 迫力ある白い大きな膨らみが目に飛び込んできて、慌てて腕で隠す。

「みっ、見ないでッ!」
「私には今更だと思いますが……ただ、そうですね。お嬢様の体を他の男に見せるつもりはございませんので」

 そう言ってクロードは片手を振り、魔法で私の制服を元に戻した。

「――さて」

 クロードが体の向きを変え、呆然と立ち尽くしたままの男に視線を向ける。

「お嬢様に危害を加えようとしたのは、この男で間違いございませんか?」

 男から守るように私の前に立つと、クロードから発せられる圧が強くなった。


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