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74.クロードの幼少期(4)
しおりを挟むジェシカに尋ねる。
「それで、ジェシカはエドワード殿下のことをどう思ったの?」
「えっ? 素敵な王子様だと思ったわ」
「そう……じゃあ、僕のことはどう思う?」
「クロード様のこと?」
「うーん」と、口元に指を当てて考えたジェシカは、にっこりと笑って言った。
「大好きよ!」
「……ッ! そ、そっか」
思わず口元がにやけそうになるのを抑えて、真面目な顔を作る。
プロポーズなんだから少しでもカッコイイと思ってもらいたい。
「僕もジェシカのことが大好きだよ。だから、エドワード殿下より先に、僕がジェシカをお嫁さんにしたいんだ」
「お嫁さん?」
「そう。君のお父上に婚約の申し出をする。ジェシカが大きくなったら、僕と結婚してくれる?」
将来の約束を交わそうとしているからか、不意に、熱を出したジェシカから聞いた恐ろしい未来を思い出した。
絶望しかないと嘆く君の将来を、僕が守ってあげる。
「うん、いいよ。ジェシカ、クロード様のお嫁さんになる!」
「ありがとう」
願っていた通りの返事に安堵する。
ジェシカが自発的に頷いてくれてよかった。もし抵抗されたとしても、上手く言いくるめてしまうつもりだったけれど。
そんなことを僕が考えているとも知らずに、ジェシカはのんきにニコニコと笑って言った。
「最近先生からね、『早い者勝ち』って言葉を教えてもらったの。弟に絵本を取られて怒ったら、『早い者勝ちだから仕方ないですよ』って」
「うん。それで?」
「ジェシカね、結婚しようって言われたの初めて! 絵本の中のお姫様みたいだった! クロード様が一番に言ったから、一番の人にジェシカをあげるね」
「順番だもんね」と分かったような顔で頷いている。
六歳のジェシカは、自分が承諾したことの重さをいまいち理解していないようだったけれど、都合良く気にしないことにした。
ジェシカを自分のものにすると決めてから、僕はすぐに行動に移した。
自分の両親とクランベル公爵には、『兄である第一王子が国王に即位し、クロードが第二王子としての地位を確立次第、ジェシカを婚約者にする』と約束を取り付けた。
そして――
「えっ、執事?」
執事服を着た僕を見て、ジェシカが驚きの声を上げた。
「クロード様は大切なお客様なんじゃないの?」
それなのに何故執事なのかと首を傾げている。
「今日から私は、貴方を完璧なレディにするために執事としてお側におります。これからは『クロード』とお呼びください。お嬢様」
そう言って胸に手を当ててお辞儀した。
ジェシカが視た未来では、彼女が意地悪で我が儘だったせいで、恐ろしい未来が待ち受けていたのだという。
だったら、そうならないように今から僕がジェシカを矯正すればいい。
執事の真似事は、お客様という立場を超えて、より近い場所でジェシカを指導出来るように。素直でなんでも受け入れてしまいがちな彼女にはピッタリだと思っている。
淑女としてスキルを磨きながら、いつ隣国に嫁いでも困らないように、周辺国の知識やマナーなど王子妃になるための教育も組み込んでいこう。
クロードは二人の将来に向けて、小さく微笑んだ。
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