雨の中いじめられているところを助けたら、学校一の美少女に懐かれました。

流水氏

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雨の日

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 俺――榎本要が住んでいるアパートの近くにある公園でとある光景をみかけたのは、雨の日のことだった。

 ある日の放課後、いつも通りの下校途中。俺はいつも参考書や小説などの本を読みながら帰宅するのだが、今日は雨が降っているため、いつもより足早に歩いていた。
 家の近くの公園に差し掛かったところで、あまり穏やかとは言えない声が聞こえてきた。
 
 声のする方に目を向けてみると、うちの制服を着ている女子が、他校の複数の女子に囲まれている。制服を見る限り、西谷学院高校だろうか。
 うちの制服を着ている子は、腰まである栗色の髪や制服を傘もささずに雨にさらしている。その子は西谷学院高校の女子に一方的にものを言われ、特に反抗もしていない様子だった。
 俺は内面、家の近くで暴力沙汰とかやめてくれよと思いながら、素通りしようとした。いじめられている方も知り合いだという訳でもないし、助けようとして変に思われるのも嫌だったからだ。

「お前のせいでっ!」
 憤慨したような声に続けて、バチッ! という乾いた音が聞こえてきた。まさかと思い音の方を見ると、思った通り、いじめている側が平手打ちをしたようだった。
 次の瞬間には、俺の体は半ば勝手に動き、公園の中へ足を踏み入れていた。

「アンタ何? この女の知り合い?」

 リーダー格とおぼしき女子が明確な敵意がこもった視線をこちらに向けてきた。当然こうなるとは思っていたのだが、やはり嬉しいものではない。
 だが幸いと言うべきか、俺が持っている傘は黒のグラスファイバー製である。深く被っていれば、顔は見えないだろう。

 「知り合いでもなんでもないよ。ただその子と同じ学校ってだけ」
 「なら関係ないでしょ? どっか行ってよ」

 何を言っても無駄だと感じた俺は、言いたいことだけをさっさと伝えることにした。

 「いじめなんてダサいことしてないで口で言えよ。いくらお前らがこの子を憎んでいても、それはこの子に暴力を振るっていい理由にはならないだろ」

  わずかにたじろいだ様子の女子達だったが、すぐに威勢を取り戻し、こちらに反抗してきた。
 「だからアンタには関係ないって言ってんでしょ!?」

 先の発言で終わってくれないかと一縷の望みをかけていたのだが。
 しかしここまで踏み込んでおいて、今更はいそうですねと引き下がる訳にもいかない。このまま続けるつもりならこちらにも考えがある。

「お前ら西谷学院高校だよな。学校にこの動画と一緒にチクったらどうなるかな」

 顔はあまり見られたくないのだが、この時だけは傘を少し持ち上げ、リーダー格の女子を睨みつけた。
 効果はてきめんだったようで、女子達は血相を変え、最後に俺のことを一睨みして去って行った。
 我ながら陰湿なやり方だと思ったが、もちろん動画など撮ってないし、これが通用しなかったらどうしようと内面焦っていたのだが、うまくいったので良しとしよう。

 「このタオル使って。男のタオルなんて嬉しくないと思うが、風邪ひくよりマシだろ」
 取り残された女の子はと言うと、髪どころか制服までぐっしょり濡れていた。
 「あとこの傘、返さなくていいからさして帰れよ。俺には折りたたみのやつもあるから」
 そう言って傘を半強制的に握らせ、俺はさっさと帰るべく女の子に背を向け足速に歩きだした。

 タオルはもちろん使ったものではないし、折りたたみ傘があるのも本当……ではないが、家はすぐそこだし、走って帰ればそこまで濡れることもないだろう。

 この先関わることもないだろうし、礼を求めてしたことでもない。

 同じ制服ということはたまに学校で見かけるかもしれないが、俺はあまり誰とでも話すというわけでもないので、接点ができることも多分ないだろう。

――少なくとも俺はそう思っていたのだ。このときは。榎本要えのもとかなめ
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