冷遇された王女は隣国で力を発揮する

高瀬ゆみ

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精霊の力 3

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『あ! じゃあ私の力をセシリアに見せてあげるよ!』

そう言ってライアが飛び上がる。
キラキラと輝く光の粒を纏いながら、セシリアの頭の上でライアは両手を広げた。

『詠唱は面倒だからまるっと省略してー……フラワーシャワー!』

ライアが言葉を発した次の瞬間――
ポンッ! と音がして、何もなかった空間から色とりどりの花びらが現れた。
赤、白、ピンク、黄色……様々な種類の花弁がひらひらと上から舞い落ちてくる。

「まあ! 素敵ね」

セシリアは両手を胸の前に出す。
ピンク色の可憐な花びらを、落とさないようにそっと手のひらで受け止めた。

(これは……本物?)

指で触るとしっとりとした花の質感がある。
どこから見ても花弁そのもので、とても幻には見えなかった。

(でも、皆が精霊達を認識できないように、これも私にしか見えないものなのかしら……)

花びらをまじまじと見つめていると、セシリアが驚いていると思ったライアが嬉しそうに笑う。

『自分の属性に関することだったら、多分何でもできるよ! あとは他の属性の精霊達から力を貸してもらえるの!』

上位精霊だからできることなのだとライアは胸を張る。

『私は木だから植物のことで、フェニとディネは火と水だね!』

「凄い力ね」

自分の目の前で起きた奇跡にセシリアは圧倒される。

火、水そして木。それだけでなく他の属性の力まで。
そんな力を行使できるなんて凄いことではないだろうか。
可愛い見た目が勝ってすっかり打ち解けていたけれど、本来はセシリアでは手が届かないような別次元の存在なのかもしれない。

(そんな凄い子達に『友達』になってほしいだなんて言って……身の程知らずだったかしら)

思いがけない力に動揺していると、ディネがセシリアの腕を引っ張って注意を引いた。

「? どうしたの?」

『あのね……火より水の方が強いの……だからディネの方が強い』

『――なんだと!?』

表情の乏しいディネの顔が、心なしか得意げに見える。
名前は挙げていないものの明らかにフェニを意識していた。
喧嘩を売っていると言われてもおかしくない。
セシリアが慌ててフェニを見ると、ディネの隣にいたフェニが目を吊り上げていた。

『馬鹿言うな! 俺の火はディネの水ごときには消せない!』

『うそ……強がってる』

『なんだと……!』

「落ち着いて。喧嘩しちゃダメよ」

仲裁に入ろうとしたセシリアの横をすり抜けて、フェニは部屋の中に飛んで行く。皆から距離を取ると声を張り上げた。

『そこまで言うならやってみろ! ――いでよ、火球!』

フェニが前に突き出した手のひらから、小さな火の玉が現れる。
初めは小さかった炎はフェニの体と同じくらいの大きさに膨れ上がると、ディネに向かって一直線に飛んできた。

「!」

ディネの後ろに立っているセシリアは、自分に向かってくる燃え盛る炎に身を固くする。
ライアがセシリアを庇うように前に出るのと同時に、ディネはその場から全く動かないまま声を出した。

『とりあえず……お水……』

空中に突如現れた水の球体が、勢いよく向かってくる火の玉にぶつかる。
二つが触れ合った瞬間、弾けるように形を変えて跡形もなく消え去った。
力と力がぶつかり合った結果、どうやら見事に相殺されたようだ。

「良かった……」

セシリアはホッと胸を撫で下ろす。

『ほらね……やっぱり消えた』

「ディネ! 煽ったらまた……!」

『まだだ!』

フェニの手から再び火の玉が現れる。
チラッと後ろを向いてセシリアを見たディネが、バルコニーから部屋の中に入ると、フェニから逃げるように飛び回った。

『待てッ!』

『しつこい……』

そこから精霊二人の壮絶な追いかけっこが始まった。
それも、セシリアの部屋の中で。



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