【本編完結】最愛の勇者が同郷の迷い人に夢中なので、この婚約は破棄したいです。

のんのこ

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勇者への褒美

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勇者は、片膝を立てて玉座に座る国王の言葉にしきりに耳を傾けていた。


魔王を倒したばかりで疲弊した体に鞭を打ち急ぎ足で王宮に戻ってきたのは、ひとえに国王陛下から自分の願いを叶える旨の言葉を頂戴するためだった。



「勇者ハルトよ」


にこやかに目元を緩めて口を開く国王に、勇者はごくりと唾を呑み込んだ。



「こちらの勝手な都合でそなたには本当に迷惑をかけてしまった。此度の活躍ご苦労であった。そなたが望むものであれば、私ができる限り叶えてやる所存だ」


「有難いお言葉、誠に痛み入ります」


望み通りの展開に勇者は小さくほくそ笑む。



自分とは全く関係の無い世界に無理やり召喚され、危険を冒してまで魔王討伐を成し遂げた勇者が何を望むのか。


国王の予想としては、元の世界に戻るは勿論、付け加えるとするならば、せいぜいこの国でのしばしのもてなし程度だと考えていた。


しかし、勇者が真に望んだこと、それは



「では、陛下の海のように広い懐に甘えさせて頂きますね。私が望むことは二つだけ。まず一つ、この国での私の働きに見合った爵位を頂戴したく思います」


勇者の言葉に国王は目を見開いた。

爵位を望むということは即ち、勇者は役目を果たしてもなおこのグランディア王国に留まる意思があるということだった。



「ほう、そなたはこの国に残るというのだな?こちらとしてはそなたのように強大な力を持つ者に留まってもらうことは大歓迎だが…よいのか?故郷にはそなたの家族や愛する者だってきっといるのであろう?」

国王の言葉に勇者は表情を和らげ口を開く。



「戸籍上の家族なら、確かに存在しましたが…私にはこの国で得た繋がりの方がずっと大切なのです」

「ほう?それならばもう何も言うまい。では、そなたに公爵の位を授けよう」

勇者が満足気な笑みを見せる。


「感謝致します陛下。二つ目の願いを言っても?」

「聞こう」



「私の二つ目の願いは、グランディア王国第二王女であるミリア様と私の婚約を許可して頂くことです」


これには国王もド肝を抜かれたといった表情で口をぽかんと開いて固まる。


玉座の近くに控える側近の咳払いでやっと正気を取り戻すと、苦々しげに言葉を紡いだ。



「そなたは、ミリアのことを…?」


「はい、召喚されて以来お慕いしておりました」

真剣な眼差しで勇者は告げる。



「これから私は、このグランディア王国ではなく、ミリア様を守っていきたいのです」


「うむ、そうか…そうかぁ。ミリアは親の私が言うのもなんだが、どこへやっても申し分ない程素晴らしい子だ。だが、ミリアの意思もなぁ、うーむ」


国王である以前に親として子を愛する彼は、自分の勝手な判断で娘の将来を決めることを思い悩んでいるようだった。

いくら愛のない結婚が当たり前である王族貴族社会の人間でも、異世界からの勇者と結婚した者など前例がなさすぎる。


勇者がこの世界に留まるということすらずっと昔の文献にも記録されていなかった。



「国王陛下っ!」


突然謁見の間の扉が開き、現れたのは渦中の人物であった第二王女のミリアだ。


少々お転婆な登場の仕方であったが、そんなことに苦言を呈している場合ではなかった。



「何を悩んでいるのですか!私はハルト様と婚約ができるのなら本望なのですよ?」


「本望とな…?」


「私だってずっとハルト様のことをお慕いしておりました。私達は愛し合っているのです。身分なら今しがた陛下が保証されました。他に何か問題でもございますか?」


大方王家秘伝の魔法で盗み聞きでもしていたのだろう、反論もできない言葉を述べられ国王は頷くことしかできなかった。



「問題は、ないな」


「では婚約を許可して頂けるのですね」


勇者が微笑みを浮かべてそう言う。



「私としては婚姻ではなく婚約という部分が気になりますが、これで私とハルト様は陛下公認ということですわね。ありがとうございます、お父様」

陛下ではなくお父様などと甘い声で言われては国王ももう何も言えなかった。

勇者との婚約自体に不満はなかったが、溺愛していた娘がもう人のものになってしまうと考えるとあまり良い気分ではないだけなのだ。



「ミリアをよろしく頼むぞ、勇者ハルトよ」

「はい、この命に変えてもお守りします」


国で一番強い勇者の元に嫁いでくれるのならば、それはそれで安心だ。


国王は少し困ったような笑みを浮かべた。



勇者と第二王女の婚約はすぐに国中に知れ渡り、二人の仲睦まじい姿に文句を言うものは誰一人として現れなかったという。





そして月日は流れ_____



王宮の薔薇園に異界からの迷い人が現れたのは、私がハルト様と婚約して一年が経とうとした頃だった。






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